こんにちは。
現在私は、民間企業の心理系技術職として仕事をしていますが、今になって考えると「就活前にこんな準備をすればもっと満足度の高い就活ができたかも...」というものがいくつかあります。
今後「ジョブ型雇用」が新卒にも適用されるため、就活前の段階である程度のスキルを要求されると思います。というわけでこんなことができるといいかも...ということを書いていきますね。
心理学→企業就職の一般的な話を知りたい!という人はまずはこちらを読んでください。
学位
専門を生かさない文系就職であれば学部卒で就職するメリットが大きいです。しかし、カウンセリングなど臨床系の心理職やエンジニアとして採用される心理系技術職の場合学位は重要だと思います。
理系など専門を生かした就職の場合,学部卒と院卒(修士)によって初任給が異なりますし、そもそも心理系の人材を積極的に採用する公務員の心理職やメーカー大企業の技術職は採用の大部分が院卒(修士・博士)です。
民間企業でも、JREC-INなどに出てくるような心理学の求人だと修士以上を明記してくるケースもありました。
もちろん公務員の心理職は制度上学部卒でもなれますし、法務教官のように学部卒でも実際に採用されやすい職種はあります。しかし、特に基礎・実験心理学の専門を生かした科警研や実際に政策立案を行う厚労省といったポストでは,実際に採用されている方の多くが院卒です。
公務員について詳しくはこちらをどうぞ。
民間企業に目を向けても、採用されてこなかった博士卒の学生が積極的に採用されるようになってきたこともあり学部卒での採用枠は縮小傾向にあります。心理学を生かして就職したいのであれば院進学はほぼ必須と考えたほうが良いでしょう。
HPなどのアウトプットを作る
いわゆるUXデザインのお話です。近年のコモディティ化に対抗していくため、消費者の体験に注目する企業が増えてきました。その過程で従来からデザイナーを自前で採用していた企業だけではなく、新規でデザインができる人材を新卒で採用する企業もあります。
このUXデザインの中では様々な心理学の理論が適用されたり、質問紙を含む様々な手法での計測が行われ心理学の専門性を生かしやすいのではないでしょうか。
しかもこの中にはIT企業も多く、初任給高め(概ね23万円程度)、勤務地が東京近辺or大阪などメーカー技術職に比べて魅力的な数字が並んでいます*1。
私もそう考えて「よし応募するぞ!」と思いいろいろな大企業のサイトを見てみたはいいものの...
ほぼ全ての企業でポートフォリオ提出という課題が新卒にも課されていました。ポートフォリオとは自分の過去の作品をまとめた資料のことで,これを使って書類審査が行われます。しかし工学部系のインダストリアルデザインや専門学校ならまだしも、心理学系の研究室で作品を意識的に作ってきた研究室はなかなかないのではないでしょうか?
結果として私はこれらの企業に応募しませんでした。
心理学を生かした就職のチャンスを少しでも広げたい、できれば大都市勤務がいいな...と言う方は「プログラミングでHPを作ったり,何らかの形でモノをデザインする経験を積む」ことを強く勧めます。アルバイトやインターンなどでそれらの企業を選ぶとお金をもらいつつポートフォリオに使えるモノを作れるはずです。
こういった実績はUXデザインの就職だけではなく、それ以外の就職にもきっと役に立つはずです。
もちろん、RやPython、Excel VBAといったプログラミングで解析等ができるという意味のアウトプットも大事です。こういったスキルは間接的に企業でも役に立っています。
物理・化学の勉強
心理系技術職として企業に応募する場合、SPIやTG-WEBといったウェブテストとは別に筆記試験を要求されるケースが多くあります。
もちろん筆記試験の結果だけで採用が決まるわけではありませんが、最低限の基準を満たさない人を不合格にするために使われている側面もあるようです。
心理学専攻の人だと,高校でも学んだし、大学でも生理心理学を勉強するタイミングで勉強したから生物はわかるけど、物理と化学はさっぱり...という方も多いのではないでしょうか。
大学レベルの物理・化学まで勉強する時間はないでしょうし、筆記試験の段階でそこまで要求する企業は決して多くありません。
それよりも現行課程*2の高校レベルの物理・化学を勉強しておくと、貴重なチャンスを逃さずに済みます。
私のように,入社試験前の数日で0から化学を勉強することにならないでくださいね。
動物実験の経験
就職に直接役に立つとは思いませんが、動物実験の経験はあったほうが良いと思います。というのも、企業で扱う研究テーマの中には生理に関連するものが多くあるからです。業界にもよりますが特に化粧品や食品系では多いはずです。
直接生理的な指標を扱わない人でも、研究テーマを理解するために論文を読んだとき、脳波など生理の領域がわかりにくいということもあります。もちろん教科書をしっかりと読んで学習することも大事です。しかしこういった生理のことをよく理解するために、動物実験で脳の一部を刺激する、あるいは組織の破壊を行うなどの経験はとても役に立つと思います。
その一方で、企業ではサルやマウスといった実験動物を用意するお金が大学に比べて乏しいのが実情です。また労働時間の管理にシビアな企業の場合、人間と生活する時間が異なる動物を世話することの難しさもあります。
動物実験を比較的重視する化粧品業界などでも、近年は動物愛護や企業倫理の観点が強く求められるようになっています。こういった事情で、年々動物実験はなるべくしなくても済むように、他の方法で代替できる方法を模索しているのが実情です。
とはいえいろいろな方に聞く限り動物実験はとても大変なようです。そのため研究テーマの一環で動物実験を選ぶほど必須だとは思いません。ただ大学内でのアルバイトだったりなんらかの実習などの機会を活用して動物の操作を体験しておくことは就職、そして就職後も役に立つと思います。
アンケート調査の経験
実験やケースのみで卒論を書く人もいますが、私は質問紙(アンケート)を使った研究を勧めたいです。それも、既にある尺度を流用するのではなく、可能であればアンケートを自作する経験があったほうがいいと思います。
というのも、アンケートに関するスキルは実験系のスキルと違って活用できるチャンスが企業においても多いからです。ほとんど実験はしないけど、アンケート調査はする、でもそのアンケートの質は...というケースも残念ながら散見されます。
アンケートを使った研究をしない場合は、アンケートを使った業務をしている企業、例えば人材やマーケティングリサーチといった会社でアルバイトやインターンの経験を積んでおくといいでしょう。
実際に会社で使われているアンケートを見たり分析する中で、企業に入ってからの仕事に生かせるスキルが身につくはずです。
まとめ
大学時代は就職のことはあまり考えたくない、という気持ちは私にもよくわかります。そもそもガクチカのために学生時代の経験を選ぶ姿勢が望ましいとは思いません。
とはいえ採用枠が非常に少なく、理系の人とも競合しがちな分野である以上、何の戦略もなく企業で心理学の業務ができるとは思えません。先輩方を見ても、研究室選びあるいはそれ以前から戦略的に実績を積んだり、大学での学びを深めることが心理学を生かした就職につながっているように感じます。
この記事を参考に、低学年のうちからいろいろ考えて実績づくりに挑んでもらえればと思います。