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【法定雇用率が変化】2024年からは週10H×兼業がトレンドに?

こんにちは。

2024年以降法定雇用率が上がる!といった障害者雇用関連のニュースが増えていますね。しかしこれらの障害者雇用の政策変更は私たち障害者側から見てメリットはあるのでしょうか?今回は2024年以降の制度変更と起こりそうなことを解説します。

なお、ここからの解説は厚労省が行なっている第123〜124回労働政策審議会 (障害者雇用分科会)の資料を元にしています。

2024年以降の法定雇用率制度の概要

2023年3月時点で報道されている法定雇用率関連の変更は以下の通りです。

  • 法定雇用率の引き上げ
  • 10時間以上の雇用で法定雇用率算定対象に
  • 障害者雇用助成金の減額

1つずつ詳しく解説します。

法定雇用率の引き上げ

本記事を書いている2023年3月現在、法定雇用率は2.3%です。しかし2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%に引き上げられます。

なお、国や地方自治体の公務員は2.6%以上、教育委員会は2.5%となっていますがこちらも上昇すると思います。

これは障害者からすれば単純に嬉しいニュースですね。

法定雇用率の算定基準の緩和

法定雇用率における障害者の人数は、「障害の重さ」と「労働時間」によって決まります。現在は週20H以上が法定雇用率の算定対象でした。下の表の赤枠以外の部分です。しかし2024年4月から身体・知的の重度障害者*1精神障害者の場合は10H以上で0.5人分の算定となります。

短時間しか働けない障害者の方にはメリットがありそうな気もしますが…本当でしょうか?

障害者雇用助成金の減額

法定雇用率をクリアしてさらに障害者を雇用すると、法定雇用率の算定1人につき2.9万円/月(2023年度のみ。従来は2.7万円でした))の助成金を受け取ることができました。

しかし2024年度からは、法定雇用率から超過した分の11人目以降は2.3万円に減額する案が厚労省から示されています。

この数字は従業員100人超の場合です。100人以下の企業では助成金の額と減額になる人数が違います。

良し悪しは別にして、助成金は障害者雇用の大きな動機です*2」。調整金減額は「障害者雇用はどうでも良い」という国からの誤ったメッセージと受け取られかねません。

起こりそうなこと-「細切れ雇用」

2024年以降の障害者雇用制度の変更を解説したので、起こりそうなことを予想します。まず、法定雇用率の上昇は単純に障害者の雇用が進むだけです。現状と大きくは変わらないでしょう。

大きいのは法定雇用率算定基準の変化と助成金の減額です。これにより1社で長時間働くのではなく、複数の会社で10Hずつ働く「細切れ雇用」が進むと考えています。

イメージしやすいように、架空の精神障害者(3級)のヒヨコさんを例に、2023年と2024年の会社ごとの勤務時間と法定雇用率における算定数を図にしてみました。

2023年の図には健保・厚生年金と書かれていますが、2024年には書かれていません。これは健保・厚生年金に入っていない為ですがこれを詳しく解説します。

ダブルワークと社保要件

前提として、企業の健保・厚生年金に加入できる要件は次の5つです。

  • 週の労働時間が20時間以上
  • 月給88,000円(年収106万円)以上
  • 1年以上継続して雇用、またはその見込みがある
  • 学生以外
  • 従業員が101人以上

これを1社でクリアする必要があります。複数の会社での勤務合計で上記の条件を満たしても勤務先の社保に入れません。2024年度以降のヒヨコさんはどの会社でも週の労働時間・月給を満たしていない為、国保・国民年金に加入します。健保・厚生年金と比較すると下表のようなデメリットがあります。

また、障害者であれば各種優遇を受けられる雇用保険も2024年以降の働き方であれば入れません*3

障害者は低所得・民間保険に入れないという状態になりがち。国の制度である社会保険の恩恵は健常者以上に大きいです。その社保に入れなくなるのは致命的な問題です。

「細切れ雇用」をする企業の本音

上記のような障害者の細切れ雇用はなぜ起こりうるのでしょうか?

それは、上記のような企業側の本音が見えるからです。

  • 企業の現場としては障害者雇用は嫌だ
  • 雇いすぎると貰える助成金が減る
  • 社保がなければ大幅なコストカット可能

2024年以降の制度は、週10H・0.5人単位で障害者雇用を管理できるようになる見込み。調整金と障害者雇用のコストバランスの最適化を目指した細切れ雇用がしやすくなります。

そして、これに拍車をかけるのが農園型障害者雇用。雇い元企業の事業とは無関係に農園で就労するため、A社相当10時間、B社相当10時間、C社相当10時間という細切れ雇用でも教育コストほぼ増えないと思われます

私のような、一定の配慮があればフルタイム就労可!という人が優遇される時代は終わりを迎えそうです。

まとめ-短時間就労に留め置かれる?-

10H以上で法定雇用率の算定対象とするのは、短時間しか働けない障害者にも就労の道を開くためのものでした。しかし、農園型障害者雇用などの現状を見るにつけ法定雇用率は手段ではなく目的なんだなあ…という印象が強くなるばかり。

制度の最適化を求める運動も必要ですが、私たちとしては今の制度の中で最適解を取れるように動くしかない、のだと思います…

*1:身体障害者の場合2級以上、知的障害者の場合はAなら重度扱い

*2:もちろん社名公表や厚労省からの面倒な指導に付き合うのは嫌だというのもあります

*3:マルチジョブホルダー制度による雇用保険加入はできますが、この制度にも2023年時点では65歳以上の年齢制限があります。