こんにちは。
以前こちらの記事で、JRが精神障害者割引を導入できない理由を解説しました。しかし、JRの周辺では精神障害者割引を導入する動きがあるので、その辺りを紹介します。
JRバスは精神障害者割引を導入
鉄道と異なりJRバスやフェリーでは精神障害者割引を一部導入しています。ここではJRバス8社についてどの会社が精神障害者にまで割引を適用しているか解説します。
こちらがその要旨です。路線バス含め一切割引なし!!という無慈悲な会社から、実用的な短距離高速バス路線まで精神障害者割引の対象になっているJRバス関東・中国JRバスまであります。
JRバス関東-成田空港行きバスが最安&最速-
最も実用的と言えるのがJRバス関東の東京駅ー成田空港間の高速バスです。通常価格は大人1300円/人ですが、精神障害者割引であれば650円。しかも介護者1人まで650円に割引されます。これは安い!!!
上記の精神障害者割引を適用後の、東京駅ー成田空港間の直通アクセスの比較表がこちら*1。
JRバス関東の親会社であるJR東日本には、客単価の高い特急成田エクスプレスと在来線があります。しかし精神障害者手帳を前提にすれば、定時性と座席の快適度以外はバスが圧勝です。JRが来ない成田空港第3ビルにも停車します。
Twitter上でこのバスの遅延率を尋ねたところ、成田空港第1ビルまで70分で着くことはない、大体遅延するとのことです。
中国JRバス-新幹線と競合する路線で割引-
中国JRバスは精神障害者割引導入にかなり積極的。広島県内で乗降する予約不要の高速バスは全て精神障害者割引対象です。本人のみですが半額になります。
特に注目すべきは以下の2路線
- 広島駅〜広島空港
- 広島バスセンター〜呉駅*2
障害者手帳を前提にすれば、両路線とも鉄道よりも安くて速いです*3。東京〜広島間は新幹線と飛行機の競合が最も激しい区間であり、飛行機という敵に塩を送っている状態です。
どうしてJRバスでは精神障害者割引を導入してるの?
その理由を説明する前に、まずJRの本社(例えばJR東日本)が子会社であるバス会社に与える影響力について見ていきます。
バス会社に対する影響
JRがバス会社に与える影響は大きく「連結会計」と「子会社への発言力」の2種類です。この強さは持ち株比率に依存しますが、JRバスは全て本社の完全子会社(持ち株比率100%)ですから以下のような影響があります。
- 割引運賃の適用可否をJR本社が決められる*4
- JRバスの業績悪化は、JR本社の決算にも100%反映
仮にJRバスが精神障害者割引を導入しその分減益すると、親会社であるJR本社の業績も悪化するわけです。上場しているJR東日本・東海・西日本・九州であれば株主の批判も想定されます。
こうなると減益に繋がる精神障害者割引、まして親会社の路線と直接競合する高速バスに適用することは許せないはず。なのにどうして一部高速バス路線では導入されたのでしょうか?
バスの共同運行
一部高速バス路線で精神障害者割引が導入された最大の理由がこの共同運行です。1つの路線を複数のバス会社が共同で運行し、最終的な売り上げを各バス会社の運行本数に応じて按分しています。
仮にその路線が不採算でも1社あたりの損失額が少ない代わりに、割引を含む運賃は共同運行するバス会社で統一しなくてはならないというデメリットがあります。
今回紹介した3路線は全て共同運行路線です。一定の需要が見込める路線ですが、単独運行にはやはりリスクがあります。そのリスクを回避できるなら精神障害者割引による減益を受け入れるしかない…これがJR東日本と西日本の本音ではないでしょうか。
まとめ-影響が小ならJRも精神障害者割引を許容?-
今回は主要バス路線での精神障害者割引を紹介しました。しかし、JR西日本宮島フェリーが2022年10月から精神障害者割引を導入するなど影響が軽微なところから少しずつJRも精神障害者割引を導入しています。
国交省や自治体からの補助金、あるいは非鉄事業で稼ぐ体質づくりが成功すればいつかは精神障害者割引が実現する…かもしれません。