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【患者が教える】精神科の選び方(外来診療向け)

こんにちは。

以前カウンセリングの選び方について解説したところ、多くの方に見て頂きました。さらに「精神科の選び方」も知りたいという声を頂きました。そこで今回は、患者側から見た精神科の選び方を解説します。

 注意

本記事は外来診療(個人経営のクリニック)が前提です。大病院や入院を前提とした精神科の選び方はまた違うと思います。

精神科の選び方が大事な2つの理由

メンタルヘルスが良くないという理由で、とりあえず近所の精神科に行くことはおススメしません。その理由は2つあります。

①病院を変えると0からやり直しになるから

基本的に精神科の治療は長期にわたります。発達障害の場合、数時間にも及ぶ検査と生活環境に関するヒアリングなどの結果として診断が行われます。

診断が下りてから投薬や電気などの治療に移行します。障害者手帳や自立支援医療に向けた手続きも長期的な受診が前提です。

しかし不誠実な医師だったなどの理由で病院を変えると、0から検査のやり直し…となり本格的な治療に入れません。

②予約から初診までの時間も長いから

昨今の精神科は患者が多いです。特に発達障害は既にキャパオーバーで、「新規の患者は受け付けない」病院もあります。

私が通っていた精神科では、予約から初診まで4か月待たされ、確定診断までさらに4か月かかりました。

医師と合わないからと病院を変えていては、いつまでも本格的な治療に入ることができません。初診までが長いので、十分に調べて早めの予約が大事です。

実際の選び方

選び方が大事なのはわかるけど、精神科を選ぶ際の注意点がわからない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は患者として精神科に通う私がその選び方を丁寧に解説します。

MUST:精神保健指定医が診察してくれること

開業医ならほとんどの医師が持っていますが、一応ウェブサイトで確認しましょう。

精神保健指定医とは、患者を強制的に入院させるかを判定するための国家資格(業務独占)です。この資格を得るためには3年以上の精神科での業務経験、各種精神疾患/障害に関する症例報告、口頭試験を合格する必要があります。

そのため、一定程度の専門性を持った医師かをチェックするための参考になります。

また、自立支援医療の自己負担上限額を設定してくれる"重度かつ継続"の判定を出せるのは、いわゆる発達障害の場合3年以上の精神医療の経験を持つ医師のみです*1

精神科利用の目的が投薬なら自立支援医療の可否は重要です。精神保健指定医の有無は必ずチェックしましょう。

②自分のニーズがある領域を専門としている医師であること

いわゆる心と行動の問題を見る精神科医にはいろいろなタイプがあります。「内科の領域を含めた総合診療医」タイプから「鬱から依存症、発達障害まで精神科領域なら何でも見る」タイプ、そして「児童の行動障害を専門に見る医師」などの専門領域が細かいタイプまでいます。

自分の症状があまり整理できていないなら「内科の領域も含めた総合診療医」が良いでしょう。自分の症状が明確なら、自分のニーズにきちんとあった治療を明記している病院の方がおススメです。

ほとんどの開業医は経歴をウェブサイトで公開しているため、調べてみましょう。小児精神科勤務が長ければ児童精神疾患に強いでしょうし、精神科救急勤務歴があれば緊急性の高い行動障害治療に適性があると考えられます。

③治療方針(特に投薬への考え)が明確であること

医師の中にも治療方針に差があります。特に患者さんに一番影響が大きいのは、薬を投与する/しないの違いです。

投薬のメリットとして、効き目が明確なことが挙げられます。数値では見えにくいカウンセリングと違い、神経に直接作用するからだと思います。

一方で薬を止めたときに体調に異常が生じるケースもあります*2開始した後の止め時が難しいため、なるべく薬は投与しないことを明確にしている病院もあります。

 注意

精神科の薬はほぼ処方箋のみで、薬局では買えません。診療報酬の点数も相まって過度な投薬をする医師もいるらしいのでご注意を。

④患者のニーズを聞いてくれること

精神科医は忙しく、医師の診察自体はほぼ流れ作業になりがち。患者のニーズを聞くのは看護師や心理職が中心です。

それでも次の3点は医師しかできません

  • 投薬の可否判定
  • 障害者手帳/自立支援医療の申請書類作成
  • 診断と治療の指示

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投薬にはデメリットもあるため、患者のニーズをきちんと聞いて判断してくれることが大事です。また障害者手帳や自立支援医療は患者の負担を減らすための大事な書類ですが、作成が結構面倒くさいらしく、やりたがらない人もいるとか…

こういう面倒な手続き/話し合いにも応じてくれるのがいい病院の基準ではないでしょうか。

(ADHDの場合)コンサータ登録医であること

ADHDの治療では、コンサータという薬が最初に選択されるべき薬とされています*3。しかし、この薬は「コンサータ登録医」という精神科医の中でも一部の医師しか投薬できません。受診したい病院にコンサータ登録医がいるか、病院ウェブサイトで調べたり電話で確認することをお勧めします。

自分にあう精神科の探し方

選ぶべき精神科の基準は明確になったところで、「どう探すか?」という問題が残ります。

精神科は扱う内容がデリケートです。そのため、友達同士の口コミで病院の内情を知ることはできませんし、Googleレビューもあまり参考にはなりません。

そこで、各病院のHPを見てみましょう。きちんとした病院であれば次のうち半分程度は書かれているはずです。

  • 対応できる疾患領域
  • 治療方針
  • 投薬への考え方
  • 治験への対応状況
  • 障害者手帳などの手続き
  • 医師の経歴(心理士の経歴はほとんど書かれてません)

これらを読んで自分のニーズに合っているか確認してから受診予約をすべきと思います。

まとめ

今回は精神科の選び方について解説しました。要点だけ言えば「自分自身のニーズを明確にして、治療方針をオープンにしている病院を選ぶ」ことが大事と言えます。

長期間の治療が必要な精神疾患/障害ですが、信頼できる精神科のもとでできるといいですね。この記事がその一助になれば幸いです。

精神科の前に行ってほしいカウンセリングサービス、その選び方も解説しました。
ぜひ読んでみてください!

 

*1:"重度かつ継続"が非適用になった場合、年収が増えると自己負担上限額がなくなるor自立支援医療の対象外になることがあります

*2:これを離脱症状と言います

*3:いわゆる第一選択薬