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【事後申請可】向精神薬とドーピングの関係と対応について

本記事は2022年の禁止国際基準*1に従い記載されています。

こんにちは。

ブログを読んでいる方の中には薬を飲みながらスポーツの大会に出ている方もいるでしょう。

でも、その薬、ドーピング対象になることも…。ということで、あまり注目されない向精神薬のうちドーピングに引っかかる薬と普通の競技者向け対策法を解説します。

向精神薬とドーピング

JADA(日本アンチドーピング機構)によれば、 ドーピングとは「スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」とされています。

競技力を高めるために禁止された物質を使うとドーピングになるのですが、この禁止物質の中には医薬品*2が含まれています。

このブログはADHD等の当事者向けの記事ですので、向精神薬系の薬で確認すると…

ここでは分かりやすいように商品名(ex.コンサータ)で記載していますが、正式文書では一般名(ex.メチルフェニデート)です。正式文書はこちらから確認できます。
  • コンサータ
  • ビバンセ*3
  • アデロール*4

この3つがヒットしました。全てADHD治療薬で興奮薬として禁止されています。私が検索した限り抗うつ薬や睡眠導入剤は禁止物質にはありませんでしたが、禁止物質は毎年変更される為常々確認をお願いします。

競技が終了した後に関係者から呼び出され、血液検査や尿検査を受けます。超一流選手しか関係ない訳ではなく、部活の県大会レベルでも検査の可能性があり、私の知り合いでも実際に検査を受けた人がいました。

治療使用特例(TUE)

ドーピング回避の為に、禁止物質を含む薬は避けるのが原則です。しかしドーピングになる薬でも、その薬でしか持病の治療ができない…こともあります。その対策として、治療使用特例(TUE)という手続きがあります。申請により使用が認められれば、その薬を使用できます。

例えば2021年の東京オリンピックで話題になった体操のバイルズ選手も、この治療使用特例(TUE)で認められたようです。

記事内にはADHD治療の為のメチルフェニデート*5と記載されていますが、日本におけるコンサータを使ったのでしょう。

www.nikkansports.com

向うつ薬でも治療使用特例(TUE)が認められるケースもあります。

禁止除外規定の手続き方法

注意

以下は国内で部活・趣味レベルの競技者向けです。各日本選手権や国体などの出場者は事前のTUE申請が必要です。

 

上の図が普通の競技者向けのTUE申請の流れです。国内トップクラスの競技者と異なり、ドーピング検査に引っ掛かった後にTUE申請をすればOKなのが特徴です。

ただしTUEが認められる為には、代替治療がないなどの条件を満たすことを医師の診断書等で証明する必要があります。その為、事前に医師と十分に話し合っておき、この薬しか効果がないんだということの合意をとって置くことが大事です。

なお、TUE申請自体は競技者本人と医師だけで書類を作成できます。コーチや監督に障害を隠してるんだけど…という方もバレる心配はないのでご安心ください。

日本におけるADHDの治療薬がコンサータだからといって、ストラテラやインチュニブを試さなかった場合、ドーピング検査に引っかかった後のTUE申請が却下される可能性があります。

まとめ

この記事の要点は、

  • コンサータとビバンセはドーピング検査に引っかかる
  • 普通の競技者は検査後にTUE申請をすれば良い

この2つです。コンサータをはじめとする向精神薬は日常生活を大いに改善してくれます。しかし、ドーピング問題にもつながる為十分に注意した服薬が必要です。

なお、コンサータ等の向精神薬は海外への持ち込み/持ち出しに厳格な規制があります。詳細はこちらの記事を読んでみてください。

*1:ドーピングについて記載された正式な文書

*2:ここでは医師による処方箋や指示によって使用する医療用医薬品を想定しています。

*3:一般名リスデキサンフェタミン

*4:一般名アンフェタミン。米国では一般的なADHD治療薬ですが、日本では未承認です。

*5:これは薬の成分を示す一般名です