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【卒論のアンケート調査】twitterで回答者を集めよう(注意点も解説)

こんにちは。

先日twitterを眺めていたところ、「twitterで卒論のアンケート調査をするのって、学生と所属研究室の教員、大学の品位を疑いたくなる」という趣旨のツイートを見つけました。

この考え方の理念には賛同できる点が多いのですが、個人的には思うところがあり次のようなツイートをしたところ、いくつか懸念点を指摘されました。

皆さんのご指摘をまとめると,

  • 多重回答への対策ができない
  • サンプルはほぼフォロワーの考えに近い人になる
  • まじめに回答する動機がない

おおむねこんな感じでした。皆様鋭いところをついています。特に多重回答への対策については見落としていました。

今回は皆様の批判への回答を書くことで、今の心理学部がいかに危機的な状況で卒論にtwitterを使わざるをえない状況なのかを考えて頂ければ幸いです。

なお私自身は何ら工夫をせずにアンケート調査を行うことには反対の立場で,過去には次のような記事を書いています。1つ目の記事ではあいちトリエンナーレ騒動をめぐるtwitterでの調査のいい加減さについて触れました。

こちらの記事では、そもそもなんでみんな質問紙調査(アンケート)しちゃうの?というのに個人的に思うところを書いています。

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心理学部でのサンプル収集はどう行われているか?

私自身は学生時代に心理学部にいました。毎年秋くらいの時期になると「実験に参加してください!」とか「質問紙調査へのご協力お願いします!」というお願いがなされます。

ではどうやってこういうサンプルは集められるのでしょうか?
私の大学や知っている範囲では以下のようなものが考えられます。

  • ①心理学の授業履修者に授業前にお願いする
  • ②心理学部のLINEでお願いする
  • ③マクロミルや楽天インサイトなどのネットリサーチ会社のパネルに委託する
  • ④世論調査同様にRDD方式で電話をする
  • ⑤手続きを踏んだうえで郵送アンケートにする
  • ⑥twitterで撒く

この中で④は実際にやっている学生を(少なくとも私は)見たことがありません。それは実行するのに時間とお金(電話料金や郵送費)がかかる割に、本当にサンプルを集められる保証がないからです。
 

卒論レベルの質問紙調査の場合、ほぼ①や②のような手法で行われています。もちろん心理学の学生向けに質問紙を撒いてヒト一般に適用できる研究もあると思いますが、「(ヒト一般の)抑うつ傾向に関する尺度の検討」というテーマで心理学部の学生に質問紙を撒くのはどうみても適切だとは思えないのです。

特に臨床系の学部生の場合、卒論のテーマが質問紙になるケースが多いこともあり,心理学部生からサンプルを集めるのは適切なのか?と学生時代いつも思って見ていました。

なぜパネル調査を活用できないのか?

ここまで読んできた方なら「やっぱりマクロミルとかのパネル使うべきなのかな...」と思った方もいるのではないでしょうか。私もそう思います。

でも大学にはできません。そんなお金はないから

そもそも自分で質問紙を設計して、パネルに投げるといくらかかるのでしょうか?


このサービスの場合、サンプルサイズ101~300人、質問数20~30問という卒論でありそうなレベルで9万円かかります。

自分のアルバイト代から出すにしても、時給1000円として90時間分です。就活もして卒論執筆もしている中では難しいはず。

次に大学の研究費から支出することが考えられます。しかし私の大学のように実験参加の謝礼が毎年引き下げられる状況ではとてもじゃないけどムリなのが実情。先生の科研費を使いたくても心理学部の卒論の多くが科研費の枠外にあるため使えません。

このような事情を考慮すると、少なくとも卒論や修論レベルでは企業の調査のようなパネルの導入は無謀と言えます。

twitterでの調査は有効なのか?

ここまで大学で一般に行われるサンプル収集の方法やパネル調査には課題が多いことを説明しました。ではなぜtwitterでの調査は有効なのでしょうか。

  • 圧倒的低コスト、ほぼ0円
  • サンプルの質がそこそこ高くなる

こういった理由で卒論などの業績にならない論文での調査に実装できるからです。*1

コストが圧倒的に安いのは言うまでもありません。では回答者の質はどうでしょうか。

確かにtwitterでのアンケートの回答者は基本的にフォロワーさん、すなわち研究実施者と興味関心・思想がある程度似ている人たちです。決して回答者の質が高いとは言えません。

しかしtwitterには、紙アンケート調査やパネル調査では絶対に使えないリツイートという武器があります。リツイートが繰り返されればアンケートを見る人の属性は必然的に多様になり、回答者の属性もそれなりに多様になります。

仮にリツイートされることなくフォロワーだけが回答者になったとして、大学の心理学の授業で集めるよりもサンプルの質が低くなるでしょうか?

私自身も卒論の実験参加者募集をtwitterで行いましたが、それは「同じ学部のプロ被験者を可能な限り排除する」のが目的でしたし、結果的には成功しました。

このような理由でtwitterでのアンケート調査は現実的でありまた有用な手法と考えます。

twitterで調査をする際には何を気を付けるべき?

ここまでtwitterによるアンケートの利点を書きましたが、何も考えずにやると意味のない結果が返ってきます。少なくとも次のことは気を付けるべきでしょう。

  • a.調査対象属性の検討
  • b.多重回答の抑制
  • c.不真面目な回答の抑制

これらの問題に対策が打てない、twitterの機能であるアンケートシステムにそのまま選択肢を貼り付ける行為は避けるべきです。例えばグーグルフォームなどのtwitter外のアンケートシステムに誘導するのはどうでしょうか。少なくともtwitterで完結するよりはよいでしょう。

ではグーグルフォームを使うとして、a~cの問題を解決するためにできることを考えてみます。

aについてはグーグルフォームを予備調査・本調査に分割し、必要な属性でない場合予備調査の段階で排除することで対処可能です。

bについては最終的にはあきらめるしかありません。大学の授業で集める場合でも悪意のある回答者がこっそり2人分回答したり、パネル調査だって身分証明書を偽造すれば可能です。

ただし、質問の量を増やすことで面倒くさくして多重回答する人を抑制することはある程度できます。また回答者の同意を得たうえでクッキーを取得することでも抑制できます。実装可能なのかはわかりませんが...*2


cについては真面目に回答するインセンティブを与えることで対応できます。具体的には回答者の同意を得たうえでメールアドレスを取得し、謝礼としてamazonギフトカードを送るのはどうでしょうか。自分で謝礼を用意しサンプルも確保する分、パネルよりも安価に実施できると思います。*3

このときに、著しく回答の品質が低いとみなされる場合*4には謝礼は送らないという注意書きをしておくことで、ある程度真面目に回答するインセンティブにはなるはずです。

ただし私の大学では謝礼にamazonギフトカードを送る行為は認められていません。自己負担で調査する大学では可能かもしれません。

 

もちろんtwitteとグーグルフォームという無料のシステムを使うため完璧ではありませんが、それなりの質を担保することは工夫次第で可能だと思います。

実際に質問紙調査をするならどんなふうにグーグルフォームを使って質問紙を作ればいいのか?をこちらの記事で解説しました。ぜひご覧ください。

まとめ「完璧な調査は存在しない」

本記事では大学の心理学部におけるアンケート調査の実態を解説した上で、twitterでのアンケートのメリットと注意点を解説しました。

twitterでの調査には賛否ありますが、目的をしっかり決め、限界をわきまえた上で調査するならば学生にとってこれ以上の武器はないはず。

私個人としても、ある程度は質問紙調査のいい加減さに目をつぶってでも研究成果の公開を認めたうえで、その後の追試によって質問紙と結果の妥当性が検討される方が健全だと思います。

これからtwitterで卒論アンケートをされる皆さんはこの記事の解説をよく読んだうえで「注意点を克服できてる?」と考えてもらえれば幸いです。

*1:さすがに博士論文やNatureを狙う論文のサンプルをtwitterで集めていたら笑えませんが...

*2:同意をちゃんと得ないとリクルートみたいなことになります

*3:例えば,300人に30問のアンケートを,amazonギフトの謝礼100円で実施する場合、3万円になります。これは上で書いたパネルの1/3の価格です

*4:例えば全ての問題に"1"と回答する行為