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【文系・心理学専用】統計学スキル0から卒論執筆まで!初心者向けおススメ参考書

こんにちは。

心理学部の人だと,「数学?そんなの受験でも使っていないぞ」とか「統計とか正直分散から怪しいんですよね...」という人が多いのではないでしょうか。でも、統計学のことを全くわからない状況で3~4年生になると、卒論を書くときにとても苦労します。

というわけで今回は、大学で心理学を専攻し、今は心理学を活かして企業で開発をしている私の目線で、学部1・2年生向けのこの本だけは読んでおけ!という本をおススメしておきます。

分析の前処理でプログラミングとかやろうかな...という人はこちらの記事もどうぞ。

[:contents]

心理学の研究ではどんな統計学を使うのか?

私(実験系)の場合は実験計画法・分散分析でほぼ完結しました。ただし、質問紙の研究を行う場合は因子分析・主成分分析も必要になると思われます。

そのほか、同じく心理学専攻の私の知り合いのケースを見ている,と共分散構造分析やパス解析なども必要になってくることもありそうです。

他の心理学専攻の人はどんな統計手法を使っているのか?を調べるためtwitterのアンケートで調査してみました。サンプルの数と質や質問文などツッコミどころはたくさんありますが、少なくとも集まったデータを見ると分散分析が圧倒的多数ですね。

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ちなみに、心理学以外の分野では全く違う分析が必要だったりします。例えば経済学だと時系列解析が有名ですね。



いずれにしても、基本的な教科書に掲載されている分析ができること、特にその分析をする際に注意すべきことをわかっていることが重要です。もっとも、大学院に進学せず卒論を書くだけならば「○○分析をするためにはRで××の操作をすればいいのね!」ということが分かっているだけでなんとかなってしまうのも実情ですが...

専門的とは言えなくても数学的な理解が多少できているだけで,「3群以上のときにt検定を繰り返す」*1ようなおかしな統計処理を避けることができます。

ということで、統計学のこと詳しくないけどとりあえず卒論は書けるぞ!のレベルに到達するために読むべきおススメの参考書を紹介していきます。

おススメ参考書

最近のデータサイエンス・AIブームの影響か,近年統計学の参考書は急激に増えていますし、ネット上にもたくさん資料は落ちています。

ただ、心理学出身者にもわかるよう数式が必要最低限に抑えられていて、それなりの評価を得ている本はかなり限られているのが実情です。

今回はその中でも次の条件を全て満たす本にターゲットを絞ってみます。

具体的には、

  • 現行の高校数学1A・2Bの知識で読める(行列の知識が不要である)
  • 必要に応じて、文字や図での説明をしている。数式に頼りすぎていない
  • 基本的な解析法(最低でも分散分析まで)については扱っている

の3つです。そのなかでも特に今回は「数学的な手法も多少触れることができること」にこだわっておススメの本を選んでみました。

全て私が自腹で買って勉強した本なので全て心からおススメできる本だと思います。

 

統計学の初歩


 

この本は統計学の超入門書で,一応は農業統計学を意識して書かれています。でも平均・分散から分散分析・因子分析まで扱っており基礎知識0から始められるのが魅力の本です。

心理統計学の本ではありませんが、尺度基準の問題など心理学において重要な問題もちゃんと扱っていて、統計検定の勉強にもなりました。入門書では極めて珍しいことに順位データなどのノンパラメトリックの手法についてもちゃんと解説*2してくれています。

しかもこの本では「こういう状況だとどの手法を使うべき?」という疑問を一発で解決してくれるチャート図も掲載されており、分析手法の検討にも使えます*3

 

数学的な面でも、数3や行列の知識がなくても読むことが可能な本であるにも関わらず、理論的な側面も最低限理解できるようになっています。

また、入門書なのに実験計画法を扱っていることもこの本の魅力。総当たり(すべての組み合わせを実施)ではなく試行数を抑えつつ統計的に価値のある結果を得るための手法や乱塊法などのことを実験計画法といいますが、これをちゃんと解説してくれている入門書は貴重です。

ページ数が少なめですが、心理学にとって重要な分野を数学的知識最低限で説明しているため、統計学最初の1冊として超おススメの1冊です。

問題演習がほぼないのが気になりますが、そこは他の問題集を購入することで解決できると思います。問題演習を多くしたいならば統計検定2級の過去問集などを購入すべきかと。
 

一方、統計学の入門書として有名な東大出版会の統計学入門ですが、あれは中級者向けの本だと思います。私は統計検定2級(大学教養課程レベル)を持っていますが相当頑張らないと読めないかな...

一応リンクだけ貼っておきますね。扱っている内容も多く良書ではあります。


 

心理統計学


 

東大で長年心理統計学をを研究し、日本の心理統計学をけん引されてきた南風朝和先生による心理統計学の入門書。10刷以上した心理統計学の超有名な本です。

分散・相関係数を数理的にしっかり勉強したい*4というレベルから分散分析・因子分析まで数学的な解説をメインに扱う良書。数学的な解説をしているものの、教科書の最初の方は数学の知識が高校数学1A程度でも理解できるレベルです。

栗原先生の本とは異なり、因子分析において斜交回転*5の解説をしていたり、分散分析においてマルチコの解説をしていたりとそれなり(統計検定でいえば2級レベル)に統計学を学んできた人であれば「考えないといけないけど現実には難しい問題」も丁寧に解説しているのがこの本の魅力。

高校数学の数学2Bを十分理解していないと読み切れない本ですが、数学的な面もしっかり理解して統計学をやりたい人にはおススメの本です。

またこの本には続編となる「続・心理統計学の基礎」や問題集である「心理統計学ワークブック」という本も販売されています。手を動かしながら心理統計学の理論面を勉強したい!という人におススメです。

Rで実装するための統計学入門書


 

2008年に発売された本で10刷以上を重ねています。Rの参考書と言えば必ずおススメ紹介される本だと言えるでしょう。本の著者は全て心理統計学の研究者であり、心理学部の学生の数学・統計スキルを理解したうえで書いているのがこの本の魅力。

 

統計解析のフリーソフトであるRを使うことで統計学の入門的なスキルを学び,実際に分析できるようにする!のがこの本の目的となっています。

R自体はプログラミングが必要ですが,プログラミングスキルが0の人でも解析できるようにごく初歩、具体的にはソフトウェアのインストールやデータの型などから解説してくれています。

 

入門書でありながら扱われている解析は割と多様な方法が解説されていて例えば因子分析や単・重回帰はもちろん、共分散構造分析や人工データの発生といった領域まで扱っており、1冊完全に覚えれば最低限の分析はできそうです。

発売から10年以上の年月が経過しており,既に使えなくなっているパッケージもあります。


あくまでもRの参考書という立ち位置に立つため、統計学の理論についてはごく簡単にしか説明されていません。数列や行列を用いた解説が一切ないため「とりあえず実装したい!」という人にはおススメできる本の1つとなっています。

この本のレベルアップ版で、実際の分析や論文執筆でRをどう使うのか?という解説をしてくれているのがこの本。少しでも良い論文を書こうという各研究者の苦労が手にとってわかるような名著。地味ではありますが宜しければどうぞ。


 

 

まとめ

今回は文系数学レベルの統計学から卒論をなんとか書くための統計スキルを身につけるために私自身も使っている本を紹介してみました。もちろん紹介した本を完璧に理解すること自体簡単ではないのですが、読んで実践すれば「とりあえず意味を理解しながら卒論書けるぞ」にはなるはず。

理論をわかったうえで統計処理をすると、意外に面白いものです。最初大変ですが頑張ってください!!

ご質問がありましたらこちらの質問箱に投げてみてくださいね。記事の参考にさせて頂きます。

*1:t検定だと過剰に有意になりやすくなるため、本来は分散分析が必要な状況です

*2:詳細はググってください。

*3:もちろん何も考えずにチャートに依存するのは良くないですが...

*4:単純計算で数学的に導出できるレベルではないと読めないと思います

*5:栗原先生の本では直行回転のみの解説となっています