こんにちは。
前回「twitterで卒論のアンケート撒くの最高!!」という趣旨の記事を書いたところ,いろいろな方から反響を頂きました。そしてその多くは比較的好意的なものでした。感謝いたします。
前回の記事はこちら
今回の記事は「どうやって卒論向けのアンケートを作ればいいかわからない...」という人向けの記事。
いかにして卒論におけるTwitterアンケートの質を改善するか?に焦点を当てて記事を書いていきます。
お気づきの方もきっといるはずですが.この記事は以前テキトーな質問紙を作って撒いた結果,調査そのものがムダになるという地獄のようなことが起きた私の二の舞にならないで欲しい...という思いから書いています。
1.マインドセット
まずtwitterで撒いたアンケートに答えてくれる方の特徴を考えてみます。回答する人の特徴を考えなければ「何を意識すればいいのか?」を考えることすらできません。
- 善意
- 時間は使いたくない
- 回答を真面目にする動機がない
この他いろいろありますが,おそらくは「2~3分で簡単に回答できるアンケートなら協力してあげてもいいけど,それ以上は絶対無理」が現実だと思います。
従って,2~3分で確実に回答しきれるアンケートにする(記述式回答を強制するとか論外です)か,謝礼を支払ったうえで真面目に回答するインセンティブを与えるかでしょう。
2.何を使う?
まず,Twitterのアンケート(投票)機能は絶対に避けましょう。以下のようなマズい理由がたくさんあります。
- 回答者の方が誤った選択肢に回答してしまっても修正できない
- 回答にかかる時間が短すぎ,全く考えずに投票する
- 悪意あるリプライによって回答が影響を受けやすい
というわけでTwitter以外の方法を探すことになりますが,無料で使えるフォームから選ぶならGoogle Form(グーグルフォーム)がおススメです。
理由としては
・多くの人が使っていて信用されている(怪しいから回答しない!を予防できます)
・解説サイトが多くあり,いろいろな工夫が可能
・csv(Excelファイルに近いヤツ)でダウンロードが可能で,分析前の手入力が不要である
といったものが挙げられます。というわけで今回はグーグルフォームを使う前提でアドバイスを書いていきますね。
3.どんな質問を作る?
まずは「何を質問すべきか?」から検討していきましょう。
既に確立されている質問紙,例えばユーザビリティにおけるNASA-TLXなどを使う場合は気にしなくても良いですが,そうではない場合や「尺度作成」が目的の場合はこの段階で指導教員の先生とじっくりと相談する必要があります。
いずれにしても,実際の調査では大きく分けて回答者の属性(性別や年齢)に関する質問と,卒論で聞きたいことに関係する質問の2つがあることがほとんどです。
リサーチ会社(マクロミルなど)が行うアンケートでは属性に関する質問は最後の方に!という鉄則があるらしいですが,twitterでグーグルフォームを拡散する場合は属性に関する質問は最初にしましょう。
というのも特定の属性にのみアンケートを配布できるリサーチ会社と異なり,twitter経由でグーグルフォームを回答する人の属性はバラバラすぎるからです。
※twitterのツイートに対象者の属性を書いたからアンケートでは聞かなくていいや!というのは絶対ダメです!あなたのツイートをちゃんと読まずにグーグルフォームに来ている人もたくさんいます!
特に一部の属性に対してアンケートをしたい場合や,属性ごとに目標回答数を決めている場合などは必ず最初に属性を置きましょう。
という注意書きをしたうえで早速作ってみましょう。今回の調査テーマは「中学校の時に受けた授業の好き嫌いについて」です*1。
セクションを用意しましょう。
属性の作り方
最初に属性を聞くべし!と書きましたが,どのように聞けば良いのでしょうか?初めてグーグルフォームを使う方にもわかるよう,図をふんだんに使って解説していきます。
上の図と数字を対応させながら読んでくださいね。
①ラジオボタンを選択
②「必須」をオン
③「回答に応じてセクションに移動」にチェック
④「次のセクションに進む/フォームを送信」のいずれかを選択
今回は「男性」のみをターゲットにしているため,それ以外の方はここで調査終了ということにします。そのため「男性」のみ「次のセクションに進む」にしてそれ以外は「フォームを送信」(調査終了)を選択しましょう。
本来調査したい質問項目の作り方
心理学の卒論のアンケートでやる場合,5件法(1が「大好き」で5が「大嫌い」)のようなアンケートになるはずです。グーグルフォームで作成する場合少し面倒ですが,それでもちゃんとできます。図も用意したのでやってみましょう!
①「選択式(グリッド)」を選択
②「行」に質問文を,「列」に1~5の選択肢を配置*2
③「各行で1つの回答を必須にする」をオンにする
特に「各行で1つの回答を必須にする」は必要に応じて必ずオンにしましょう。これを使うことで,「回答者が忘れたせいでデータがムダになった!」ということを避けることができます。
4.おススメの機能
ここまでで最低限のアンケートは作れたはずです。でも「少しでも良いアンケートを」と考えたときにはいろいろな工夫ができます。
ただしプログラミングを必要とする機能も多いため,今回はプログラミングなしで使える機能や「コピペだけ」でできる機能に絞って次の3つをおススメしてみます。
行を並べ替える
アンケートの内容によっては「質問の順序が回答に影響するかも...」というケースがあります。いわゆる順序効果というやつです。
この機能を用いることで質問の順序による影響を相殺することが可能になります。
進行状況バーを表示
心理学系の卒論を書くために行う質問紙調査では,どうしても質問が多くなりがちです。
紙で調査する場合両面で合計5ページ程度でしょうか。
しかしネットのアンケートで5ページ,すなわち画面遷移5回というのは回答者にとって相当の負担です。そのため少しでも回答者の負担を減らす努力は義務だと思います。
特に「このアンケートいつまで続くんだろう...」という不安は回答者にとって極めて大きなストレスです。途中でアンケートから離脱するきっかけになります。
進行状況バーを表示することで,「今全体のうちこれくらいの位置なのか...」ということがわかり,回答者のストレスを抑制することができるはずです。
画面右上にある「歯車」ボタンを押して設定を選択すると「進行状況バーを表示する」がありますのでこれをオンにすればOK。
回答数制限
N数(サンプルサイズ)を無制限に増やせば簡単に統計的有意になってしまいますし,それはもはやチートです。
また謝礼を支払ってアンケートに協力してもらう場合,予算の都合によって取れるサンプルサイズ*3が自動的に決まってしまうケースがあります。
特に謝礼ありの調査の場合,「アンケートに回答してあげたのに謝礼がもらえないんだけど!」ということになると大変なことになります。そんなことを避けるために回答数を制限することが必要です。
上の2つと異なり,プログラミングが必要な機能ですがありがたいことにコピペでできるようになっています。
やり方はこちらのサイトで解説されていますのでご確認ください。
5.謝礼送付先の情報を得る
対面での調査ではないため,何らかの方法で謝礼を送る先の情報を得る必要があります。手段はいろいろあるはずですがメールがおススメです。
先ほどと同じく「歯車のマーク」ボタンで設定を選択し,「全般」を選択しましょう。そうすれば「メールアドレスを収集」が出てきますからこれをクリックすればOKです。
当たり前ですが,個人情報の管理についてちゃんと説明してから取得する必要があります。
6.回答者の負担を意識した質問紙にする
先ほども書きましたが,twitterでアンケートを撒く場合,回答者の負担を減らすことを徹底的に意識する必要があります。少しでも面倒くささが増すと離脱される確率が大幅アップです...
一度作成したら必ず他の人,できれば質問紙作成に関係していない人に試しに回答してもらいましょう。
- 回答者によって解釈が割れるような質問はないか?
- 回答者にとって不快に感じる質問はないか?
- 記述の比率が過剰に高くないか?
これらは最低限チェックする必要があります。回答してもらった人から何らかの指摘があった場合,修正するかどうちゃんと検討すべきです*4。
また回答者の多くはスマホで回答しています。そのため,実際にアンケートを撒く前に「スマホで回答するとどう見えるの?」ということを必ず確認しましょう。アンケートはスマホで回答しやすいか?が全てです。
まとめ
すべきことはたくさんありますが、無料でいろいろな人を回答者にできるのはネットアンケートの強みです。本記事を活用しつつ、先生方にも相談しながら、後輩の皆さんが卒論を完成されるのを願っています。
今回はGoogleフォームの使い方を解説だけをしましたが、このような心理学の研究法は意外と学校で学ぶ機会が少ないかもしれません。ここでおススメの心理学研究法を解説してくれている本を紹介します。具体的な手続きはもちろん、倫理面もガッツリ書かれているので卒論でいろいろな研究を始める前に参考にしたい本です。
ぜひ読んで自分の卒論執筆に活かしてみてくださいね。
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