本記事はGoogle Advent Calender にある #今年読んだ一番好きな論文2019 に応募するために作成された記事です。他の作成者さんの記事は下記のリンクよりご覧ください。他分野ですが本当に学びになります。
皆様こんにちは。ことりさん(@MarathonUniv)です。
ありがたいことに(?) #今年呼んだ一番好きな論文2019 に執筆のチャンスを頂きました*1。
ということで今回は私の専門である心理学からtwitterに関する研究を紹介したいと思います。
M. Komori, A. Miura, N. Matsumura, K. Hiraishi, and K. Maeda (in press). Spread of Risk Information Through Microblogs: Twitter Users with More Mutual Connections Relay News That is More Dreadful, Japanese Psychological Research.
記事を書いている12月16日現在はオープンアクセスのPsyArxivで読むことができます。
余計なことはさておき論文紹介に入りましょう。
筆者の皆様のうち,多くはtwitterをされており,しかもたくさんtwitterでつぶやかれております。そんな(きっと)twitterが好きな研究者たちのtwitterへの惜しみない(?)愛もたっぷりとお楽しみください!
はじめに:リスクはどのように認知されるか?
なお,その後の研究で時代や文化によって「何をリスクとするのか?」は大きく変化しうることが示されています。
調査手続き
本研究はtwitterにおいてリスク情報はどのように拡散するか?またどのような人がリツイートする傾向があるのか?を探ることが目的です。そのためまず「どのツイートのリスク認知を調べるか」決める必要があります。
- 疾病・自然災害・放射能災害のいずれかのリスク情報を含むツイートを検索
- 毎日新聞のデータベースからリスク事象と結びつきの強い単語を47語選出
- 1と2の条件を満たすツイートからランダムに10%を選出
- 50リツイート以上されていることツイート(70ツイート)を選出
- 70ツイートについて全て読んだうえで手作業で10個のツイートを選出
リスク知覚の評価
最後にちゃんと該当のツイートを読んでいたかを確認するため,評価した10個のツイートと評価に使っていない5個のツイートの合計15個のツイートから,「読んでいない5個はどれか?」を回答させる再認課題に答えさせました。
リスク知覚の結果
詳細な結果は下の図をご覧ください。*4
ツイート拡散の流れの検討
考察
結果としてリスク情報を含むツイートはユーザの特性によってリツイートする/しないに異なる影響を与えることはわかりましたが,これは伝統的な影響モデルではリスク情報伝達を説明しきれないことを示しています。どうしてこのような結果になるのでしょうか。
本研究ではこの結果についてTwitterを使う動機が異なるのでは?*6という観点から検討しています。
Miura & Yamashita(2007)を始めとした研究ではSNS使用目的を「情報交換」と「社会的な関係の維持」の2要因があるとしています。Naaman, Boase, & Lai (2010)はTwitterの利用者を情報交換をメインの目的とする"Informers"と,個人的な関係を維持するために自らについて情報更新を行う"Meformers"に分けています。
結局これら一連の研究から次のような説が示されています。
さて上記のような研究成果をもとに筆者たちは様々な考察を行い,リツイート行動には2つのメカニズムがあるとしました。
- 幅広い種類のリスク情報をリツイートすることで情報交換をしたい人によるリスク情報の拡散(相互フォローが少ない人に該当)
- フォロワーに自分自身が感じた恐怖感を知らせるためにリスク情報をリツイートする人による拡散(相互フォローが多い人に該当)
せっかくなのでみんな大好きいらすとやを使って図にするとこんな感じになります。
感想
筆者らによるTwitterに関する研究はこれが初めてではなく,これ以外にも多くの研究があります。研究成果についてもっと知りたい!という方はこちらのリンクから成果報告書を日本語で読むことが可能です。
話を本題に戻しましょう。考察では相互フォローの数が増えれば自分の思いを相手に伝えるためにリツイートするようになると述べました。
個人的にも昔は面白いと思ったらなんでもリツイートしていたけど,今(Twitter歴5年,1日あたり50ツイートくらい)はフォロワーさんの目も気にしてツイートするようになったなあ...と感じます。主観的にも納得のいく結果です。
ただこの記事を書きながら私の相互フォローの数を見てみたのですが,「少ないなあ...」と感じてしまう数でした。ムダなリツイートばかりしているからでしょうか...
では最後にみなさんにお聞きします。あなたはそのツイートをリツイートしたのはなぜですか?そして相互フォローの数はどれくらいですか?
...というわけでお読み頂きありがとうございました。本記事を読んで面白かった!と感じられた方,宜しければ私のtwitterもフォローして頂ければ幸いです。
引用文献
Naaman, M., Boase, J., & Lai, C.-H. (2010). Is it really about me?: Message content in social awareness streams. In Proceedings of the 2010 ACM Conference on Computer Supported Cooperative Work (pp. 189–192).
Slovic, P. (1987). Perception of risk. Science, 236(4799), 280–285.