こんにちは。
心理学専攻の人にとって最もメジャーであろう公務員。その選択肢に新たな選択肢が加わりました。
というわけで今回は国家公務員総合職に2024年実施試験から新設される「政治国際・人文」区分を解説します。
今までの公務員試験
今まで心理学を受験科目にして公務員になるとすれば、
- 国家総合職(人間科学区分)
- 法務省専門職
- 家裁調査官
- 地方公務員心理職
しかありませんでした*1。
これら最大のデメリットは、「行政職(事務職)になれない*2」「受験の選択肢の狭さ」です。
特に国家総合職(人間科学)は採用はほぼ法務省か厚労省の2択に絞られており、学部は心理系だけど経産省志望だから法律科目勉強しなきゃ…とかなり不利な状態でした。
それが、今回の国家総合職(政治国際・人文)により変わるかもしれません。
「政治国際・人文」区分とは
この区分、元々は「政治国際」区分でした。法律学ではない政治学や国際学系の学生が受験しやすいように設定された区分です。
この区分に、人文系の科目で受験できるコースBが新設された!というのが実態です。
試験科目を見てみましょう。総合職の試験には教養試験・専門択一試験・専門記述試験・面接・論文(院卒は政策討議)に分かれていますが、変更があった専門択一試験・専門記述試験を見ていきます。
そうです、なんと択一試験に心理学が含まれています。
メリット-択一の受験負担がとにかく軽い
人間科学区分で心理学を使って受験する場合、択一試験では心理学が中心。心理学の概論ではなく、ある程度専門的な心理学が問われます。心理職志望なら良いのですが、事務職志望やとりあえず人生の保険として国家総合職を受ける人にはハードルが高いです。
しかし、試験科目を見て解る通り、歴史や文学、人文地理など多様な科目が課されます。そして公表されている問題例がこちら。
また、択一には選択問題もあります。心理学専攻の人なら、心理学・教育学・社会学・歴史学だけで15問確保できます。院試と併願するとして追加の科目負担はほぼ0です。
メリット-ほぼ全ての官庁を訪問できる
人間科学区分はまともに採用しているのは法務省と厚労省くらいです。他の官庁への内定は年1人あるかどうか…。
しかし、現行の政治国際区分は満遍なく色々な官庁で採用実績があります。平成28年度以降毎年採用者数が増加していますし、令和4年度は経産省の採用数で法律区分を抜いてトップに立ちました。
人間科学区分あるあるの「1クール目で官庁訪問全滅」は回避できるのではないでしょうか。
デメリット-記述試験に心理学がない
人間科学区分は記述試験を心理学だけで受験できます。しかし、「政治国際・人文」区分には心理学どころか社会学すらなく、全て文学部でやるような科目です。公表された例題は、知識というより思考力を問うような問題なのであまり点差は開かないと思いますが、それでも一定の対策は必要です。
5問ではありますが、政治や憲法の問題が択一で必須です。政治や憲法の問題は例年高校の政治経済よりは難しい為、この部分は勉強が必要です。*3
デメリット-学部4年生からしか受験できない
心理系の人でも比較的受けやすい教養区分(試験は秋に実施)は現役で大学入学しても2年生から受験できます。
しかし「政治国際・人文」区分はあくまで春に試験が行われる為、22歳以上もしくは大学卒業見込みでないと受験できません。この点は人間科学区分と同じですね。
なお、同じ年の春試験では1つの区分を出願時に選択する為、問題見てから区分選ぼう!ということはできません。
懸念-コースBで本当に内定できる?
国家総合職では最終合格後に官庁訪問が必要です。官庁訪問では「試験区分・順位は影響しない」と言われてはいますが、ほぼ全ての官庁に訪問できるはずの人間科学区分は法務省以外の内定がほぼありません。
人文は政治国際と同じ試験区分ですので、明確に差別されることはないはず。ただし人間科学区分や教養区分からの内定が少ない以上、本当に政治国際(Aコース)と同じ確率で採用されるのか、かなり疑問です。
オススメ活用法-東大京大あたりの学部生なら…
国家総合職は最終合格から5年間は官庁訪問ができます。また歴史のレベルが大学入試とあまり変わらないのであれば学部生にかなり有利です。院進しても良いなら、学部生の時は保険として「政治国際・人文」区分で合格して官庁訪問に失敗すれば院進に切り替えても良いでしょう。
ただ、国家総合職の特徴として、受験しやすい区分ほど合格者が高学歴*4という特徴があります。実際に専門試験のある春試験では最終合格者のうち東大は約15%ですが、専門試験のない教養区分では東大が45%前後となっています。
試験科目と例題を見ると、「政治国際・人文」のうちコースBは大卒じゃないと解けない問題がかなり少ない気がします。その為、東大や京大、阪大あたりの文・学際系の学部生が合格者のほとんどを占める…というのが目に浮かびます…