皆さんこんにちは。
2017年の九州豪雨で運休していたJR九州の日田彦山線(添田⇔日田間)が、鉄道ではなくBRTとして復旧しました。
- 本数1.5倍増
- 精神障害者割引導入
- 駅数増加(12→36)
- スマホ定期券の設定
などなど赤字路線とは考えられないほどのJR九州の本気施策。
ネットでは「想定外の反響あり」「ほぼ満席で続行便がでた」とかなり話題になっています。
そこで今回は、この日田彦山線BRTについて解説し、実際に乗車して検証しました。今回初めて乗った日田彦山線BRT「ひこぼしライン」。添田→大行司→彦山→日田と行ったり来たりしながら移動しました。
— 中原 岳(西日本新聞) (@GakuNnp) 2023年11月5日
線路の敷地を転用した専用道や長さ4㌔超、通過に6分かかるトンネル、山間の田園風景などを楽しめました。行楽日和で車内はほぼ満席。続行の臨時便も出ていました。#日田彦山線BRT https://t.co/LVSQEMSGZL pic.twitter.com/8an5r5Z63p
日田彦山線BRTの概要
日田彦山線BRTは福岡県の添田駅から日田駅の間、営業キロで37.7キロの路線です。永続的な運行を前提に一般道と専用道を走るBRTという形態で復旧しました。
運行経路を示す上記画像はJR九州公式サイト*1から引用したものですが、JR九州公式サイトで時刻表が見れたり青春18きっぷ利用が可能だったりと実態はJR九州の路線といえます。
乗車体験記
今回私は、需要調査と乗車そのものを目的に乗車。2023年11月6日(月)の7:20日田駅発添田行きで移動しました。
この便にしたのは、
- 添田への通勤を考えるとこの便がベスト
- 主要顧客である高校生の通学ラッシュ
- 平日なので地元客しかいないはず
という期待があったからです。
設備面は最高!
BRTの日田駅は通常のJR日田駅の目の前にあります。立地が良いので迷いにくいですし、この画像のようにバスは日田彦山線BRT専用のものが使われているので、どのバスかわからないということもないでしょう。
次の画像は添田駅のホームですが、BRTとJR日田彦山線が対面乗り換え可能です。田川後藤寺・小倉方面への乗り継ぎ時間も10分前後が中心で最大でも30分とこの地域にしては良いです。*2
今回のために新造されたオリジナルのバスだけあって、ノンステップバスで座席はふかふか。有料特急並みとは言えませんが、JR九州の中ではかなり良い方です。関西の新快速とさほど変わらない柔らかさでした。 強いて言えば車椅子用の待機スペースがあればさらにGoodですが十分バリアフリーです。
そしてポイントが高いのはUSBコンセント付きであること。 スマホ好きな高校生に乗ってもらうために重要なポイントをしっかり押さえています。ネット環境も意外に良く、au回線は日田添田間で一度も切れることがありませんでした。
また、全ての駅にバス停が新造されており、どこがバス停かも比較的わかりやすいです。
さらに全ての旧鉄道駅には雨除け付きの待合所が設置されており、雨ざらしでバスを待つこともありません。 もちろんバス位置情報システムも導入されている(電光掲示板ではなくQRコードで読み込むタイプ)ので、バスがいつ来るかも手元で確認できます。
BRT専用道区間については綺麗に舗装されており、振動が激しく辛い…ということもありません。所要時間の長さを除けば総じて良い移動体験でした。
実際の需要:今後が不安…
私が乗った2023年11月6日(月)日田7:20発添田行き便の乗降を、自分で記録しました。乗降があった駅のみ記載しており、赤枠は旧鉄道駅です。約40km走ってたった5人。
いくら観光需要が期待できない月曜朝とはいえ、少なすぎます。
しかも私以外の1人(南友田から乗車)は車窓をバンバン撮影していたのでおそらく乗り鉄です。純粋な地元客はたった3人といえます。
今は開業直後のお祝儀相場で人気を博しているようですが私が乗車した際の、
- 高校生0
- 定期利用者0*3
- 歓遊舎ひこさん駅での乗降0
という現実を見ると、今後が非常に不安です。乗り鉄だけではなく、JR九州がターゲットにしている「高校生と観光客」にも乗ってもらえないと、開業直後のお祝儀相場が終わったらほぼ全便空気輸送となりかねません。
需要喚起策
毎年2億の赤字が想定されているようですが、個人的にはさらなる大赤字になる未来しか見えません。改善するにはどうしたら良いでしょうか。
個人的には大きく2つアイデアがあります。
停車駅の最適化
特に、日田市役所と昭和学園前に停車する便の増加です。私が乗った日田7:20発のBRTは両駅を通過しますが、午後・夕方に日田から添田方面に向かうBRTは両駅に停車します。昭和学園高校は8:30始業ですが、日田駅から始業に間に合うバスは地元の日田バスを含めて0。高校生をメインターゲットにするなら、やはり通学時間帯の便は昭和学園前への停車はMUST。日田市役所も同様で、特に午前中に日田駅を出るBRTは日田市役所前に停車すべきだと思います、
時刻表を見ると両駅に停車するためのロスタイムは5分なのですが、今回の乗客層や観光客をイメージする限り、BRT途中駅への投薬が5分遅くなってもそれほど困らないと思います。さらに言えば、日田市役所や昭和学園前より需要の少なそうな駅が多数あるので、添田駅での乗り継ぎを考慮して通過駅を増やして時間短縮をしても良いでしょう。*4
回数券の導入
今回同乗したお客さんのうち3人は「定期券を買うほど乗らないが、地元客ではある」という感じでした。通院や買い物といった日常遣いなら定期券ではなく回数券で乗れば乗客目線ではお得ですし、需要喚起できればJR九州や自治体にも利益があります。せっかく運賃計算を打ち切りにしているのですから、BRT区間だけでも回数券を復活させてはどうでしょうか。
クレカ決済の導入
注釈に書いたのですが、私が乗車した日多7:20発便が昭和学園駅を通過したのは余裕時分のないカツカツなダイヤ設定だからだと思われます。今回乗車して分かったのですが、日田彦山線BRTの一般道区間はおそらくほぼ渋滞がありません。
そうなると、遅延の大部分は乗客が降車に手間取ることが原因だと思います。日田彦山線BRTはICカードは使えるものの、チャージができません。ICカードが使えることの周知と合わせて、ICカード以外のキャッシュレス決済手段の導入も効果的でしょう。
JR九州の一部区間ではPayPayで特急券を買えたり、VISAのタッチ決済で乗車できるシステムを導入しています。これらを日田彦山線BRTで導入して乗客の降車にかかる時間が減らせれば、停車駅の最適化が実現するかもしれません。*5
車内Wi-Fiの設置
広告を見る限り、日田彦山線BRTの主なターゲットは高校生ですが、やっぱり彼らはスマホとYoutubeが大好き。もしWi-Fiが設置されれば、下校時間帯にバスがある+ネットも快適に使えるとなり、高校生に対し訴求できます。
さらにJR九州も狙っている外国人観光客にとっても、利便性向上に繋がります。外国人観光客が使うプリペイドSIMカードは割高で、ギガ数も少ない傾向にあるからです。
終わりに
停車駅には違和感がありますが、設備面、そしてなんといっても事業主体がJR本体の路線としては史上初めて精神障害者割引が導入されるなどJR九州のチャレンジ精神を強く感じる路線です。
高速バスの日田号の存在から博多方面への需要は期待できませんが、BRT完結+日田から小倉方面への需要掘り起こしのポテンシャルは十分にあります。BRTになって良かったね!!と多くの方に言ってもらえる路線になっ欲しいです。
こちら添田駅にあった注意書きなのですが、本当の意味での「混雑」が今後も続いてくれることを願って本記事を終わりにします。
*1:https://www.jrkyushu.co.jp/train/hikoboshiline/
*2:夜明駅・日田駅での久大本線への乗り継ぎ時間はあまり考慮されていません
*3:全員が現金払いだったので
*4:日田→添田を結ぶ便だと添田駅での小倉方面への乗り継ぎ時間が約10分になっています。5分間のロスタイムが添田駅での乗り継ぎ失敗に繋がりうること、そもそもBRT専用道区間は原則行き違い不可を考えると、ロスタイム5分を許容したり通過駅変更は難しいのかもしれません。実際に乗車して「旧鉄道駅以外で乗客がいない駅は停車せずに通過」という運用がなされていたことから、そもそも途中駅での多数の乗降は想定されていない→余裕時分ほぼ0で運行しているものと考えられます。
*5:まあ、日田彦山線BRTを日常使いするご高齢の方がこれらのシステムを使いこなせるかという問題はありますが