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【落ちない】動画の倍速視聴と学習効率

こんにちは。

コロナ禍になって以降広まったオンライン授業。その形態はいろいろあり、教員が事前に撮影した講義動画を視聴するものもあります。

こういったタイプのオンライン授業でできるのが倍速視聴。録画されたコンテンツを倍速で再生することで、より短時間で学習ができるとしたものです。

しかし、倍速再生してもちゃんと理解できるのでしょうか?そこで今回は、倍速再生しても理解度が落ちないことを示した研究を紹介します。


序論

オンライン授業や、倍速再生による理解度に関する研究はいろいろ行われています。引用された先行研究を紹介すると次の通りです。

  • オンライン授業の講義動画が6分を超えると、講義から離脱する人が大幅増加
  • 口語音声の速度と理解度を検証すると、275語/分以上の速度で理解度が大幅低下。それ以下だと低下は見られない
  • 娯楽動画において映像と言語を独立に操作すると、鑑賞時間をMax85%短縮できるかも

といった感じ。また昨今のTeensは倍速再生する人が多いようです。


一方で、動画コンテンツの再生時における変速再生機能を活用した実践研究は見当たりません。そこで本研究では、オンライン学習環境を想定した映像コンテンツを作成し,高速提示と学習効果の関連性を明らかにすることを目指しました。

方法

学習効率を測る方法はいろいろあります。今回は動画コンテンツを見てもらって、理解度をテストしてわかりやすさについて質問紙に答えてもらうことにしました。

まずは、学習効率を測るために動画コンテンツを作ることにしました。その要点をまとめると次の通りになります。

  • 講義内容は高等学校情報科のネットワークの仕組みについて
  • 発話速度は最も早いとき336モーラ/分*1
  • 動画コンテンツの再生時間は1倍速で9分12秒、1.5倍速で6分11秒、2倍速で4分42秒


動画についてわかったところで、次に実験手法を説明します。今回の長濱らの方法をざっと1枚の画像にしました。

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結果

理解度テストによる点数と、質問紙に対する回答が実験の結果となります。質問紙は2種類ありますが、差が顕著だった1種類のみをここでは紹介します。

まず、理解度テストに対する回答成績です。ここでは、動画コンテンツ視聴後の「事後」のテスト結果をまとめています。

再生速度によるテスト結果への影響は「合計(再生+応用)」「再生」「応用」の3つとも、有意差が見られませんでした。

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続いて、主観的な評価を聞くために質問紙調査を行いました。その質問内容は「3つの再生速度で一番○○だったのはどれ?」を答えてもらうもの。結果はこちらです。

他の再生速度に比べて優位に高い場合は「>」で表記しています*2。非有意なときの再生速度の順番は、「標本内で回答者が多かった順番」です。*3

結果をまとめると、再生速度としては1.5倍速が聞き手に最も支持されていると言えます。

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まとめ
今回の結果をまとめると次の通りになります。
・1倍速=336モーラ分であれば、1.5倍速/2倍速にしても理解度は変化しない。
・聞き手の好みは1.5倍速が最も高い。

このようになりました。実際の動画コンテンツ視聴では、わかりにくいところは一時停止したり、どーでもいいところは飛ばすなどの操作が可能です。その場合結果が変わる可能性は長濱らも指摘しています。

一方で同じ速度で見続けることを強制される時でも、速度による理解度の差がないことは注目すべき結果ですね。

論文解説自体はここまで。

ところでネットテレビで有名なABEMA TVでは「ニュース映像を全て1.5倍速*4で放送する」番組があります。詳細はこちらのリンクから。


そもそもABEMAは1.5倍速で視聴されるケースが多いようですが、ひょっとしたら今回紹介している研究の影響を受けているのかも...?


*1:モーラは発話速度を測る単位。日本語においてはいわゆる拍数のこと

*2:5%水準

*3:具体例を挙げると、「『最も聞きやすかった速度』において1.5倍と1倍の間に有意な差はないが、標本内では1.5倍の回答者が多かった」となります

*4:当日の夕方に放送されるニュース番組「スーパーJチャンネル」基準