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大学だけじゃない!心理学専攻→企業の研究開発職のメリット3選

こんにちは。

このブログは心理学専攻の人向けに書いていますが、みなさん卒業後の希望進路は考えていますか?多くは公認心理師を取って心理職を目指す、大学院を経て大学教員を目指す、あるいは心理学とは全く関係ない就職をする...といった感じだと思います。

でも、民間企業でも心理学の知見を活かして研究開発ができる場所はあるんです。そして大学では得られないようなメリットも多くあります。

というわけで今回は、心理系の学部を卒業してから、機械メーカーに入り心理学を活かした研究開発の仕事をしている私から、企業×心理系R&Dのメリットを解説します。

経済面で抜群に恵まれている

修士新卒1年目でも額面300万以上は容易に狙えます*1。大学の研究者を狙う人にとって登竜門となる学振(DC1/DC2)が250万円程度であることを考えればかなり優遇されています。

私は学部卒で機械メーカーの研究開発に入りましたがそれでも初任給は20.8万円で学振とほぼ同額です。

研究費の面でも大学より恵まれている

研究費の面では学振が150万円です。一方企業の研究開発費と社員数を基に1人当たりの研究開発費を算定すると、トヨタ自動車(連結)の場合約270万円になります*2。もちろん研究開発費を使わない仕事をしている人もたくさんいるはずですから、実際に使える1人当たりの研究開発費はさらに高いものになるでしょう。

自社の研究開発体制を考えてみても、億単位の研究機材を自前で持っていたり、実験参加者に1時間当たり数千円の謝礼を支払ったりと、大学では考えられないくらい恵まれています。

また質問紙の調査も多くの場合マクロミル等に委託して調査を行うため、大規模で質の高いデータを得ることが可能です。

その他心理学で使う皮膚コンダクタンスの計測装置やNIRSといった高級な装置も導入されています。

他社のことは知りませんが、そもそも研究費が少なめな心理学専攻の研究室と比べると、かなりの確率で企業の方がたくさんお金を使って研究ができる!ということになると思います。

少なくとも名目では終身雇用

公務員を除くカウンセラー、例えばスクールカウンセラーは1年ごとの契約がメジャーです。そのため年末になると転職の話題が私のTL*3にも流れてきます。私も学生時代に1年ごとの契約で働いていたことがありますが、毎年失業するリスクがあると精神的にもとても不安です。

非常勤のスクールカウンセラーだけではなく、大学教員でもポスドクや助教クラスは5年上限の任期付き、極端なケースは1年契約になっています。

その一方で企業の研究開発職は恵まれています。正社員で採用されている私の場合、少なくとも契約書には「定年まで雇用します」という文言がありますし、実際そのような説明を受けています*4

 注意

ただし、少なからずのメーカーが早期退職の募集を行うなど、終身雇用は崩壊しつつあるのも事実です。


企業に来て嫌というほどわかりましたが、当面クビにならないという安心感は相当に大きなものです。悪く言えばモラルハザードを引き起こしますが、目の前の業績にとらわれずにチャレンジがある程度できるのはやりがいにも繋がります。会社の上司も、長期的にいてくれることを期待して若手を育成しています。

「配属リスク」も以前より小さい

研究開発だけやりたい!という学生にとって大きな問題が配属リスク。入社まで配属部署が分からず、全く意図していない部署に配属されることもあります。これを回避すべく企業ではなく大学に残る選択をする人も多いです。

確かに配属リスクはありますが、10年ほど前に比べて日系メーカーの技術系ではかなり小さくなりました。

おそらく学生側がかなり配属リスクの有無を重視するようになったからでしょう。他社ではありますが、不人気な部署に配属された若手が3年以内に全員退職した...というケースも。最近まで売り手市場だったこともあり、企業側も配慮せざるを得なくなっています。

心理系人材を採用するメーカー・研究所の初期配属について下の表にまとめましたが、R&D配属を確約する企業も少なくありません。

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クルマなどのハードウェアを作っているメーカーは総合職採用がメジャーですが、トヨタが21卒から一部で職種別採用を始める等、職種別採用が増えています。

私の会社は総合職採用ですが、自分自身の配属を見ると配属先はかなり自分の専門性が尊重された部署です。同期を見ていても、希望すれば専攻はある程度尊重された配属になっています*5。先輩方の話を聞いていてもひと昔前に比べて学生の専門性を無視した配属はかなり減ったそうです。

後輩(学生)の指導をしなくてよい

大学の場合、助教以上の職制の場合、「学生の指導」は明確な業務として採用時の要項に記載されています。院生であっても後輩の指導をするように先生から言われることは多いはずです。

特に学部生がたくさんいる割に教員の数が少ない心理学の場合、院生による後輩指導がかなり行われているように思います。

一方で企業の場合、新卒であれば自分が部内で最年少です。そのため後輩の指導ではなく自分の業務遂行と成長に集中することができます。また会社によって差はありますが、ペアコーチなどにより指導がきちんと行われます*6

人材育成をしない、ということがメリットかは人によりますが、後輩の指導が苦手、実験グルグルしたい、モノつくりたいという意識が強かった私にとってこのメリットはとても大きかったです。

 注意

博士卒の場合、1年目から人材育成力を期待されているケースもあります。

待遇重視なら企業はメリット大

ここまで書いてきたように、それなりの収入、(建前では)終身雇用、研究開発費の心配が少ないことは大きなメリットです。

その他のキャリアの観点から見ても、配属リスクも低下するなどメリットが増えつつあります。大学以外の道もありかな...と思った方はぜひ企業を受けてみてはいかが?

もちろん企業だからこそのデメリットもあるので、この記事を読んでぜひ理解を深めてくださいね。

*1:しかも健康保険料などは会社が半分負担してくれます

*2:計算のもとになっている詳細な数字はトヨタ自動車公式サイトより、決算要旨と従業員数を見てください

*3:スクールカウンセラーの方をたくさんフォローしている

*4:もちろんあまり信用してはいませんが...

*5:もちろん全員ではありませんが

*6:逆に言えば、入社5年目程度になれば新入社員の育成が仕事になるということです