こんにちは。
最近Twitterを見ていると、博士から企業研究職への就職が増えた、アカデミアには人が来ない…など研究職の就活に関するツイートが目立つようになりました。
そこで今回は、心理系学部卒なのになぜか企業で研究職をしている私の目線から、企業での研究職(ある程度分野は妥協できる)を新卒で狙う場合「学部卒・修士・博士」のうちいつが最善なのか?を一個人の意見として解説してみたいと思います。
結論-求人があれば即就職せよ-
人手不足は当面続くと言われてはいますが、景気が急に悪化する可能性もあります。そうすれば、今まで当たり前のように推薦枠を出してくれた企業が採用を止める…ということもあります。
その為、一定の給料、妥協できる勤務地、分野や職種レベルで自分の希望した仕事…があればある程度妥協してでも早期に就職したほうが良いと思います。
新卒で研究職採用されても10年20年研究職として働き続けることは難しいので…
修士がバランスよく最良
上記の通り「研究職で、ある程度妥協できる求人があればサクッと就職しろ」が結論です。ただし求人を無視して考えると、個人的には修士が最良だと思います。それは「リスクとリターンのバランスが最良」だからです。詳しく説明します。
新卒市場で戦える
だいぶ形骸化していますが、新卒就活には「経団連ルール」があります。例えば広報解禁は3月、選考開始は6月などというものです。*1
この経団連ルールがあるからこそ、周りに流されつつ就活してもそれなりのところには収まるのです。この経団連ルールが適用されるのは学部卒と修士卒のみ。博士は対象外です。
企業研究職狙いだけど周りに流されやすい、孤独に強くない…という場合は博士はハイリスクですし、超高待遇企業に拘らなければ、まだまだ修士卒研究職は狙えます。
最低でも旧帝大相当の学歴or共同研究などのコネが前提です。また、入社数年で研究職から配置転換されるリスクも相対的に高くなります。
共同研究で博士が狙える
学部卒での就職と比較した最大のメリットが博士の取りやすさ。言い換えれば「アカポス転身のしやすさ」です。
企業で最も効率的に博士号を取る方法は「共同研究先に入学する」ことです。ですが、これを学部卒でやろうとすると一気にハードルが高くなります。
その理由は大きく2つです。
- 修士の2年は原則通学が必須
- 5年間面倒が見られるかわからない
授業のほぼない博士課程と異なり、授業も多い修士課程は物理的な出席がある程度求められます。その為、共同研究先が近所の大学でなければ絶望的です。
次に博士号取得まで最低5年必要という問題。企業の中期経営計画は概ね3年間となっています。つまり、3年後には方針の大幅変更や共同研究中止のリスクが高いということです*2。そうするとテーマが使えなくなりますから、博士号も取りにくくなります。
学部卒-メリットは若さだけ-
私は学部卒で奇跡的に求人が降ってきたので研究職として働けていますが、オススメしません。
弊社でもやはり研究職・技術開発職は人気ですし、配属されるのも修士卒が圧倒的多数。率直に言えば配属では不利です。希望叶わずそれ以外の仕事に配属される学部卒の人は毎年多くいます。*3
それでもいいから大企業、〇〇社に行きたい!なら良いですが、(心理学や生物学レベルで)専門を生かした研究をしたい!ならコネがない企業に学部卒で就職するのは絶対にやめた方がいいです。
博士卒-取れるなら最高だけど-
博士号-取れれば最高です。昔よりも企業就職のハードルは下がっていますし、メリットも多数あります。
- 初任給も高い
- ほぼ中途採用なので配属ガチャ少なめ
- 研究職から配置転換リスクが低い
また、自社の取り組みに嫌気がさしたらいつでもアカポス転身を狙えるのも修士卒・学部卒にはない絶対的な強みです。
ですが問題は、本当に博士号を(3〜4年で)取れるのか?取れたとしてそのタイミングで求人があるのか?です。学部卒・修士卒と異なり「進学・留年して景気回復を待つ」ことはできません。
そして新卒でも博士採用に重点を置いている製薬メーカーのような例外を除けば、企業研究職狙いなら新卒博士の必要性はさほどありません。
むしろ、得られるリターンに対してリスクが大きすぎる…と言わざるを得ません。一生研究者としてのキャリアを維持したい、その確度を上げるために色々なリスクを背負えるなら良いですが…
まとめ-修士進学は覚悟を-
現行の就活市場を見ると、やはり企業研究職は修士が多いです。学部1・2年生の方は「求人があれば学部卒で就職するけど、基本は大学院進学が必須」と割り切りましょう。
(特に心理は)大学院に進学する期待リターンはさほど高くないので、それでも良いのか?をよく考えて研究職就活をするのかそれ以外の就活をするのか考えるべきだと思います。