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【完全非課税も狙える】精神障害者こそ確定拠出年金をすべき理由

みなさんこんにちは。

今回は、精神障害者、もしくはこれから障害者手帳を取ろうとしている方に向けて、確定拠出年金(DC)特に企業型DCについて、解説します。

POINT障害者手帳保持者だからこそ感じる多くのメリット、また障害者手帳保持者にしか使えない出口戦略も解説しています。

DCとは?

制度の詳細については自分で調べて欲しいのですが、一言で言えば「公的支援のある積立式年金」といったところでしょうか。国の年金制度である厚生・国民年金と違う点としては、納付額は自分で決められる受取額は運用成果次第なので元本割れリスクありということです。

年金制度の比較
厚生・国民年金 DC
加入の自由 原則強制加入 加入は任意
掛金額 国が決定 上限の範囲で自己決定
所得控除 全額控除 全額控除
受取金額 納付額に応じて固定 運用成果次第

なお、DCには個人型(iDeCo)と企業型(企業型DC)がありますが、掛金の上限額など一部違いはあるものの、基本的には同じです。

DCは受取時の出口戦略が大事と言いますが、それは健常者の場合です。精神障害者(2級以上)の場合は後述の理由で出口戦略不要です。

ここまでが、一般的なDCの制度ですが、障害者にとっては以下のことが重要です。

DCのメリット

一般的にDCには、掛金拠出時の所得控除、運用益の非課税、受取時の税優遇の3つがメリットとされています。しかし、障害者(特にいつ折れるかわからないクローズ就労で一定の所得がある人)にはさらに絶大なメリットがあるので、それを解説します。

所得制限対策になる

掛金全額所得控除なので、各種福祉制度における負担額を判定する際の所得が低くなります。すなわち所得制限対策として使えます。

具体例を挙げると、これらの自己負担額を下げることができます。

  • 自立支援医療
  • 障害福祉サービス(放デイなど)
  • 保育所*1

特に放デイの自己負担上限額は市民税所得割28万円以上(収入約920万円)で37200円なのに対して、それ以下だとたった4600円です。

うまくDCを使えば、放デイの自己負担額割引だけでDCの元を取れます。

特に大きいのが掛金全額所得控除です。課税所得が減るので、所得制限対策になります。自立支援医療の上限額を下げれたり、お子さんがいるなら保育料も下がります。

生活保護や自己破産しても安心

今は一定の年収があっても、精神障害によって働けなくなったが障害年金はもらえず、自己破産・生活保護…これは私たちが想定しておくべきリスクです。

しかし、受取前のDCは差押禁止財産(もしくは資産として換算しない)となっています。そのため、自己破産や生活保護になっても受給権は没収されません。

注意

現金として受給すると、「現金化できる資産」扱いされます。生活保護の場合は保護の受給額が減り、自己破産の場合は差押されます*2

制度設計次第で社会保険料が下がる

iDeCOにはありません。また、企業型DCでも「選択制企業型DC」を導入する企業のみ該当します。そういうケースもあるんだ、程度に読んでください。

選択制企業型DCを導入する企業で掛金拠出すると、拠出分が収入(標準報酬月額)から除外されます。結果的に社会保険料が下がります。*3

注意

社会保険料が減る、ということは出産手当金や将来の厚生年金の額が減ります。それでもDCに拠出した方が有利なことが多いですが。

また、高額な医療を受けた時の自己負担を抑える高額療養費制度がありますが、その自己負担上限額も減らせます。

詳しく見てみましょう。2025年10月現在の高額療養費制度における自己負担上限額ですが、適用区分のところに「健保:標報〇〇万円以下」とかかれています。企業型DCを拠出すると標準報酬月額が下がるので、自己負担上限額も下がります。

民間の保険に入ることが難しい精神障害者にとって、いざというときの医療費を減らせる選択制企業型DCは極めて魅力的です。

単純に社保が下がるだけでもオイシイのですが、高額療養費の自己負担上限額も下がる=入院時の医療費も下がります

デメリット 障害者なら実質なし?

DCはあくまで年金という建て付けなので、年金特有のデメリットが2つあります。

  • 受取時に課税される
  • 原則60歳まで引出不可

しかし、障害者における確定拠出年金には障害給付金という制度があり、これをうまく活用すれば、上記デメリットは解消できます。

障害給付金とは

厚生・国民年金における障害年金に対応した制度です。

精神障害者向け年金制度の比較
障害年金 障害給付金
根拠となる制度 厚生・国民年金 DC
初診日要件 あり なし
3級での受給 厚生年金のみ可 不可
受給申請時の年齢制限 原則65歳未満 75歳未満
審査 あり(厳格・更新時も審査有) 実質無
受取の自由度 年金のみで低い 年金・一時金いずれも可
受給後の掛金拠出 掛金免除(2級以上の場合) 可(任意)

障害給付金受給のための障害等級ですが、精神系では以下いずれかを満たせばOKです。

  • 障害年金の等級1か2級
  • 精神障害者手帳の1か2級

障害年金には初診日要件があり、そのせいで障害年金を取りこぼす人がいます。(私は20歳前診断なので障害厚生年金は貰えない)それを考えると、精神障害者手帳2級さえ取ってしまえば、いつでも受給権を取れる障害給付金がいかに優れているかよくわかります。

また、年齢条件さえ満たせば、障害給付金(一時金・年金)を受け取りつつ掛金を拠出し続けることもOKです。*4

つまり、精神障害者(2級以上)にとっては、掛金拠出時にも受取時にも課税されないのに、いつでも引き出せる「最強の貯金箱」として使えるのです。

向いている人

さて、ここまで障害者にとって確定拠出年金(DC)はメリットが大きいと書いてきました。最後に向いている人について解説します。

  • クローズ就労の精神障害者
  • 激務高収入業界の人

彼らのような、一定の収入があり、当面は暮らせるがメンタル面でハイリスクな人にはかなり向いています。そもそも収入が少なければ所得制限や税金対策を考える必要はあまりありません…

最近は、障害で精神疾患・障害になる人の割合はどんどん上がっており、クローズ就労できている人や高収入激務業界でもメンタルを病んでそのままドロップアウトする人は増えているようです。コンサルやITや証券など、高収入だがメンタルリスクの高い業界に勤めるなら、障害給付金という出口戦略も考慮してDCを考えてはいかがでしょうか?

クローズ就労できている方や激務業界の方にとって、精神障害者手帳2級は決して人ごとではないのですから。

*1:入所可否の判定、自己負担額の判定どちらにも有効

*2:免責許可決定後は差押されません

*3:標準報酬月額の等級が変わった場合

*4:国民年金では障害年金2級以上になると法定免除の資格を得ますが、その場合でも確定拠出年金は拠出できます。