皆さんこんにちは。
製造業が就活で選ばれなくなって長い年月が経ちました。実際にXを見ていてもそれは明らかで、以下のようにボロクソに言われています。
是非はさておき現場仕事や作業着を忌避する人もいる。
— しゅん (@Shunn3h13) 2025年1月1日
メーカーという奴は地方勤務でテレワークできずフレックスタイム制も無い環境で、作業着を着て現場に出る必要がある上に商社やコンサルより薄給なんだからそりゃ不人気よな。 https://t.co/XNdhTMgw3T
ただ、超優秀層と呼ばれる人を除いたマジョリティにとって、メーカー就職・転職は決して悪いわけではありません。
そこで今回は、メーカー2社経験の私の目線で、メーカー勤務のメリットについて解説していきます。
本記事はあくまで「一般論」です。各社ごとに事情が異なるので面接やOB訪問で実情はよくご確認ください。
筆者は新卒から一貫して機械メーカー勤務なので、機械系(自動車・建設機械・重工・製鉄など)のメーカーを念頭に書いていきます。
よく言われるデメリット
そもそもメーカー就職のデメリットはどこにあるのでしょうか。よく言われる点は以下の通りです。
- 地方・僻地勤務リスクの高さ
- コンサル・商社より低年収
- リモートワークが難しい
- 年功序列で硬直した社風
マクロで見ると概ねその通りです。特に年収はかなり厳しく、20代1000万付近はほぼ無理と言って良いでしょう*1。ソニー・味の素クラスでも1000万越えはおそらく30代前半です。
また、設計や工場系の部署であればリモートワークが難しくハードな勤務を強いられるのもその通り。
とは言え、悪いところばかりではありません。JTCらしさを残すメーカーならではの良さもあるので解説していきます。
労働条件の確実性
確実性・安定こそメーカー最大の強み。これは大きく以下2点で考えられます。
- 勤務地と労働時間の調整
- 安定給与と年功序列の昇給
それぞれ説明しますね。
勤務地と働きやすさ
メーカー、特に技術系であれば長期(数年から10年)間人事異動が行われないことが多いです。そのため最初に当たりの勤務地・職種を引いて柔軟な働き方ができる環境を手に入れれば、それを長期間維持できます。
※逆に新卒配属ガチャを外すと、かなり悲惨です…
私の前職は研究部門でしたが、15年以上研究所から異動していないメンバーが3割以上はいました。おそらく、ジョブローテーションで異動させるよりも最初の専門性を伸ばしてもらった方が会社目線で有利だからです。
そのため、持ち家が欲しいならメーカーはオススメです。年収は中の上(30歳600万くらいは期待できる)&地方なら不動産も安めです。転勤リスクが小さいなら不動産購入も決断しやすいです。
一方でITやコンサルには「客先常駐」があります。せいぜい勤務地が大宮から横浜に変わるといったレベルですが、これが会社員人生で何度も起こるのは大きなリスクです。また、客先常駐先の事情でテレワークが禁止されたりフレックスタイムが事実上使えないこともありえます。
勤務地も機械メーカーであれば、首都圏・京阪神・名古屋・福岡のどこか、かつ転勤なしというケースも多いです。ただし化学メーカーだと、本当に電車もない田舎だったりします。
安定給与と年功序列
2020年のコロナ禍では、旅行業界を中心に、基本給カットが相次ぎました。また、リーマンショック時には多くの業界でボーナスカットが行われました。
しかし大手メーカーを見ると、ほとんど減額がありません。例えば重工最大手の三菱重工の場合、リーマンショック時でも4ヶ月+40万円のボーナスを出すなど、ボーナス水準は高水準で安定しています。また、事実上ホンダに買収される日産自動車も、2025年春闘でも1.5万円の賃上げ(ベア+定昇)を要求しています。
このように、大手メーカーは業績が悪化しようが極端な待遇引き下げは基本行わず、リストラも比較的少なめです。
さらに、良し悪しは別にして、年功序列がかなり維持されています。一見すると若くて優秀な人には不利ですが、多くの普通の社員にとっては「将来を見通しやすい」という意味でメリットです。
肝心の年収ですが、業界大手なら30歳600万・45歳年収1000万は平均的な出世で十分期待できます。銀行のような50歳前後の強制転籍がないことを考えれば、入りやすさ&年収&ホワイトさのバランスで見ればメーカーは悪くありません。
休暇の多さ
大型連休(年末年始・お盆・GW)の連休は長め。それぞれ10日前後休むことができます。
自動車業界は「トヨタカレンダー」といって、大型連休が長いかわりに祝日が稼働日なので注意。
特に、工場から遠い部門(営業や研究開発部門)であれば確実に休めるといって良いでしょう。私自身メーカー研究開発職ですが就職後一度も休日出勤の経験がありません。しかも、休暇中の呼び出しもないので仕事のことを考えなくてOK。コンサルや外銀が年末年始の休暇もなく働いていることと比べれば、心理的負担が少ないです。
生産技術・保全であれば長期休暇に工場修繕を行うので、長期連休含めて休日出勤多めです*2。
どこに入ればいいのか
ここまでのメリットをまとめると「そこそこ高給かつ安定&ホワイト勤務を継続的に実現可能」ということになります。
私の経験上、ここまで触れたメーカーのメリットを得るには、「本社に近い部門」(事務系なら人事やIR、技術系なら研究開発や知財)への配属を勝ち取ることが必須です。そのためには、内定段階で職種を確定させることが大事と言えます。
ではどのような企業に入れば良いのでしょうか?中途であれば職種別採用なので、新卒の話をします。
ソニーに入る
手っ取り早くて最強なのが新卒ソニーです。ソニーは機械からバイオ、心理含むUXUIまでかなり幅広く研究および開発をしており、配属される職種・コースが極めて細かく(100以上)に分割されています。
配属部署と勤務地・上司を入社前に確定させられるので、メーカーで選ぶなら新卒ソニーが最強だと思います。年収も40歳1000万円程度と高めです。
住宅手当などの福利厚生薄めで全額給与支給&労組弱めと伝統的な日系メーカーとは違う部分も多いです。デメリットをよく考える必要があります。
地方都市本社の大企業
メーカーで「東京/大阪勤務がほぼ確定」の企業は極めて人気が高いです。例えば富士フィルムやクボタの収入は中の上ですが、メーカー就活では大人気。早慶旧帝大の学生がガンガン応募してきます。
一方で、政令市周辺に本社があり、そのエリアでの勤務地が確定している大企業は、クルマが不要で可処分所得が高い割には人気がありません。このような政令市勤務がほぼ確定している大企業(このような企業はインターン経由だと配属される部署を確定させられる採用も多い)はどうでしょうか。
あえて社名を挙げてみると、
- アイリスオーヤマ(仙台)
- ヤマハ発動機(浜松)
- 安川電機(北九州)
などです。永住も考えうる都市の企業に部署を確定させて入社→経験を積んで憧れの企業に羽ばたくというのは、現実的かつコスパが良いです。多くの学生にオススメできるキャリアだと思います。
ちなみに、私の経験では政令市とその周辺であればクルマ不要です。実際に勤務経験がありますが、1時間に3-4本は電車があるこれらの地域ではほぼノーストレスで生活できました。しかも毎年200万円近く貯金できました。
まとめ
メーカーの良いところは「そこそこ高給かつ安定&ホワイト勤務を継続的に実現可能」なこと。そしてそれを実現させるためには、それが可能な職種を選ぶことが大事。
そのため、転職で理想の職場に確実に辿り着くための新卒就活という発想はいかがでしょうか。