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心理学からメーカー研究職を狙う現実的な方法

こんにちは。

先日こちらのツイートをしたところ、以下のような「そんな事例は聞いたことがない」とか「文系で理系推薦就職とかありえない」といった声を頂きました。そこで今回は、文系(といっても実験心理学系)からメーカーの研究開発職に新卒入社する現実的な方法を解説していきます。

前提条件

心理学からメーカー研究職と書きましたが、はっきり言ってハードルは高いです。それは、「研究者として優秀か」という意味ではありません。「就職しやすい分野をきちんと選び、戦略的に動けるか」という意味です。

とはいえ、学部入学時点で以下の前提は満たせないと絶望的でしょう。

  • 学部で早慶以上に入学
  • 最低限の文系数学ができる
  • 英語が得意

早慶以上とは書きましたが、正直早慶よりも旧帝大*1、できれば東大京大クラスに入っていてほしい…それくらい基礎学力の要求水準は高いです。

学部時代

私のように、降ってきた推薦枠に飛びついたらメーカー研究職になれた!!という方法は再現性がありません。研究職就活の主戦場は修士卒ですから、基本的には院進学を前提にすべきです。

院進を前提にする以上、学部時代の経験は就活重よりも進路探索を意識したものにすべき。就活にはあまり有利にならなくても、研究室でのバイトやマーケティングリサーチインターンなどは心理系人材として適性を考える材料になります。

院試準備

強い理由がなければ、理転しましょう。やっていることは大きく変わらないのに就活に圧倒的に強くなれます。

でも理系科目が得意じゃないから文系に来たんですが…という人もいるはず。安心してください。基礎学力と戦略さえあればなんとかなります。

院試の特徴を知る

まずは院試の特徴です。学部入試と異なり、大学院&研究科ごとに入試科目が大きく異なります。

大学院にもよりますが、心理学から入りやすいところの院試科目は英語(TOEIC/TOEFL)、数学(確率統計・微積分)、面接が相場です。

前提条件に英語と数学の基礎学力を挙げたのはこれが理由です。

数学が苦手だという方は、まず確率統計からやりましょう。微積分よりもパターンが決まっている上に、統計ができるだけで就活にも有利です。

統計検定というのもあるので、最低2級、できれば準1級を取得しましょう。私がやった勉強法はこちら。

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就活に「勝てる」研究室を選べ

新卒でメーカー研究職を狙うなら、学部生の段階からテーマ選択は重要です。企業で需要が多そうな分野はある程度決まっています。

心理学の中で理系っぽい分野(シミュレーションが多い、脳波計測ができるなど)を選ぶのはもちろん、その中でも、「企業との共同研究テーマ」のある研究室を選びましょう。

共同研究テーマのメリットは詳しくこちらに書いていますが、最大のメリットは学部生でも推薦就職できるかもしれないことです。

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学部生のうちに就活をしよう

進学志向でも一度は就活をしましょう。これは、心理学とシナジーがあり院卒で入れる企業に魅力を感じられるかを判断するためです。

院卒になる2年後に今より景気が悪くなる可能性もあるので、現実的に入れそうな企業に魅力を見出せないなら、リスクを背負わず学部卒で企業に入りましょう。個人的には、インテージ・マクロミル・リクルートマネジメントソリューションズの3社は見ておいた方が良いです。

私はインテージ・マクロミルともにインターン/本選考を受けましたが、どちらも社風も受け付けませんでした。学部卒就職に踏み切った大きな理由はここです…

幸い就活早期化のおかげで学部3年の3月ごろには有名企業の選考は(実質)終わるようになりました。一定の基礎学力と事前準備があれば、就活後でも院試に間に合わせることもできるはず。

院試と就活の両立対策はこちら。当時から就活はかなり前倒しされていますが、本質は変わっていないはず。

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院試(受験校選択)

心理学から入りやすく、その割に就職が良い分野は情報系(人間情報学)と融合系(の中で理系色が強いところ)です。っこう言った分野は民間奨学金を取りやすいので、経済的な心配をせずに研究できるのも大きなメリット。

私の場合、以下の基準で大学院を探していました。

  • できれば東京、もしくは大阪
  • 「高学歴」とされる大学
  • 情報系
  • 院試の負担が小さい

特に「高学歴」扱いされる都市部の大学かは超重要。というのも、あまりに就活が早期化しすぎた結果、学歴以外で優劣を判定するのが難しくなっています。現場社員として就活生を見ることもありますが、「高学歴ではない学生」と会うことすら正直難しくなっているのが実情です。

10年近く前の情報ですが、当時の私が出願を考えていた大学院のリストはこちらです。参考になれば。

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ここでは、上記の条件に当てはまり特に民間企業の研究開発職の就活に強いと思われる院を紹介します。

大阪大学情報科学研究科

一つだけ人間情報学系の研究室があります。また、例年6月に非情報系出身者のみを対象とした特別推薦入試を設定しています。入学を確約できること、先生からの出願許可を取れることを前提に、筆記試験なしで受験できるためかなりお勧めです。

注意

出願資格審査がGW頃にあるため、4月半ばには進学を決めないといけません。

出願資格審査がGW頃にあるため、4月半ばには進学を決めないといけません。
慶大SFC

日本における、学際系研究の最先端という印象が強い慶應SFC。文理融合だけあって心理学と情報系を融合させたテーマも多数あります。そしてありがたいのが、SFCから推薦就職した人の体験談が外から見れること。データを見る限り、日立製作所には推薦枠を持っているようです。

東科大(旧東工大)融合理工学系

私自身が出願を最後まで悩んだ大学院の1つ。HMIやHCIなど心理学と親和性の高い研究室もあります。今まで挙げた2つの大学院と異なり、院試科目に数学があることに注意。ただし微積分・幾何・確率統計から2分野選択で苦手な分野は回避できますし、知識不要で数的思考力を問う問題もあるため、文系からでも比較的参入障壁は低いです。

NAIST(情報科学)

奈良にある大学院大学の1つで、情報系にも関わらず文系からの進学実績が多数あります。また、大学院公式も「文系からの受験を歓迎する」と公表しています。院試科目も英語+数学(大学2年生レベル)+面接+書類となっていますし、数学に至っては配点比率がわずか15%とかなり低くなっています。

今から10年ほど前に、私がインターンシップに参加した時の記事はこちらですが、NIRSなど最先端の機器を多く持っていました。また学研都市なので、企業の研究機関が近くにありそれ関連の研究やバイトができるのは大きなメリットです。

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奈良居住を受け入れられるなら、かなりお勧め。7月院試は合格ラインが低いと明記されていますし学生宿舎にも入りやすいので受けるなら7月院試です。

ただ、大昔(2015年ごろ)は英語の合格ラインが低かったものの今では基準がインフレしているようで、2020年時点でTOIEC800点が合格の1つのラインになっています。

進学後について

私自身は学部卒推薦入社したので、あまり言えることはありません。「自分のために真面目に研究しよう」というのは当然として、1つだけ言えることがあります。

こだわりを持ちすぎない

前提として、院から理転して即就活となると専門性の面ではかなり遅れていると言わざるを得ません。その中で、勤務地は東京確定で、配属は研究職の興味あるテーマ確定で、年収は35歳で1000万以上!!とか言い始めると絶望的に難しいです。

心理系の研究開発職に新卒で入ること自体難しいのですから、ある程度は妥協することをオススメします。

注意

そもそも、心理とシナジーのある自動車や食品などtoCセクターの研究職は難しいのよ…。

私自身勤務地と年収を妥協してでも新卒で心理系研究職に入って本当に良かったです。前職では良い経験ができましたし、転職で希望の勤務地に舞い戻り年収も(若干ですが)上げることができました。これは、間違いなく推薦枠が降ってきた企業に飛びついた勇気のおかげです。

まとめ-覚悟とリスクヘッジのバランスを-

ここまで色々書きましたが、心理学からメーカー研究職を狙うためには大きく2つのことが必要です。それは、何がなんでも心理学研究で民間就職するんだという「覚悟」と、そのためのリスクをコントロールする「リスクヘッジ」です。

この記事が心理学から民間、メーカー研究職を狙う方の参考になれば幸いです。

*1:5教科7科目それなりの水準が必要なので、科目を絞れる早慶よりも国立大の方が優位