こんにちは
2023年4月から鉄道に導入されるバリアフリー料金制度。
なぜ値上げじゃなくて新制度を導入するの?という疑問を持つ人も多いでしょう。今回はこの制度をわかりやすく説明しつつ、精神障害者割引との関係についても解説していきます。
値上げ/バリアフリー料金の違い
上場済み/それと同等規模の鉄道会社における、2022年4月以降の値上げ、バリアフリー料金導入のどちらを取ったのかを確認しましょう。*1
ざっと見る限りですが、値上げではなく、バリアフリー料金導入の企業が多いです。
なぜでしょうか?そこには運賃値上げに比べてメリットもあるからです。両者の制度*2の違いはこのようになっています。
この表から分かるバリアフリー料金のメリットは使い道に制限がかかる一方で、導入が簡単*3なことです。
運賃値上げは大幅な増収と使い道の自由度がメリットです。しかし運賃は総括原価方式*4であり国交相の許認可が必要です。その為、企業秘密たる原価を詳細に公表し、運輸審議会の審査(公聴会やパブリックコメント含む)を通過する必要があります。
近鉄の値上げ申請の場合、値上げこそ成功したものの下記のような詳細な資料を開示し奈良県知事から公聴会で直接批判されるような状況に陥りました。
バリアフリー料金を選んだ企業は、最低限の情報開示と確実に増収できることを重視したのでしょう。
バリアフリー制度の概要
値上げとバリアフリー料金の違かいについて簡単に触れたので、次はバリアフリー料金の概要を見ていきます。
国交省の資料から分かるとおり、基本的に3大都市圏の企業が、ホームドアなどの設備の為だけに使えるものです。
従量制が原則の運賃とは異なり、乗車1回あたり10円程度、かつ通学定期券などは対象外とされています。おそらく、駅の設備改善に使うのだから駅を使う回数で課金すべきという考えがあるからだと思います。
国交省におけるバリアフリーの発想
国交省でもバリアフリーについて何も考えていないわけではありません。国交省がユニバーサルデザイン推進本部という常設の省内横断組織を立ち上げた際、以下の4つを重要課題として挙げました。運賃に係ることでは精神障害者割引が唯一明記されています。
ただし、障害の程度に対する割引適用の範囲のあり方の実務者協議実施中とあることから、広電や西鉄のような、障害の程度に関係なく一律半額にはならないと思われます。
1級のみ割引といった従来の第1種/2種障害者の延長としての措置や、事業者ごとの上限料金を設定といった新しいスキームの導入が考えられます。精神障害者の中でも割引される人/されない人の格差が生まれるでしょうが、それでも私たちは受け入れられるのか…?という問題が当事者には近い将来突きつけられそうですね…。
JRをはじめとして鉄道会社が精神障害者割引を導入できない理由はこちらの記事で解説しているので、ぜひご確認ください。
よくある質問
参考までに一般のかたが持ちそうなバリアフリー料金制度に関する質問に、私が調べた範囲でお答えします。
今までのエレベータ等の導入の財源は何だったの?
企業にもよりますが、自治体/国からの補助金もしくは企業自ら稼いだ収益の範囲で行っていました。
バリアフリー料金の対象が設備だけなのは何で?
国交省の「都市鉄道における利用者ニーズの高度化等に対応した施設整備促進に関する検討会」で合意されたからです。名前の通り設備のみが検討対象になっています。
バリアフリー料金の分しか設備改善されないの?
バリアフリー料金以上の設備改善が制度上必須です。企業にもよりますが、エレベータ増設などの設備改善に今よりもコストをかけると思います。
駅ビルとかで稼いでるんだからそれで賄ってよ!
既に限界を超えています。企業における独立採算制の前提に矛盾します。また非鉄事業で鉄道事業の費用を賄う方針をやり過ぎると、非鉄事業の従業員のモチベーションい影響しかねません。
ど田舎の駅だけど、この制度の恩恵に預かれる?
おそらく預かれません。本制度の前提となる「交通政策基本計画における鉄道駅バリアフリー化の方針」では段差解消(エレベータ設置など)は利用者2000人以上/日の駅が対象となっています。
まとめ
残念ながらバリアフリー料金と精神障害者割引とは無関係です。ただし国交省として精神障害者割引導入の意欲はあるので、
- バリアフリー料金を精神障害者割引の財源にする
- 精神障害者割引導入を契機とした運賃値上げ
- 税金の投入or損金算入制度の導入
などの形で実現するかもしれません。ただしやり方によっては一般のお客様が精神障害者の尻拭いをすることになるので、究極的にはお客様・国民の理解を得られるかと言えるでしょう。
以下は参考資料なので、必要な方は適宜ご確認ください。