こんにちは。
以前、公務員心理職のお仕事を紹介する記事を書きました。
その際に少しだけ触れた児童相談所ですが、最近その数が増えています。
公務員心理職を目指す大学生にとってはチャンスが増えますので、ここでは新設によって想定される働き方の変化を推測していきます。
児童相談所の設置
児童の一時保護や療育手帳の判定*1を行う施設です。
現職の方に聞いたところ福祉職の採用者が配属されるケースが多いようですが、心理職で採用された人も配属されています。
児童福祉法に設置根拠があり、県と政令市は必ず設置することになっています。県の場合は県内に複数の児相を設置し、それぞれの児相に管轄エリアを割り当てるのが普通です。政令市も同様に、規模に応じて児相を設置します。
必置施設なので、県や政令市の職員にとっては児童福祉施設と並んでメジャーな勤務先です。逆に非政令市ではほとんど設置がなく、自分の勤務先には関係ない…と思っていた方も多いと思います。しかし、最近政令市以外の自治体が自前で児童相談所を設置する動きが相次いでいます。
現在の児童相談所設置
2022年8月時点で児相を設置している非政令市は以下の3つです*2。
- 横須賀市
- 金沢市
- 明石市
いずれも中核市*3であり、比較的財政的に豊かな自治体です。
しかしこの数年、市が自ら児童相談所を設置する動きが相次いでいます。児童虐待が注目され、「我が市の子供は我が市で守る」為の予算を設置することに支持を得られるようになったからでしょう。
マスメディアで言及があった自治体のうち、県への申請が進んでいる自治体を挙げると…
- 高崎市
- 豊島区
- 豊中市
- 練馬区
これだけあります。しかも太字の3自治体は開設が決定しています。いずれも2025年頃の設置を目指して準備中です。
児相設置で何が変わる?
ここでは、市が独自で児童相談所を設置することで起こりうる職員への影響を検討します。大きくは以下の2つです。
- 中途採用枠が増加する
- 県職員の田舎勤務率が上がる
まずは中途採用枠について。児童福祉司は国で言えば技官ですから、心理・福祉系の専門職が就くのが原則です*4。しかし、児童相談所がない自治体は、多くの施設系福祉を県に委託しているのが実態です。その為、心理・福祉系の専門職がいません。
新卒を採用してもそれなりの教育が必要ですから、その教育ができるような人は当然必要になります。もちろん県からの出向・転籍で賄う可能性もありますが、中途採用で確保する自治体もあリます。
実際に、2025年に児相開設を目指す高崎市は既に係長級の中途採用を始めています。
また、新設直前となる2024年頃には新卒者を採用するかもしれません。組織の立ち上げに新卒から関われるのは貴重ですから、興味がある学生の方はぜひ応募を考えて見てください。
2つ目に県職員への影響です。これから児童相談所を新設する自治体は比較的大規模な自治体です。新設する豊中市の場合、管内児童相談所に持ち込まれる案件の60%が豊中市内の案件となっています*5。他の自治体も同じような感じだと思われます。
市が運営する児童相談所が新設された場合、その市で起きた案件は県ではなく市の児相に持ち込まれます。その結果、県の児童相談所に持ち込まれる案件は減少することになります。
地方自治体は概ね財政難です。減った案件に応じて県職員を削減したり*6、場合によっては施設そのものを田舎に移転する可能性もあります。
公務員にとっても便利な都市部が勤務地であることは魅力*7ですし、地域手当の問題もあります。
基本給とは別に採用された自治体によって支給される手当。残業代支給時の計算などに反映される。
- 大阪市職員…16%
- 大阪府職員…11.8%
市内居住の義務を課す市区町村も多いですが、それでも相対的に高い地域手当は魅力的です。場合によっては転職を考える職員の方もいるでしょう。
終わりに-就活する側の対策-
私自身は現職ではない為、一般的なことを書きます。
将来的に県内の市が児相を設置する予定の場合、街頭の県を受けるならば転勤や配属先については聞いておくといいでしょう。思ったよりも田舎に飛ばされた…ということもあり得ます。
他の仕事同様に向き不向きがあるようなので、希望しない人が児相勤務になれば地獄です。それを避けるためにも、将来的な児相設置の可能性は聞いておくと良いです。
なお、最近では急増する児童相談所に対して職員増が追い付かない、職員の定員割れが起こり始めています。
採用されやすくなるのは事実ですが、期待した公務員の働きがいとワークライフバランスを享受できるかはしっかり下調べが必要な気がします。