受験・就活が終わって4月からは1人暮らしという人も多いのではないでしょうか。帰ってくる時間が遅くても誰にも文句言われない気楽さ、本当にいいですよね。
でも、発達障害のある人だと「自分の生活をきちんと管理できない」ということになりがち。私自身も一時期そうでした。
そうならないためには、「物件選び」が超大事。何も考えず「安いから」「大学・職場まで近いから」で物件を選ぶと後悔するかも...
そんな今回は発達障害がありながら何年も1人暮らしをしている私の目線で、おススメ物件の選び方を解説します。
寮(メリットはやはり大)
大学の場合は学生寮、働いている場合は社員寮/借り上げ住宅になります。普通に賃貸するよりも圧倒的に安い(50%オフは確実、社員寮の場合100%会社負担のケースも)です。
そして、荷物の受け取りや安否確認、部屋点検などによる最低限の部屋の清潔さの維持など、生活の質を保つ数多くのメリットがあります。特に、風呂とトイレの共用化によって自分で掃除しなくて良い場合は本当に楽です。
寮に入れる基準を満たしているなら、まずは寮を前提に物件選びをするのがおススメ。
ただし、次の基準を全て満たすかは確認しましょう。
- 個室であること(相部屋はNG)
- 大家・寮監によって管理されていること(寮生による自治が行われていないこと)
- 大学/会社まで徒歩と公共交通機関だけで通えること
特に相部屋だったり寮内での自治が行われている場合、「関わりたくない人と関わらされる」ことになります。これはこだわり傾向の強い人にとって大きなストレスですよね。
寮が個室か?や大学/会社まで公共交通機関だけで行けるのか?などは大学や人事部に問い合わせれば回答してくれます。
この上で書いた3つの基準を満たしているならば、何も考えずに寮に入ってしまってよいでしょう。それだけ寮のメリットは大きいです。
②賃貸
寮に入れない場合、賃貸を選ぶことになります。一般雇用ならまだしも、大幅な賃金上昇が望めない障害者雇用の場合、固定費である家賃は1円でも減らしたいもの。
家賃は基本的に立地×家の中の設備で決まりますが、比較的節約しながら発達障害(特にADHDの人)でも快適に暮らせる物件を図にしてみました。
ポイントは、日常生活で必ず行う活動を駅→家の間でできるかどうか?です。
1人暮らしをした時の自分の生活を想像してみましょう。難しい場合は親にアドバイスをもらったり、まだ学生の場合は学校に聞くべきです。私の大学の場合、1人暮らしで必要なものについてもアドバイスをくれました。
学生の場合はサークルなどがあるかもしれませんが、社会人の日常生活はおおむねこんな感じではないでしょうか。
- 1時間に3本以上ある最寄り駅から家に向かう途中で
- スーパーで自炊に最低限必要な食品を購入し、
- 時々は信頼できる精神科に通い
- コンビニでネット通販で購入した荷物を受け取る
1人暮らしをしている私の生活を振り返っても、日常生活の9割はこの繰り返しです。あとは洋服(私の場合は苦手な素材や着心地があるので、洋服はできるだけ店舗で購入する派です)を買いに行くくらい。
賃貸を選ぶ際に注目したいのが「駅→家の距離が遠くてもOK」というところ。発達障害の人には見通しを立てて行動するのが苦手な人が多くいます。結果的に「いつも少し遅刻する」ことになりがち。
逆に言えば「駅から家までの距離が遠くても近くても、遅刻する確率に差はあまり生じない」とも言えます。つまり「遅刻を減らすために駅近物件にしよう!」と高いお金を払っても、さほど遅刻は減らないのです*1。
地域にもよりますが、おおむね3~4万円程度で借りられる物件で、駅→家までの道のりで日常生活の大部分を完結することができるところは少ないです。そんな物件があったら即契約でもいいと思います。
逆に、駅→家はとても近いけどスーパーは踏切を挟んだ向こう側にある...というのはおススメできません。最初はいいかもしれませんが、その生活は続かないもの。最終的には毎日コンビニ弁当で気づいたらうつ病になっていた...ということになりかねません。
間取り・部屋の設備はさほど重要ではない
立地に拘る以上、間取りで贅沢は言えないはず。4万円程度の家賃だとして、概ね東京駅まで1時間以内で探そうとすればワンルーム、かなり良くても1Kでしょう。
多くの人が重視するバストイレ別にこだわる必要はありません。ユニットバスの場合は、バストイレ同時に掃除できるメリットもあります。またその他の設備も大部分が後付けできたり代用が可能です。
逆に重要視したいのが、室内洗濯機置き場の有無です。コミュニケーションをとる際にポイントになる清潔感ですが、それは洗濯機を自由に使えるかに大きく影響されます。発達障害(特にASD)の人は相手の気持ちを想定することが苦手な分、きちんと準備をしないと清潔感を維持できないのでは。
コインランドリー物件や、室外洗濯機置き場の物件だと都合のいいときに洗濯することが難しいです。結果的に洗っていない服を着ることになりがち。室内に洗濯機があれば、騒音や雨を気にせず洗濯できます。
身だしなみや清潔感の話はこの記事にも書いたので、ぜひ読んでみてください。
自治体間格差
自治体(県や市)はいろいろなサービスを展開していますが、そのサービスには大きな自治体間格差があります。今回はそのうち住む自治体の選択に影響しそうなものを紹介します。
自立支援医療への追加補助
国が決めた法律を基に県と政令市が運営する自立支援医療(精神通院)。精神科での自己負担を3割→1割にしてくれる制度です。
この制度に自治体間格差があるのですが、まずは医療費補助の仕組みを図解で見てみましょう。
図解した通り、1割から所得による上限額まで自己負担が圧縮されますが、この自己負担額をさらに補助(最大で全額補助!!)してくれる自治体もあるのです。
今回、独自補助がある主な自治体を調べました。*2
1割負担がタダになるだけか...と思う人もいるでしょう。ただし、次の条件を複数満たす人は1割とタダで自己負担額の差が大きくなり、月当たり1万円を超えることもあります。
- 独身
- フルタイムで働いている
- 手帳を持っていない
- 病院/薬局には夜や休日に行く
- インチュニブやビバンセ、コンサータを飲む
- 発達障害以外の疾患/障害がない
このあたりの条件を満たす人は、医療費補助を考慮して、住む自治体を選ぶべきだと思います。
住民税決定通知書
あなたの今年の住民税額を教えてくれる書類で、毎年6月ごろに会社を通じて配布されます。
この書類には障害者控除の適用有無が記載されるため、あなたが障害者かが会社にバレるリスクも。プライバシー配慮の措置をする自治体もありますが、そうではない自治体もあり、問題視されています。
総務省も実態調査をするほどの問題になっており、調査結果にはこんな記載が...
プライバシーに配慮した措置をしているかは「○○市 住民税決定通知書 圧着」などと検索すればわかります。
まとめ
ここまで、発達障害の人向けの賃貸物件選びについて書いてきましたが、大切なのは1人暮らしでの生活を想像すること、障害者への配慮が厚い自治体を探すことです。
自力で難しい場合は親や大学の職員の方に相談しましょう。発達障害に関する支援は大学でもかなり充実しているので、学生のうちに支援を受けることが大事です。今から「必要な時に自分の課題点を伝える力」を身につけたいものですね。