【企業研究】就活向けに「技報」が役立つ理由

こんにちは。

心理学を活かして企業に就職したいけど、各社の「今」の研究内容を知らないと難しい...という人も多いのではないでしょうか。

そんな人におススメしたいのが各社が発行している「技報」です。今回は「技報」とは何か?を解説するとともに、心理学専攻の人を採用してくれそうな企業の「技報」を紹介してみたいと思います。

 

技報(テクニカルレビュー)とは

主に民間企業が発行している自社の研究成果を広報するための学術雑誌です。研究成果を宣伝するために企業はいろいろな方法を使いますが、あくまでも技術的なところに焦点を当てているため技術的な用語がドンドン出てきますし、学術雑誌なので一部の企業はJ-STAGE経由で見ることもできます。発行頻度は企業によって年1回~年2回の発行が通常です。

多くの場合執筆者は社員になっていますが、パナソニックのように招待論文という形で外部の研究者も記事を書いているケースがあります。


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なぜ技報が重要なのか?

企業研究のためにいろいろなサイトをみたりインターンに行ったりすることはあると思いますが、どうして技報が大事なのでしょうか?

まず近年アツかった研究開発の内容を扱っているからです。多くの会社の技報では、その年に発売あるいは公開された実際の商品に採用された研究成果を扱っています。そのため、実際に実用化された研究成果について知ることができるのです。

学会誌に掲載されている研究成果は、いろいろな事情によって実用化を諦めたものもあるので実用化にこだわりを持つ人にとってはとても参考になる資料といえます。

 注意

会社にもよりますが、技報に載っている研究成果は数年前から研究していたというケースもあるので、入社時にその研究をしているかはわかりません。



次に、自社がなぜこの研究開発に挑んだのか?がかなり細かく書かれているからです。学会誌にある論文の序論にも研究の動機は書いてありますが、技報では具体的な製品を意識しいるため、なぜその製品を改善しないといけないのか?という観点が書かれています。そして研究成果といっても学会誌のような基礎研究だけではなく、加工技術などの量産化までのプロセスや「今回の開発ではここを工夫した!」というような社員の熱意みたいなところも書いてある企業もあります。こういう企業の研究開発方針が垣間見えるのは技報の大きな魅力です。

最後に、どの事業部がどのような研究をしているかがわかるからです。社員が学会誌に論文を投稿する場合、所属が会社までになっているケースも多くあります。しかし技報の場合ほぼ全ての企業でこの社員はどの事業部にいるのか?場合によってはどの部署にいるのか?というレベルで所属が書かれています。

所属がわかるとどんなメリットがあるの?と思うかもしれませんが、就活の面接・内定後の配属先選びでかなり役立つのです。特に職種別採用の企業であれば、技報に書かれている××の研究開発をしたいので、××を研究した社員が所属している○○部志望ですと言えば説得力が増します。

私は総合職採用ですが、配属面談のときに○○という学会誌(結構最近の研究だった)に書かれている××というテーマをやりたいので、その研究をしている社員がいる△△事業部に行きたい!と伝え、実際その事業部に配属されています。こういう例からみても、企業の研究成果をちゃんと追いかけてから就職し部署の志望をすることはとても大事です。

実際に技報を紹介

メーカーを中心に多くの企業が技報を発行しています。ただ、技報を出している全ての企業が心理学出身者を採用してくれるわけではありません。というわけで、心理学専攻の人が採用されているのを見たことがある、あるいは採用されそうな企業をピックアップしました。その中でも人間の研究に関係している研究を紹介してみることにします。

三菱電機

言わずと知れた大手電機メーカー。家電メーカーのイメージが強いかもしれませんが、重電システム・産業メカトロニクスで売り上げの5割を稼ぎだし、家電の売り上げは全体の2割程度になっています。なお新卒採用は総合職(事務系/技術系)採用となっています。

かなり技報を積極的に出す企業の1つで、「三菱電機技報」の名前で毎月特集する内容を変えて発行しています。ちなみに毎年1月号は「技術の進歩」として総覧的なものになっています。

今回紹介するのは、小型掃除機を利用するときの身体的な負荷を生理計測を用いて検討し実際の開発に生かしたケースです。

JR東日本

首都東京を走る鉄道でおなじみ、近年は北陸新幹線や北海道新幹線といった新幹線の強化を行っています。新卒採用は総合職とエリア職に分かれています。

心理系人材が応募する場合、どの区分*1で応募すべきかは不明です。ただ、過去にはインターンで「安全・HMI」を研究開発テーマの一つとして募集していたことがあり、何らかの形でそういう人材のニーズはあると思われます。

「JR EAST Technical Review」の名前で発行していますが、年ごとに発行回数は異なっています。

発刊の目的の1つとして「弊社の現在抱えている技術的課題を社外の皆さまに理解していただき、優れた技術シーズを持った技術企業や研究機関と連携することにより、新しい時代に相応しい技術やサービスを生み出していきたい」とあるので、自社の研究成果を広報するというよりも、自社の現状を粛々と報告する方針なのかもしれません。

今回はJR東日本内の安全研究所の研究成果のうち、会社が起こした事故などについて、事故後乗客はどのように認知しているのか?をアンケート調査を使って調べたものを紹介します。

鉄道総研

国鉄分割時にJR○○とは別に創設された研究所で、都内に研究所を持っています。研究職と事務職の職種別採用になっていて、心理学専攻であれば人間科学の研究職扱いで学部卒から新卒応募可能です。ただし、人間科学研究部は学部卒のシェアが3%しかないことに要注意。半分近くが修士卒採用になっています。

毎年夏と冬にインターンを募集しており、これには心理学専攻の人も応募可能となっています。

「鉄道総研報告」という名前で毎月1回発行しており、2020年と2019年は1月号を「人間科学」の特集として発行しており、大学以外では日本でトップクラスに人間研究に熱を上げている組織の1つだと思います。

今回紹介する論文は、事故などで長時間停車になったときに分配されるいろいろな資源に対し、乗客はどのような感情を抱くのか?ということを検討しています。

デンソー

いわゆるトヨタグループの自動車部品メーカーであり、独ボッシュについで世界2位のシェアを誇っています。心理学系専用の採用区分はありませんが、新卒技術系では開発・生産領域ごとに職種別採用と総合職採用を併用しています。

「デンソーテクニカルレビュー」の名前で技報を毎年1回発行しており、直近では2013年にHMIを特集しています。

今回の論文はカーナビなどの操作性を因子分析したものです。引用している文献も有名どころが多く参考になります。

終わりに

ここまで技報を出している会社の紹介をしてきましたが、全ての企業が出しているわけではありません。心理学出身者を比較的積極的に取っている化粧品や食品系はざっと見た限り技報を出している企業は少なく、例えば資生堂や味の素といった企業の技報は見当たりませんでした。

同じく心理系の研究開発職を採用した実績のあるNTT研究所も研究に焦点を当てた技報は出していません。代わりに広報誌的なものを出しています。

技報を出していない企業でも、学会誌に論文を出してはいます。そのあたりを見ていけばその企業が取り組んでいる領域が見えてくるはずです。

そして研究手法も質問紙や行動実験、生理計測と幅広いですし、因子分析を始めとする多様な分析を扱っています。企業に行ってもやっぱりこういうスキルは大事なんだな...と思ってもらえれば嬉しいです。

こちらの記事では生理計測を含め、心理学を活かして企業の研究開発職に採用されるためにやっておいた方が良い経験を紹介したので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

*1:総合職技術系統も複数あります