心理英語の必読入門書! Psychology: A very short introduction

こんにちは、以前次のような記事を書きました。

 

この記事の中で、「心理学部を志望する高校生におススメ!」と書きましたが,
本当はこの本(Psychology A Very Short Introduction)、大学院受験を考える方にもおススメです。

 

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この記事では, Psychology: A very short introductionの大まかな内容と、主に大学院受験生におススメする理由について書いていきます。*1

 

 注意

近年の大学院入試では英語の試験方法が大きく変更されています。研究科独自の試験を廃止して「TOEFL iBT」や「TOEIC」、入試当日の「TOEFL iTP」で選抜する大学院が増えています。そのため、心理英語のスキルが基礎系を中心にさほど問われなくなっているのも1つの事実です。とはいえ入学後に論文を読み書きするときに英語ができないと非常に苦労しますから、心理英語の対策をするのは今後も大事なことだと考えています。



概論とそのレベル

章立てを見れば大まかな内容がわかるタイプの本です。その和訳は以下の通りです。

  • What is psychology? How do you study it? :心理学とは何か?どのように研究するのか?
  • What gets into our minds? Perception :何が心に入るのか?知覚
  • What stays in the mind? Learning and memory:何が心に残るのか?学習と記憶
  • How do we use what is in the mind? Thinking, reasoning, and communicating:心の中のものをどう使うのか?試行,推論,情報伝達
  • Why do we do what we do? Motivation and emotion:私たちはなぜそう振舞うのか?動機付けと感情
  • Is there a set pattern? Developmental psychology:一定のパターンは存在するのか?発達心理学
  • Can we categorize people? Individual differences:人間を分類できるのか?個体差
  • What happens when things go wrong? Abnormal psychology:おかしくなる時に何が怒るのか?異常心理学
  • How do we influence each other? Social psychology:我々はどのように影響を与え合うのか?社会心理学
  • What is psychology for?:心理学とは何のためにあるのか?

章立てを見ればなんとなくわかると思いますが、心理学の主要な分野はおおむね全て扱われています。いわゆる認知心理学の内容が半分程度を占めていますが、心理学の入門書としてはまあ平均的な割合だと思います。

また臨床心理学の一部は異常心理学で、社会心理学も1つの章で扱われています。そして心理学史や心理統計にも一応触れています。

内容のレベル(心理学)

最近出た東大出版会の心理学第5版補訂版と比較すると、内容のレベルは少し低めです。少なくとも大学3年生くらいの心理学の知識があれば「内容はだいたいわかる」レベルだと思います。

私は院試向けの心理学の学習をほとんどしませんでしたが、それでも「ああ、あの内容か」と頭に浮かぶレベルです。



出ている用語や実験を一部取り上げると,「エリクソンの発達課題」、「ハーロウの布の母親実験」、「ミルグラム実験」といった感じ。心理学の入門レベルで扱う内容です。

一部とニューロンや脳の部位などについての解説がありますが、それ以外難しい内容は特にありませんでした。

院試に向けた対策の教材としてはヒルガードの心理学がありますが、あれよりははるかに内容が少ないです。有斐閣リベラルアーツの心理学などを使って心理学の知識をさらに増やさないと対応できないのではないでしょうか。

公務員試験(学部卒試験相当)には概論書として使えると思います。特に国家公務員総合職(人間科学区分)では毎年英語を利用した心理学に関する問題が出題されています。その対策としてはとても良いでしょう。

内容のレベル(英語)

英語のレベルもさほど高くはありません。一部専門用語がありますが、全体的には単語は中堅クラスの大学受験レベルかと思います。文法のレベルも難関私大の大学入試くらい。極端に複雑な構文もなく非常に読みやすかったです。

十分な根拠があるわけではありませんが、TOEICでいえば600点以上(リーディング300点以上)、センター試験(筆記)であれば170点程度取れていれば辞書なしでほぼ全て読むことができると思います。

ただし、専門用語の一部は一般的な辞書では出てこないものもあります。そのため事前に東大出版の心理学第5版などの日本語の本で知識を得てからこの本を読むといった対策が必要です。

おススメの使い方

ではこの本をどうやって使えばいいのか?を解説していきます。

私は「英語の多読」を目標にこの本を使いました。*2

大学生になると、自分から時間を作らない限り大量に英語を読む機会は本当に減ってしまいます。その一方で院試や公務員試験の英語で少しでも有利に立つために英語の多読はとても有効です。私は英語をたくさん読むことを目標にこの本を読んでいました。

英語の多読では「文法と単語が容易で読みやすい」本をたくさん読むのが大事とされています。そうはいっても、大学3年生は大学院に進むのか?それとも学部卒で就職をするのか?という人生に関わる重要な決断をする時期です。多くの人は忙しく、英語の多読にまで手が回らないと思います。

この記事で院試と就活の両立法を解説してはいますが、実際は書いているほど順調に行くケースの方が少ないでしょう。



そのような時間がない人にこそおススメしたいのがこの本です。院試を考えている人は「心理学の知識を英語でつける」ためにこの本を2~3周読んでおくのがいいでしょう。有名な英語版教科書であるヒルガードの心理学を原書で読むための準備になります。*3

なお心理英語を専門的に勉強するための「心理院単」という英単語帳が市販されています。それなりに売れていますし、よく見る語彙は載っているなあと目を通しただけで感じます。ただ英単語帳での学習は覚えることがメインになり、どうしても実際の文章の中で読むのとは違うところもあるはずです*4

そういうなかで心理学で英語に触れる最初の本としてこの本はとても使えると思います。1000円程度と比較的安価なのも魅力です。

まとめ

この1冊で心理英語はOK!とはとても言えませんが、入門書としてはとても使える本だと思います。ぜひこういった本から始めて、英語に対する抵抗感をなくしてもらえると幸いです。

なおA very short introductionにはほかにも,Cognitive Neuroscience(認知神経科学)や、Perception(知覚)といったタイトルの本もあり、それぞれ入門的な内容を扱っています。すこし心理英語に慣れてきたという方はぜひ読んでみてください。

このブログでは他にも心理学関連の本の紹介を書いています。ぜひ読んでみてくださいね。

*1:元の記事にあるとおり,高校生にもおススメです

*2:この本はフォロワーさんから↓のamazon欲しいモノリストよりお買い上げいただいたものです。ありがとうございます。

*3:例えば名古屋大学情報学研究科の院試では、ヒルガードの心理学が出題範囲として指定されています

*4:もちろん英単語を専門に扱う本で知識をつけるのはとても大事なことです