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【売り手市場】景気で採用数は変化する?10年分企業ごとに調査

こんにちは。

以前私は「景気がいいうちに就職することに決めた」と書きました。
それは「不景気になれば採用数が減る」という仮説があるからです。

実際に就職氷河期と言われる方々はその直前のバブル期よりも極端に採用枠が減った状況で就活せざるを得なかったそうですし...*1

果たして不景気になると採用が減る,というのは21世紀になった今でも当てはまるのか?を今回は実際の企業の採用数を調べてみました。

選んだのは総合電機メーカーの三菱電機と電力会社である中部電力,大手Sierの大塚商会,大手自動車メーカーのホンダの4社です。(大手企業から業界をバラしつつテキトーに選びました)

各社の採用計画あるいは採用実績を公式サイトより検索し,私の方でグラフ化しました。

 

POINT本記事は就活生に向けて売り手市場って本当にあるの?という疑問を調べてみました!な記事です。

中部電力

電力会社では関西電力と並び,大規模な企業として知られています。*2

中部電力は大卒・新卒採用に絞り,技術系・事務系に分けて採用数を調べてみました。

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2012年ころまでは技術系で120人近くを採用していましたが,2013年に100人程度になってからは採用数が少ないままになっています。

なんでだろ?と思って検索したところ,2011年の3月に東日本大震災があり,その影響で浜岡原発の停止などのゴタゴタがあった時期にあたります。

そして2018年4月からは電力自由化が行われ,近年苦境に立たされているのでしょうか。だからか売り手市場だからといってそれほど新卒採用者が増えていません。

一般にインフラ系は安定している...とは言われますが,新卒採用の人数を見る限りその考えは間違っているように思います。

三菱電機

SONY・東芝・日立と並ぶ大手電機メーカーの三菱電機。心理系人材を技術系で採用することでも知られています。(次の記事にまとめてみました。良ければ読んでみて下さい。)


三菱電機も大卒以上の新卒に絞ってグラフを作成しました。

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中部電力とは逆に,近年はリーマンショック直後に比べて採用数が多めになっています。
しかし売り手市場のここ2,3年急速に採用数を増やしたというよりも安定的に採用数が多めになっているという印象です。

ここ数年は技術系で600人台,事務系で200-250人の採用数を維持しています。他の電機メーカーができなかった早い段階での家電からの撤退という「選択と集中」に成功したからなのかも...

裏を返せば「売り手市場だからといって必ず採用数が増える」わけではないことの良い例なのかもしれません。

大塚商会

最後はSierの大手である大塚商会を見てみましょう。
就活生における知名度は決して高くはありませんが,システム保守・「たのめーる」によるOAでの知名度など,他のSierにはない強みを持っている企業です。

この企業は職種別・男女・新卒中途の実績値を全て公表しているため,傾向が見やすいですね。ただ今回は新卒・中途に分けて採用数の変化を見てみました。(公式で見れた情報に限りがあるため,2012-2018の7年分のデータです)

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全体的に見れば採用数が近年増加しています。リーマンショック直後の12年卒(2010-2011年に就活をしたひとたち)に比べて全盛期である2016卒はほぼ倍です。

最近は2016年よりは減少しているものの,それでも300人近い人数を採用しておりITブームって本当にあるんだなあ...と感じます。

 

IT,特に上流工程は近年採用数を増やす傾向にあります。例えば有力なSierでありコンサルファームでもあるアクセンチュアのように,5年で採用数が倍になった企業も少なくはありません。


一方で中途はというと...。ほとんど増えていません。同じ業界でも企業によって新卒重視・中途重視の企業はありますが,大塚商会は新卒採用がメインの企業なのでしょうか

ホンダ

いうまでもない大手自動車メーカー。他社と積極的な連携を模索するトヨタや日産とは異なり,独立性を重視するところなど特徴的な企業です。*3

では採用数を見てみましょう。
ホンダの場合は大卒以上が採用される技術系・事務系に加え,高校生の新卒が採用される技能系*4,中途採用*5も含めてグラフを作ってみました。

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売り手市場の名にふさわしくこの5年でほぼ全ての枠で採用が増えています。事務系では20人程度の採用増ですが,技術系では100人単位で採用数が増えていますね。

 

元々自動車メーカーは,景気・円高/円安の影響を受けやすい業界とされていますが,採用数だけ見ればそれほど極端なことはしていないように見えます。同じ重工業の三菱重工などは2018年に新卒の事務系採用を中止するということをしていたのに比べればですが...*6


ただ,細かく見てみると2008年ごろの採用数を未だ上回っておらず,ホンダも苦戦しているんだなあ...というのがわかります。やはりCASEやMaaSといったトレンドに押されているのでしょうか。

そして,メーカーでは珍しく高卒の技能系での採用者が技術系・事務系の採用数よりも少なくなっています。

 

最近では大学進学率が高くなりましたが,同じ自動車メーカーでもトヨタ・マツダなどは大卒(事務系・技術系)よりも高卒(技能系)採用の方が数は多いです。
 

まとめ

もともとは,「売り手市場と言われる時期は採用数が増えたので,迷いがあるならば今のうちに就活しておいた方がいいよ」ということを言いたいがために記事を書きました。

ただ,実際の採用状況を見る限り,社会全体の景気よりも企業それぞれの事情採用数に影響しているような気がします。

自分が受けたい企業の近年の採用数は見ておくといいでしょう。場合によっては学部卒で就職するのか?それとも大学院に進学するのかにも影響するはずです。私は見ておらずかなり苦戦したので...

*1:この半年くらいで就職氷河期世代限定で採用する企業・自治体が増えてはいますが

*2:東日本大震災以降,東京電力はその力を大幅に失いました

*3:トヨタはスバル・ダイハツなどと業務提携を,日産はルノーとアライアンスを組んでいます。

*4:実際に工場で組み立てや検査をする人たちのこと

*5:大部分が工場で働く技能系だと思われます

*6:なお自動車メーカーの場合,期間従業員という形で労働者の数を調整しています