こんにちは。
以前この記事で、心理系公務員の仕事と待遇、そして採用について解説しました。
この記事の中で、インターンで少年院に行ったことがあると書いたところ、「少年院ってどんな感じですか?」と聞かれたことがあります。
そこで今回は、少年院のインターンで感じた、職場としての少年院のメリット・デメリットを書いていきたいと思います。
この記事を読めば、法務省・人間科学系インターンのポイントがわかります!
少年院の話に入る前に、まずは法務省人間科学系インターンシップの全体像から解説します。
法務省・人間科学系インターンとは?
毎年夏休み・春休みに行われる,法務省矯正局主催のインターンシップのこと。人間科学系の場合、鑑別所で心理鑑定の体験ができる法務技官のインターンシップと少年院の施設見学をしたり、矯正教育について学べる法務教官のインターンに分かれています。
公務員心理職のインターン自体少ないので、少しでも公務員心理職に興味があるなら必ず行っておきたいおすすめインターンの一つです。
詳しくは公式サイトをご覧ください。
鑑別所でのインターンは、心理学専攻の人しか参加できません!社会学や教育学専攻の場合、少年院のインターンに応募することになります。
少年院とは?
少年院(しょうねんいん)は、保護処分の執行を受ける者及び少年院において懲役又は禁錮の刑の執行を受けることとされた者を収容するための施設。法務省矯正局が管轄する。 (Wikipedia「少年院」より引用)
のことです。
ざっくりと言ってしまえば、刑務所の少年版になります。犯罪を犯した少年のうち、特に犯罪傾向が進んだ少年を収容するのが特徴です。
参加に向けた選考課題について
基本的に応募のためには次の条件を満たすことが必要です。心理学専攻でないと鑑別所(法務技官)に応募できないことを除けば、鑑別所・少年院ともに条件は同じです。
- 心理学 or 教育学等を学んでいること
- 学部3年生以上であること(一部の施設は2年生以下でも可)
- 800字程度のESを提出すること
- 大学から推薦されること(推薦自体は誰でももらえます)
ESを提出することが応募条件になっていますが、興味を持った理由と学生自体の活動をしっかり書けば落とされることはないはず。
応募の単位は管区ごとではなく、少年院・鑑別所ごとになっています。また矯正管区を超えた応募、例えば第一志望を福岡管区の施設にして第二志望を大阪管区の施設にすることはできません。
私の場合、低学年でも応募できる施設*1に応募しましたが、3年生以上しか受け入れないはずの少年院に回されたので、あまり応募者は多くないと思います。
民間のインターンと異なり、交通費・食費全て自己負担です*2
大学推薦が必要なので、受け入れ決定後に辞退できません。また夏休みのインターンは5月下旬、春休みのインターンは10月末に〆切*3とかなり早いです。
インターンでの講義内容
大きくわけると次のような内容が行われます。基本的に講義主体で実習はありません。
- 司法矯正の精度
- 少年院で行われる矯正教育・処遇の仕組み
- 少年院内の施設見学
- 各種職員との座談会
少年と直接話すことはありませんが、普段は絶対に見られないものをたくさん見ることができます。
特に印象的だったのは、覚せい剤や性犯罪予防に関する教育を熱心に行っていたことです。自助サークルに似た、少年自身の経験を話す指導も行われています。
また刑務所と同じ行進を始めとした集団行動をかなり徹底しており、基本的にルールを守らず身勝手だった少年たちも、最初の数週間で集団行動を徹底的に叩き込まれてからはルールを守るようになるそうです。
職員目線で見た少年院
ここまでは、収容されている少年にどんな指導が行われているかを書いてきました。ここではインターンの際に聞いた、働く側から見た少年院について書いていきます。ポイントは次の通りですが、1つ1つ説明します。
- 夜勤あり
- 転勤範囲が広い
- かなり体育会系
- 「矯正失敗」もしばしば
公務員心理職では珍しくありませんが、夜勤があります。日勤(8時から17時など)の日もあれば夜勤の日もあり勤務日程はかなり不規則です。そして、基本的に法務教官としてキャリアを積み重ねることが前提*4なので、退職するまでこの生活が続きます。もちろんその分給料が跳ね上がるのですが、しんどいらしいです。
地方公務員と異なり引っ越しを伴う転勤がかなり多く、勤務地である少年院もかなり田舎にあります。つまり、数年おきに転勤を続けるが基本的に田舎勤務ということです。ワークライフバランス的にはなかなか厳しいとのこと。
少年たちに集団行動をさせると書きましたが、それを指導する法務教官も結構体育会系だと感じました。指導する以上、職員も徹底的に集団行動を叩き込まれますし護身術などの訓練も課されます。
そして、一番つらいのが少年院を出た子供たちの再犯率が残念ながら高いこと。もちろん出院後に社会に復帰できる人もいるのですが、残念ながら再び犯罪行為をする人もいます。「今度こそ一般社会で頑張ります!」と言っていた少年が捕まった話を何度も聞くと、法務教官でもなかなか堪えるそうです。
ここまで悪いことばかり書いてきましたが、少年たちの育てなおしを全力で行い、無事に社会に定着できた時にはやりがいもひとしおなのだとか。好き嫌いは選びますが、定着率はそれほど悪くないように思いました。
よくある質問とその回答
Q1.インターンにいかないと採用されない?
そもそも少年院の場合選考が緩いこともあり、インターンと採用はあまり関係がないように思います。 ただし、施設によってはインターン参加者が採用されていることもあります。
Q2.法務省専門職じゃなくて、総合職(人間科学)志望なんだけどどの施設に応募すべき?
職員さんが、「総合職(人間科学)志望なら東京管区内の勤務が多いよ」と言っていたので東京管区内の施設に応募するといいでしょう。場合によっては採用の時にメリットがあるかも。
Q3.応募するなら何年生のタイミングがいい?
学部卒での就職を考えるなら学部2年、大学院卒での就職を考えるなら学部3年がいいでしょう。
Q1で書いたように、インターン参加と採用に関係性はあまりないと思います。そのため、自分の名前を売るためにわざわざ就活直前に行く必要性はありません。
公務員心理職だと大学院卒で就職することが多いですが、大学院生になると就活の面でかなり後がなくなります*5。そのようなタイミングで、第一志望にするかわからない職場に夏休みの3日間を、しかもその予定を数か月前に決めないといけないのは辛いのではないでしょうか。
最後に
個人の好き嫌いは別として、貴重な公務員心理職のインターンシップです。どちらかと言えば法務教官大変らしいよ!!という内容の記事になってしまいましたが、心理学の知見が活かせる職場であることを踏まえれば悪いところばかりではありません。
すこしでも興味があるなら、応募してみるといいのではないでしょうか。