Web
Analytics

【学部生向け】初めての学会をうまく廻るための下準備とは?

こんにちは。

 

学会発表は院生になってから!という大学もありますが、就活の前倒しを受けてか早いうちに業績を積みたい!学会に行ってみたいという学部生は当然いるはず。

でも、自分が発表するならまだしもそうじゃないならどんな風に回ればいいのかわからない...という方も多いのではないでしょうか。というわけで一応学部生時に学会に3回参加していた私の目線から書いてみたいと思います。

POINT本記事は学部生向けに「学会を楽しみたいならここは気を付けるといいのでは?」というのを解説した記事です。



本ブログは主に心理系の方に向けて書いているため日本心理学会を中心に解説してはいますが,そのほかの学会でも参考になるところはあると思います。

 

f:id:husbird:20201108014628j:plain



2019年9月12日追記:本記事で言及している日本心理学会若手の会スタッフの方から本記事について「参考になる点あり」とのコメントを頂きました。感謝申し上げます。

目標を決める

お金と時間を割いて学会に行くわけですから、無駄にはしたくない! というわけで目標を決めましょう。

目標はなんでもいいです。発表をたくさん聞く!学会で誰かと仲良くなる!などふんわりしたのでもOK。ただできれば具体的な方が達成率を上げると思います。


私の場合

  • 3人以上の研究者から研究室訪問の許可を勝ちとる
  • 自分の研究に関する知見を1つ以上持っていく
  • 企業研究者の発表セッションを1つ聞く

の3つとしました。

特に当時の私は大学院進学を考えていたため、自分の学びたい分野に近い学会発表には行こう!あわよくばそこで学生さんor先生と少しでも話せればいいな...とは考えていました。

Twitterで共有すべし

自分が学会発表する場合は、学会当日までに少しでも自分の発表に関心がある方を増やすのが大事。私もtwitterで告知された発表見に行ったことがあります。

発表はしない方でも、〇〇学会の〇日目参加します!と言っておくだけで誰かと良い出会いができるかもしれませんし...

持ち物で武装すべし

持ち物といっても大したものはありません。

服装も日本心理学会の場合私服でいいでしょう。私は白の半袖ワイシャツで参加しましたが,登壇者クラスの方でも私服の方も少なからずいました。就活でいう"オフィスカジュアル"なら十分だと思います。*1

持ち物として最低限あるといいのは3つ。

ノートパソコン

普段大学の授業は手書きノートかもしれませんが、学会発表の場合進みが速いです。手書きで書いていては時間がありません。スマホだと画面も小さく不便です。できればノートパソコン、それもバッテリーの持続時間が長めのもので記録した方がいいと思います。

名刺

研究者の皆様と連絡先を交換するのに必要です。院生さん以上はほぼ全員持っていますが、学部生でも持っていると連絡先を交換しやすくなります。 私は初めて行った学会にはもっていかなかったのでものすごく後悔しました。

(できれば)ノートパソコンを充電できるモバイルバッテリー

日本心理学会で行われる学会発表のうち、小講演や基調講演は2時間近い時間を要します。

せっかく学会で貴重なお話を聞いているのにパソコンの充電がなくて記録できない… ということがないようにできればモバイルバッテリーがあるといいですね。*2

どの講演を回るか?

自分の研究分野に近いところ、院試で興味のある先生のところ…なんでもOK。

ただ過去の経験から「このセッションはよかった」とか「こういうセッションに行けばよかった」というお話はあると思います。そんなアドバイスです。

事前に見たい発表を決めて動くべし

少なくとも日本心理学会の場合、朝から晩までスケジュールが埋まっています。そのため全ての発表を見ることができるわけではありません。

日本心理学会公式サイトにプログラムが公表されています。それを前日までに見たうえで見たいプログラムを決めておきましょう。

皆さんが音楽のフェスに行くとして、事前にどのアーティストの講演を見たいか決めてから行きますよね?それと同じことです。

 

若手の会主催イベントは優先的に参加すべし

多くの学会において、若手*3を中心に相互にサポートしあう組織があります。

日本心理学会の場合、「若手の会」という名前でそのような活動を行っています。 この団体は主に院生さんに向けての進路サポートや学振獲得支援、旅費支援などを行っていますが、学部生にとっては彼らから得られる学びはすごく大きいもの。

 

学術会議として行われる日本心理学会では,主に2つのセッションに関わっています。

プレゼンバトル

昨年は1日目午前中に開催されていました。

学部生が5分間で自分の研究やその計画(つまり結果が出ていなくてもOK!)を発表できるセッション。正式な業績にはなりませんが,学部生が発表できるセッションでは一番大きなクラスだと思います。

昨年は15人程度が登壇していましたが,ここに登壇している方は,おそらく「将来学振の採用におけるライバル」だったり「企業採用ポストの競合」になる人のはず。

 

仲間でもありライバルでもある人がどんな人なのか?それを知っておくだけでも自分の進路選択に役立つと思います。

2019年の日本心理学会学部生プレゼンバトルで私自身が実際に発表させて頂きました。発表者である私の目線から見たプレゼンバトルはこちらの記事を見ていただけるとわかってくるはずです。

進路相談会

昨年は2日目の夕方に開催されていました。

その名の通りですが, 「心理系の人はどんな就職先があるの?」「研究歴が短い中で学振を勝ち取るには?」といった学部生にとっては極めて重要なお話をたくさん聞くことができます。

また講演終了後は1時間近くにわたって若手の会スタッフの方に個別相談する機会が設けられていました。 昨年は学部生が20人程度,院生もほぼ同じ数が参加していました。

 

企業研究者が参加するセッションは優先的に参加すべし

大学教員への就職にこだわる場合はあまり重要ではありませんが、少しでも企業への就職を考えている場合は優先的に回るといいいでしょう。

工学系の学会には企業の研究者がたくさん来ているそうですが、心理学の学会だと少ないもの。

日本心理学会の原稿を見ている限り、発表者の70%くらいは大学と病院などの臨床系のはず。純粋な企業の発表は多く見積もって20%くらいでしょうか。

しかもポスターではなく講演(口頭)での発表になると3日間全て合わせて5件あるかどうか…な気がします。*4

ここで、なぜ企業が日本心理学会で発表しているのか?を考えてみましょう。 いうまでもなく発表内容が心理学に関係するからです。

そして発表するということは企業内のビジネスに心理学が関与しているということです。 さらに考えてみると「心理系人材を必要としている可能性がある」ということです。

学会に来るような人は「(何らかの形で)心理学を生かして仕事をしたい」と考えている人が多いはず。 

もちろん企業の研究者の方はヒマではありません。 実際企業研究者からはこんな意識で学会に参加しているようです…


しかし、少なくとも日本心理学会の場合は学生さんが質問してくれば,ある程度は丁寧に回答をしてくれます。そしてその際に「実際心理系人材って御社にいます?」と聞けば「いる・いない」で答えてくれたケースも。

学会でお話を聞いたのをきっかけに心理系人材として企業に興味を持ち,実際に応募に至った企業が複数ありました。

 

2019年度の日本心理学会セッションにおいても「学会ではめげずに研究者に話かけ,そこで作ったつながりを育てること,就職に成功してもそのつながりを維持すべきだ」との発言がありました。*5
 

こういった形で企業との縁を作っていくことは学部生としてだけではなく、大学院進学後の就活を考える際にもとても役に立つと思います。

まとめ

ここまで打算的に学会に行くことがいいのかは正直疑問です。しかも私自身が昨年できたかというとうーむ...な部分もあります。

ただし、ある程度目的を持ったうえで事前準備を行うことが、満足のいく学会参加になるのではないでしょうか。


少しでも準備をして初めての学会参加がいいものになれば幸いです。

*1:学会によってはスーツ必須の場合があるとかないとか...

*2:2000円程度で市販されているモバイルバッテリーではなく、45Wのパソコンなどの充電が可能なものが必要です

*3:学会にもよりますが,30歳以下のPh.D.未取得者と助教クラスの人が対象となっていることが多いです

*4:日本心理学会の場合,学会発表は原則としてポスター発表になっています

*5:この方はPh.D.で就職されたようですが,学部生にも参考になる点が多いと思います。

【売り手市場】景気で採用数は変化する?10年分企業ごとに調査

こんにちは。

以前私は「景気がいいうちに就職することに決めた」と書きました。
それは「不景気になれば採用数が減る」という仮説があるからです。

実際に就職氷河期と言われる方々はその直前のバブル期よりも極端に採用枠が減った状況で就活せざるを得なかったそうですし...*1

果たして不景気になると採用が減る,というのは21世紀になった今でも当てはまるのか?を今回は実際の企業の採用数を調べてみました。

選んだのは総合電機メーカーの三菱電機と電力会社である中部電力,大手Sierの大塚商会,大手自動車メーカーのホンダの4社です。(大手企業から業界をバラしつつテキトーに選びました)

各社の採用計画あるいは採用実績を公式サイトより検索し,私の方でグラフ化しました。

 

POINT本記事は就活生に向けて売り手市場って本当にあるの?という疑問を調べてみました!な記事です。

中部電力

電力会社では関西電力と並び,大規模な企業として知られています。*2

中部電力は大卒・新卒採用に絞り,技術系・事務系に分けて採用数を調べてみました。

f:id:husbird:20201108124428p:plain


2012年ころまでは技術系で120人近くを採用していましたが,2013年に100人程度になってからは採用数が少ないままになっています。

なんでだろ?と思って検索したところ,2011年の3月に東日本大震災があり,その影響で浜岡原発の停止などのゴタゴタがあった時期にあたります。

そして2018年4月からは電力自由化が行われ,近年苦境に立たされているのでしょうか。だからか売り手市場だからといってそれほど新卒採用者が増えていません。

一般にインフラ系は安定している...とは言われますが,新卒採用の人数を見る限りその考えは間違っているように思います。

三菱電機

SONY・東芝・日立と並ぶ大手電機メーカーの三菱電機。心理系人材を技術系で採用することでも知られています。(次の記事にまとめてみました。良ければ読んでみて下さい。)


三菱電機も大卒以上の新卒に絞ってグラフを作成しました。

f:id:husbird:20201108124506p:plain



中部電力とは逆に,近年はリーマンショック直後に比べて採用数が多めになっています。
しかし売り手市場のここ2,3年急速に採用数を増やしたというよりも安定的に採用数が多めになっているという印象です。

ここ数年は技術系で600人台,事務系で200-250人の採用数を維持しています。他の電機メーカーができなかった早い段階での家電からの撤退という「選択と集中」に成功したからなのかも...

裏を返せば「売り手市場だからといって必ず採用数が増える」わけではないことの良い例なのかもしれません。

大塚商会

最後はSierの大手である大塚商会を見てみましょう。
就活生における知名度は決して高くはありませんが,システム保守・「たのめーる」によるOAでの知名度など,他のSierにはない強みを持っている企業です。

この企業は職種別・男女・新卒中途の実績値を全て公表しているため,傾向が見やすいですね。ただ今回は新卒・中途に分けて採用数の変化を見てみました。(公式で見れた情報に限りがあるため,2012-2018の7年分のデータです)

f:id:husbird:20201108124536p:plain



全体的に見れば採用数が近年増加しています。リーマンショック直後の12年卒(2010-2011年に就活をしたひとたち)に比べて全盛期である2016卒はほぼ倍です。

最近は2016年よりは減少しているものの,それでも300人近い人数を採用しておりITブームって本当にあるんだなあ...と感じます。

 

IT,特に上流工程は近年採用数を増やす傾向にあります。例えば有力なSierでありコンサルファームでもあるアクセンチュアのように,5年で採用数が倍になった企業も少なくはありません。


一方で中途はというと...。ほとんど増えていません。同じ業界でも企業によって新卒重視・中途重視の企業はありますが,大塚商会は新卒採用がメインの企業なのでしょうか

ホンダ

いうまでもない大手自動車メーカー。他社と積極的な連携を模索するトヨタや日産とは異なり,独立性を重視するところなど特徴的な企業です。*3

では採用数を見てみましょう。
ホンダの場合は大卒以上が採用される技術系・事務系に加え,高校生の新卒が採用される技能系*4,中途採用*5も含めてグラフを作ってみました。

f:id:husbird:20201108124600p:plain



売り手市場の名にふさわしくこの5年でほぼ全ての枠で採用が増えています。事務系では20人程度の採用増ですが,技術系では100人単位で採用数が増えていますね。

 

元々自動車メーカーは,景気・円高/円安の影響を受けやすい業界とされていますが,採用数だけ見ればそれほど極端なことはしていないように見えます。同じ重工業の三菱重工などは2018年に新卒の事務系採用を中止するということをしていたのに比べればですが...*6


ただ,細かく見てみると2008年ごろの採用数を未だ上回っておらず,ホンダも苦戦しているんだなあ...というのがわかります。やはりCASEやMaaSといったトレンドに押されているのでしょうか。

そして,メーカーでは珍しく高卒の技能系での採用者が技術系・事務系の採用数よりも少なくなっています。

 

最近では大学進学率が高くなりましたが,同じ自動車メーカーでもトヨタ・マツダなどは大卒(事務系・技術系)よりも高卒(技能系)採用の方が数は多いです。
 

まとめ

もともとは,「売り手市場と言われる時期は採用数が増えたので,迷いがあるならば今のうちに就活しておいた方がいいよ」ということを言いたいがために記事を書きました。

ただ,実際の採用状況を見る限り,社会全体の景気よりも企業それぞれの事情採用数に影響しているような気がします。

自分が受けたい企業の近年の採用数は見ておくといいでしょう。場合によっては学部卒で就職するのか?それとも大学院に進学するのかにも影響するはずです。私は見ておらずかなり苦戦したので...

*1:この半年くらいで就職氷河期世代限定で採用する企業・自治体が増えてはいますが

*2:東日本大震災以降,東京電力はその力を大幅に失いました

*3:トヨタはスバル・ダイハツなどと業務提携を,日産はルノーとアライアンスを組んでいます。

*4:実際に工場で組み立てや検査をする人たちのこと

*5:大部分が工場で働く技能系だと思われます

*6:なお自動車メーカーの場合,期間従業員という形で労働者の数を調整しています

「大学職員・研究所総合職」の就活―採用試験を解説―

こんにちは。

前回は「研究支援」のお仕事としてこんな仕事があるよ! というお話を書きました。

 

husbird.hatenablog.com

 

その一環で大学職員と研究所総合職の2つを,どんな仕事なのか?を含めて紹介しました。


さて今回は新卒での採用試験をどう突破するか?を解説します。*1

文章を読むのも大変だと思うので,図を作ってみました。

f:id:husbird:20190724224840p:plain



同じ研究支援でも大学職員と研究所総合職では採用までの道は全く違う!ということがわかっていただけると思います。

 


 

大学職員

国立大学と公立・私立大で採用システムが大きく異なります。

国立大では公務員試験のうち教養試験だけを行う「国立大学法人等職員採用試験」を受験するのがメジャーです。

 

一方公立・私立大学では原則として各大学がバラバラに採用を行います。また公務員型の試験を行うことは原則としてなく、グループワークや面接、ESを中心として選考が行われます。

 

国立大学

先に書いたように、原則として「国立大学法人等職員採用試験」の合格者から採用されるのがメインです。あとで説明する独自採用に対して「統一試験」などと言われます。

合格すれば無条件に採用されるわけではなく合格後に二次試験として「施設訪問」をする必要があります。あくまでも採用は各大学が行う仕組みになっています。


イメージとしては国家公務員における「官庁訪問」と同じです。

 

近年,公務員試験を受験しない層も受験してほしい!という考えからか,ESやwebテスト,グループワークや面接といった民間企業と同じフローで採用する大学(いわゆる「独自採用」)も増えています。

ちなみに私は東大の独自採用を受験しました。(ESは通過したもののそこで辞退しましたが)

2020卒の採用では東大・京大・九州大・東北大などは独自採用を行っています。ただ千葉大のように独自採用はしない大学もあるので要注意。

先輩方で国立大学職員に内定した方を見ると,あまり学歴は見られていないように思います。
採用試験の時期

ほとんどの大学で独自試験が先に行われ独自試験だと4月中にES提出〆切,6月半ば内定となっています。

統一試験は独自採用の後に行われ,統一試験が7月上旬に,二次試験(施設訪問)が8月上旬に行われます。

統一試験は公務員試験と併願する人にとっては「最後のチャンス」にもなっており統一試験で合格しても実際に採用されるのは簡単ではないようです...

 

公立・私立大学

原則として各大学ごとに行われ,民間企業と同じようにESやwebテスト,面接を経て採用されます。 *2

(国立大学にも当てはまりますが)大学職員のESは手書き必須(募集要項に「手書きで作成すること」と指定されている)の大学が半分以上を占めます。*3しかもES以外に小論文などを課す大学も多いです。

私も複数の大学を受験しましたが,webで提出できる民間企業のESがいかにチョロいかを逆説的に痛感しました...

 

採用試験の時期

ESの提出〆切は大学にもよりますが,4月下旬からGW明けになっていました。
面接などの本選考は本当に6月から始まります。

民間企業だと,2日続けて面接!とかもあるのですが,大学は面接と面接の間の待ち時間が長い!複数の面接等を経て内定するのは9月上旬と遅いのが特徴です。

 

研究所総合職

原則として各企業/法人が全て独自に採用を行います。ほとんどの独法では公務員試験のような教養試験ではなく,ESや面接などの選考で採用されます。

文科省紐づきの独法では一次試験として公務員試験における教養試験に近い問題が出題される「国立大学法人等職員採用試験」か「文部科学省文教団体職員採用試験」を利用するケースがあります。

 

私の場合,産総研JST,豊田中央研究所を受験しました。
受験者の数は多くないものの,そもそもの採用人数が少ない(最も多い産総研理研でも20人程度)うえ,受験者の半分近くが早慶以上になるなど,ハードルは想像以上に高かったです...。

 

ちなみに大学職員と異なり,ほとんどの企業/独法でESはweb提出可能です。ラク

改めてまとめると,複雑だということがわかります。

 

 

*1:そもそも中途採用は少ない業界ですし,採用する場合でも新卒とは全く別のフローで採用が行われます。

*2:福島県立医科大のような公立大では,独自に公務員試験における教養試験を課すケースもあります

*3:関東圏だと,早稲田と上智が手書き,慶応がweb提出でした

研究を活かす就活-「大学職員・研究所総合職」という選択肢-

こんにちは。

先日,私の大学にある大学のアウトリーチ(研究成果の社会向け広報)のスタッフが来学し,講演をされていました。

 

講演の内容は別として,気になったのは「研究支援」という仕事のジャンルです。
正直なところ「フツーの人で最初から知っている人いないよな」と思ってしまいました。

ただ,実は私も「何らかの形で研究に関わること」を目標に就活をしていたので意外な穴場だな...と思いつつ応募したりしていました。

というわけで今回は「研究支援」の仕事と就活の関係を考えます。

 

研究支援ってなんだ?

いろいろ定義はあると思いますが,今回は恣意的に決めました。
「研究者が研究を円滑に進めるためのサポートを行う職」全般とします。
例えば,

こんな感じの研究者のお手伝いをする人,とでもしておきます。

 

病院における「コメディカル」をイメージしてもらえればいいのではないでしょうか。

 

どんな働き口があるの?

中途採用や任期付きならば様々なポストがあります。*1

ただ新卒で応募できるポストは限られています。
大きく分ければ「大学職員」と「研究所総合職」の2つでしょうか。
日本のメーカーで研究支援職を専門職として採用している企業は私が頑張って探した限りではありませんでした。

 

ではそれぞれについて解説します。

研究所総合職

○○研究所などと名前がついている研究所の「研究職じゃない人たち」のこと。*2
これらのうちほぼ全てが国立研究開発法人とよばれる独法にあたります。

例えば…

こんな感じです。国内には30くらいあります。

 

純粋な民間の研究所で事務系総合職の採用をしている企業はほとんどありません。 私が見た範囲では豊田中央研究所(TRI)や電力中央研究所,鉄道総合技術研究所の3か所しかありませんでした。

 

大学職員

大学の学生課で私たちの事務をしてくれる人たちのこと。*3

ただ,大学職員のうち実際に学生相手のお仕事をしている人は半分以下です。*4
旧帝大系など有力大学であれば3割以下,地方の私大で5割近くになるかどうか…でしょうか。

何が違うの?

転勤の有無や目的などいろいろ違いはありますが,大きな研究所総合職と大学職員の違いは1つです。

仕事内容

大学職員は学生支援(学事やキャリアセンターとか)に配属されることがあります。よく言えば何でも屋,悪く言えば専門性が身につかないとも言えます。
そして地味に大きいのが大学教員が職員をコントロールしているということ。

学問の自由,教員自治などの観点から大学本部系のオフィスでも代表者が教員になっていることがほとんど。
経営の強い一部私大を除き,理事クラスになれている大学職員はいません。

一方で研究所総合職であれば研究者相手の仕事がメインでジョブローテーションが行われ,ときどき広報や採用などの部署に廻る程度だと説明を受けました。

大学職員との大きな違いとして研究者と職員が対等に近いこと。企業の論理が働くため,ある程度は職員が研究者をコントロールできるそうです。

ただ,国立研究開発法人であれば本省(経産省文科省)相手の仕事も多くなります。

まとめ

大学職員・研究所総合職は違いがあるものの研究成果の最大化のためのサポートという意味では共通点も多いです。

具体的にどうやったらなれるの?についてはこちらの記事を参考にしてください。

 

husbird.hatenablog.com

 

*1:JREC-INあたりを探してみてください

*2:いわゆる総研/シンクタンクのことではありません

*3:最近は非常勤や外部委託が進んだため,学生課の人はほとんどが正規の職員ではありません

*4:大学職員に応募する人でも,大学職員=学事だと思っている人がいて,だめだこりゃと思うこともあります

入学前によく考えて!公認心理師(カウンセラー)になるための大学選び

こんにちは。

私は受験生の進路決定をお手伝いをする仕事をしていたため、受験生から「心理学部に行きたい!」などという相談をよく受けます。

ただ皆さんの様子を見ていて「その志望校で本当に学びたいことを学べるの?」
とツッコみたくなることが多いので今日はそんな記事を…
受験生の方で志望校を決めかねている方がいればぜひ参考にして欲しいです。

この記事以外にも、心理学部の大学生活や入試対策の記事も書いています。ぜひこのリンクから読んでみてください。

臨床心理士(公認心理師)と大学受験

多くの生徒さんは「カウンセラーになりたい、公認心理師になりたい、だから心理学科に行こう!」というのが心理学部を受ける理由ではないでしょうか。

しかし、公認心理師の場合「学部でも公認心理師の課程を修めること」が原則必須になりました*1。さらにシビアな志望校選択が求められます。



文学部/教育学部で学べることは違う

本気で臨床心理士/公認心理師を目指す場合、基本的には臨床心理学を学べる学部に入る必要があります。それは基本的に「教育学部系の心理学科」と呼ばれるものです。*2

そして、日本のほとんどの大学では入学時に学部選択することが求められています

有力といえる大学の心理系の学部で、入学後に臨床/基礎(認知心理学など)を選択できるのは東大・阪大・上智・同志社くらいでしょうか。京大・早大では入学時の学部選択で公認心理師資格が取れるか決まります

 

ちなみに、文学部系の心理学科では認知心理学など基礎系の内容をやります。カウンセリングの技法を習得する臨床心理学とは異なり、実験をたくさんする理系っぽい大学生活になります。

 

臨床心理士と公認心理師では、なるために必要な要件が異なっています。そのためしばらくは両方取るつもりで学生生活を送るといいでしょう。

f:id:husbird:20180126234426j:plain

f:id:husbird:20180126234442j:plain


大学受験生の目線で考えると、受験校を決めるタイミングで「公認心理師を目指すのかどうかを決めなくてはならない」という少し厳しい内容ですね。

教育学部入学=臨床系コース確約ではない

臨床心理学を重点的に学べる心理学部*3に入っても必ずしも臨床心理学のコースに入れるとは限りません。入学して卒業までたどり着ければほぼ確実に医師免許*4が取れる医学部と大きく違うところになります。

 

国公立大/私大いずれでも臨床心理学のコースは人気ですが、特に私大では心理学唯一の資格ということもあり,ゼミor研究室配属は競争試験に行われるケースがしばしば

 

友達でも「臨床心理士/公認心理師志望だったのに臨床心理学の研究室に入れなかった」人が複数います。

 

研究室配属の基準はGPAで決まることが多いので、入学後も成績を維持する努力が必須です。公認心理師を目指さない人が遊んでいる中で、自分を律して勉強しないといけないのは難しいところですよね。

 

絶対に臨床心理師/公認心理師になりたいなら国立大がおススメ

例外はたくさんありますが,国立大は私大に比べて,学生の数に比べて先生の数が多いです。


そのため,国立大であれば比較的臨床心理学の研究室に入るのは容易だと思います。

私の知っている範囲では,九大の臨床心理学の研究室は「過去3年間研究室配属における選抜なし」でした。

 

あとは,「なるべく偏差値の高い大学に入る」ことも大事。
偏差値が高い大学ほど,資格がなくても良い就職ができる可能性が高いです。

そのためわざわざ資格を取る必要性が低く,臨床心理学の研究室に入るためのハードルが下がるように思います。

 

まとめ

臨床心理学の研究室は心理学の中でも屈指の人気を誇ります。
ただそこに入るためには大学入学前・入学後いずれもそれなりの努力が求められるのが現実なのでした。
もう一回書きますが,「大学選び」は大事ですよ...


この記事が参考になったよ!という方は下のamazonの欲しいものリストから何か恵んで頂けるともの凄く喜びます。もしよろしければどうぞ!

欲しいモノリスト私の欲しいものリスト

*1:学部卒+実務経験でも可能ですが、最初からそれを狙うのはやめたほうが良いでしょう

*2:例えば東北大ならば文学部の心理コースと教育学部の心理コースがありますが、文学部では取得困難です

*3:教育学部系が多いです

*4:医師国家試験の合格率はおおむね9割以上

【面接】新卒就活で心理学を評価してもらうための対策3選(企業・研究開発職向け)

こんにちは。  

心理学で就職したい!という人は、少なくとも自分なりにはに心理学に向き合ってきたはず。研究だったりUIを考慮したアプリの開発だったりいろいろな経験があると思います。とはいえそれを企業の人に伝えるのは難しいもの。

そこで今回は「心理学の強みを面接でうまく伝えるために、どんな準備や心構えが必要か?」を私の経験から書いていきます。

 

f:id:husbird:20201108013250p:plain
 

その前に心理学と企業就職全般の話が聞きたい!という方はこちらの記事をどうぞ。

面接官は心理学を知らないことを理解する

まず、企業の人は想像以上に心理学を知りません。 これは事務系総合職などの文系職だけでなく「心理学専攻を技術者として採用する」場合にも当てはまると思います。

私はいくつかの企業を技術系で受けましたが、そういった企業の面接官は「なんで心理学の人が自社を受けてるんだ?」という状態でした。分野の話になったときに聞いてみたところ、バイオや機械系など、心理学とは全く関係のない分野出身の方でした。

 注意

学会などで先輩方のお話を聞く限り、博士/ポスドクで採用する場合「入社前の段階で配属部署が確定している」ケースが多々あります。そのこともあってか「心理学のことがわかる」人が面接官になるケースもあるようです。



技術系採用でも心理学とは関係ない人が出てくるのは、ほとんどの企業で「面接官になれるほど心理系出身者が採用されていない」からだと思います。

このブログの読者の方ならなんとなくわかっているかもしれませんが、心理学を生かして就職することは容易ではありません。

臨床系で病院や公務員試験を受けるならまだしも、民間企業での技術職/研究開発職となるとなおさら少ないと思います。*1

せっかく面接を受けるチャンスが得られたなら内定まで持ち込みたいですよね?ということで面接対策について書いていきたいと思います。

ここから書く内容は私自身が実際の就活で体験したことと、学会のシンポジウムなどで聞いた内容がもとになっています。

 

「正確さ」よりも「わかりやすさ」重視で

まず、多くの日系企業であれば大学での専門分野=就職先での配属分野ではありません。近年では職種別採用をする企業も増えつつありますが、まだまだ少ないのが実情だと思います。

実際に私が受けた企業の面接でも大学での専門分野はさほど重視されませんでした。就職してから実際に職場の先輩方を見ても、自社の事業とは全く関係なさそうな分野の出身者が半分近くいます。

このような前提のため「専門用語を駆使して科学的な正確さを担保」する学会発表のようなことをやってもと面接官の方は理解できません*2

専門性を強く重視して採用されるらしい博士は例外として少なくとも学部生や修士卒であれば,、とにかくわかりやすく「なんとなくこんなことやってるんだなあ」くらいが伝われば十分だと思います

説明に用いるレベルとしては高校1年生にもわかるレベルの言葉を用いるのがちょうどよいと思います。

私の場合「子供むけ学習器具××の使いやすさについて研究しています。例えば汗の量などの生理測定や実験の解析などを行っています」などともの凄くざっくりと言っていました。

大学での専門について関心があるのであれば、ちゃんと「もっと詳しく説明してください」と面接官の方から投げかけがあるはずです。

研究内容について話す意味とチャンスはほとんどない?

私が受けた企業*3だと、「文系の人はあまり勉強していない」ことを前提に面接がされていると感じました。

そのため基本的に実験手法や研究業績などは聞かれず…


ある企業では事務系総合職で応募したのですが、研究業績が0ではないことを言ったところ「院進するの?」と言われたことも...*4

 

博士ならまだしも、少なくとも学部生では研究したいです!ということを押し出すにはそれなりのリスクが伴うと思います。修士卒以上と異なり、研究から離れた部門に配属されることが多いですし...
 

その一方で多くの企業は「理系ならちゃんと勉強している」そして「心理学の一部の分野は理系に近い」ことに気づいていたように感じます。

だからか「生理測定してます!」とか「統計解析できます!」とか伝えるとかなり反応が良かったです。少し専門用語っぽい(でもなんとなくわかる)言葉の響きが良かったのかもしれませんが...。

 

研究で取り組んだことを「棚卸し」しよう

心理学を含む文系学生で研究成果そのものをガクチカにするのはおススメしません。というのも面接を受ける中で感じましたが、やっぱり研究内容そのものは重視していないんだなあ...と思います。

むしろ「研究において工夫したことは何?」「そのテーマを選んだ理由は?」「誰かと協力したりした?」ということについては少なからず聞かれました。


私の場合は「仙台で行われる学会に参加し、研究者から直接アドバイスをもらった」と言っていましたね。

 

あくまでも学部卒の場合です。修士以上だとかなり突っ込んで聞かれた人もいるようで...

何からすればわからない!という方は面接の準備として、自分の心理学での研究経験を明確にしてみるのがおすすめです。

そして、自分が心理学の研究で経験したことをできるだけ細かく書き出してみましょう。

 

例えば、

  • 質問紙の尺度構成をしっかり考えた
  • 実験後のデータ処理,等分散性の検討をきちんと行った
  • 自分の専門とは少し離れた臨床心理学の知見が多い

こういう「心理学専攻であれば当たり前」のスキルもちゃんと書き出すことが大事。企業には心理学人材が少ないため、大学では埋もれるようなスキルでも活用できるチャンスは多々あります。

こういったお話は以前参加した学会で聞いたものです。修士以上の方が言っていたので参考になる点が私よりも多いと思います。

会社の研究や事業内容をきちんと調べる

面接を受けて改めて痛感しましたが、多くの企業の面接官の方は「心理学の知見が会社でどう生かせる?」かは想像以上に把握できていないように感じます。

そのため会社が行っている事業内容についてきちんと調べることが大事。これは就活生向けのサイトだけでなく、投資家向けのIRや一般消費者向けのサイトまできちんと読み込むということを指しています。

例えば自動車メーカーであるホンダの消費者向けサイトを見てみると、飛行機にヒューマンインタフェースの知見が生かされていることが書かれています。


心理学が生かせる部署はここ!というイメージで就活を勧めがちですが、特定の部署や事業体だけでなく、会社全体で心理学を使って何をしているのか?ということについてきちんと調べることが大事だと思いました。

また、公式サイトだけではなくどんな研究をしているかも、論文や学会発表を探してちゃんと調べましょう。会社によっては技報といって、その年にどんな研究をしたか?を会社の広報資料として発表してくれる企業もあります。

 注意

昔すぎる研究を調べるのはNG。もうそんな研究をしていないかもしれません!

そのうえでそれぞれの事業において心理学の知見がどう生かせるのか?をしっかりと考えて話すのが良いでしょう。

 

ただし心理学は会社の妙な領域に刺さる(らしい)ので、入る前から部署が決まっていることも多いです。例えば食品や化粧品なら官能評価といった感じでしょうか。

まとめ

全文読んでもらえば、結局どっちなの?と感じるところがあると思います。個人的には企業によって全然違うと言わざるをえません。

もちろんこれは私の体験ですし、学歴*5や企業によって技術系の面接で何を聞くか?は大きく違うと思います。

ただ、心理学専攻の人が就活するときに最低限気をつければいいことは書けたと思います。今後心理学→企業研究職を目指す方にとってこの記事が少しでも参考になれば嬉しいです。

*1:JREC-INで探してみたところ、大学教員の求人50件に対して,企業の求人は5件でした

*2:実際に面接で尺度構成の話をして爆死しました

*3:その多くは割とアカデミックを押してくるような企業さんだったのですが…

*4:就活の結果次第でと回答したところ面接官の顔が曇り、その面接で落とされた

*5:ここでいう学歴とは学士や修士と言った学位を指しています

【心理学部生必見】ブラック研究室を回避せよ!研究したい人のための研究室選びのコツ5選

こんにちは。


先日twitterで回答をしたところ想定外にたくさんの反応を頂いたのでこちらでも公開してみたいと思います。


この文章は主に大学院への進学を考えている,あるいは心理学を活かして就職したい学部2~3年生向けに「研究室選びの基準ってある?」を書いてみた文章です。

 

大前提として研究室のPI(たぶん教授や准教授)と相性が悪くないことが前提。悪い人でなくとも気が合わない人と毎週顔を合わせるのは辛いです。

就職まで退官/異動リスクが少ないこと

大学の先生は高校までと異なり,「定期的な人事異動」はありません。
もちろん任期制で採用された先生が任期切れで大学から出ていくことはありますが,
心理学の教授クラスで任期制が発動されるケースはまだないと思います。

では先生はどのタイミングで大学を辞めるのか?ですが,
大きく分けて定年退職と他大学に引き抜かれるケースの2つがあります。


まず国公立大の場合65歳,私大の場合70歳が定年です。
この年齢になれば教員は強制的に退職します。*1

 

そして厄介なのが「他大学に引き抜かれるケース」
年度末になって突然「4月から他大学に行くから」と言われ大変なことになります。
*2

 

教員もより自分の研究意向にあった大学や企業に行きたい!というのはあるので次のような条件を満たしているかは教員が引き抜かれるリスクの高低を判断する基準になると思います。

 

a.職位が教授であること

b.今の大学が教員の母校であること

 

いずれも満たしていれば,他大学に出ていくリスクは小さいと思います。昔は本当にこの法則通りだったのですが,最近は母校から海外の大学に引き抜かれていく先生もいるようで...

 

科研費/共同研究の実績があること

科研費/共同研究の実績があるということは,その研究者の質をある程度担保してくれると思います。*3

特に,共同研究の実績があるというのは「その先生のコミュ力」があることを示すのではないでしょうか。企業の方と協力できるのはやっぱり先生としても魅力的です。

また,科研費の場合は採択された額のうち70%はその研究者たちが使うことができます。だからこそ科研費をたくさん取れるラボとそうでないラボには格差が生まれるではないでしょうか。*4

心理学の研究室もそうですが,お金の有無は研究環境にシビアに響きます。例えば謝礼が自己負担だったり,学会参加の交通費が全額自己負担だったり…お金のある研究室は概して待遇がいいです。

お金のない研究室だと下の記事で書いているようなことが普通に起こります...

参考記事【研究室格差】調査の謝礼が自己負担!?お金のない研究室の現状とお金のある研究室の見抜き方

 

例外は多々ありますが,科研費/共同研究の実績があれば安定的に研究できるでしょう。科研費や共同研究の実際のところはこちらをご覧ください。 

参考記事【体験談】科研費?共同研究?将来を分ける研究テーマ選び

 

学振採用実績があること

まずは学振について説明しますね。

日本学術振興会特別研究員(にほんがくじゅつしんこうかいとくべつけんきゅういん)とは、文部科学省所管の独立行政法人日本学術振興会が、日本トップクラスの優れた若手研究者を採用し、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、研究者の養成・確保を図るため、研究奨励金および研究費を支給する制度である。特別研究員には、給与生活費)として研究奨励金(月額20万円~44.6万円)が支給され、さらに年間150万円(SPDは300万円)以内の科研費(特別研究員奨励費)も支給される。特別研究員に採用された者の常勤研究職への就職率は抜群に良く、同制度は我が国における研究者の養成・確保の中核的な役割を果たしている[1]多くの若手研究者が特別研究員に申請しており、非常に狭き門として知られている。(Wikipedia 日本学術振興会特別研究員より引用) 

わからない人のために簡単に言うと「学生なのに月々20万円もらえるシステム」です。すごい!(#^^#)*5

そしてこの学振に採用されるための倍率は5倍とそれなりの倍率になっています。

ところで私のラボの先生方を見る範囲で,学振には先生方の支援が必須です。
特に応募時に提出する「評価書」は指導教員が書くことになっています。
先生曰く「マジで大変」らしいです。ということで学振採用実績があるということは「それなりに指導してくれている」証拠になると思います。

なお,同じ理由で「博士号」取得者が多いところは非常に魅力的です。

 

就職実績が明確なこと

アカポスや心理学を活かした企業就職にはボスの力が必須。
実際私もボスには何度も推薦書を書いてもらいました。
推薦の時の話はこちらをどうぞ。

husbird.hatenablog.com


いずれにしても,卒業後も心理学にかかわりたいならばこの繋がりは大事。
研究室選びの段階である程度聞けば教えてくれます。

臨床系の人の最初の非常勤はボスから紹介されたところというのは聞きますし,研究室選びに重要な要素であるのは事実です。

 

学生からの評判がいいこと

これ大事。できれば学部生ではなく院生に聞いた方がいいです。院生さんは学部生に比べて研究を進めていますし長年教員と関わっているためアドバイスをくれるはず。

パブリックな研究室訪問で聞くのもいいですが,心理学の場合「実験参加者として参加したとき」に聞くのがおススメ。

待ち時間とかに聞けば教えてくれます。私が今のラボを選んだ理由も,先輩方からの評判が悪くなかったからです。

まとめ

いろいろ書いてみましたがどうでしょう...結局のところ「実績がそこそこあって指導熱心なボスかどうか?」なのかもしれません。

行きたい研究室は決まった!ではその研究室に入るには何をすればいいの?というあなたはこちらの記事をご覧ください。

参考記事【心理学部生向け】納得いく研究室配属(入ゼミ選考)を勝ち取るためにすべきこと3選(心理学の活かし方~研究などイロイロ~)


良い記事だな!と思われた方,よろしければ私のtwitterアカウントもフォローしていってくださいませ。@MarathonUniv

そしてこの記事が参考になったよ!という方は下のamazonの欲しいものリストから何か恵んで頂けるともの凄く喜びます。よろしければどうぞ!

*1:名誉教授などの例外はありますが,退職後に大学に来ることは減るのではないでしょうか

*2:いろいろ事情があって,事前には言えないことも多いです

*3:なお,科研費/共同研究の実績がないことが直ちに「あまり信用できない先生」を意味するわけではありません。心理学系でも科研費/共同研究を狙いやすいテーマとそうでないテーマはあるはずです。

*4:ちなみに残りの30%は「間接経費」といって採択された研究者の所属する組織に提供されます。所得税みたいなものです

*5:もちろん様々な制約があり万能ではありません。研究専念義務や留学の制限などがあります

【体験談】科研費?共同研究?将来を分ける研究テーマ選び

こんにちは。

 

ここしばらく書いている就職記事の続きです。
今回は「企業心理職に就くための研究テーマ選び」で回答していきたいと思います。

心理学を生かして研究開発の仕事に就きたいと考えている方はまずこちらの記事をご覧ください。


理系の場合,「教授の決めたテーマをやる」ことが多いですが心理学の場合そうではないように思います。

少なくとも私の所属しているラボは同期8人のうち,教授と一緒のテーマをやっているのは私だけ。他の皆さんはもちろん教授の指導は受けますが,基本的に個々人の関心があるテーマをやっている感じです。

でも研究テーマ選びって大事だよ!と就活/院試で思ったので今回はどんなテーマを選べばいいのか?を書いてみました。

 

POINTこの記事は主に研究室やゼミに入った学部3年生に向けて研究テーマ選びのアドバイスをしている記事です。心理学だけでなく理系の方にも参考になるはずです。

どんな選択肢があるのか?

具体的なテーマごとに分ける選択肢もありますが,今回は「研究費を誰が払うのか?」に注目して分けてみました。次のようになります。

  • 科研費(をはじめとする競争的資金)
  • 企業との共同研究
  • 自主研究(運営費交付金による研究)

もちろんこれ以外にも財団から競争なしで提供される資金もありますが,大きく分けて上のようになりました。

ちなみに競争的資金とは,政府が研究テーマを公募するタイプのもの。政府機関による選考を通過した研究者のみが資金を得ることができます。逆に大学別に無条件で与えられるものが運営費交付金です。

心理学専攻の学部生の研究の大部分は運営費交付金から出されていますが,近年運営費交付金縮小の流れが続いています。
その代わりに科研費などの競争的資金の割合が常勝しています。私の後輩世代は科研費で研究が当たり前になるかも...

科研費

私自身はいろんなことを検討し,科研費テーマを選択しました。

 

科研費とは「国の機関であるJSTから研究者に対して配分される競争的資金」のこと。競争的資金では日本最大級の規模を誇ります。

科研費は国から優秀だと認められた研究者に与えられるので,自分の研究室の先生がこれを持っていれば多分その方は優秀です。多分...

なおJST科研費以外にも「さきがけ」や「CREST」などの競争的資金を扱っています。

この科研費をはじめとした競争的資金による研究は大学教員にとって死活問題。
ですが実は研究を続けたい学部生にとっても大きなメリットがあります。


大金を使った研究が可能

近年心理学の研究にはあまりお金がかけられなくなってきました。例えば私の所属している学部でも昨年から「実験参加の謝礼額引き下げ」が行われ今までより実験しにくくなりました...

でも科研費の研究であれば通常よりも高い謝礼金を出せたり,運営交付金での研究では買えないような高級機材が買えたり...とメリットが大きいです。

そして,企業との共同研究と異なり「事前に決まった年数は必ずお金が入り続ける」のも魅力。安心して研究ができます。

教授が熱心に指導してくれる

もちろん別のテーマでも指導放棄されるわけではありません。が...
先生方も人間なので「自分の業績になる!」ならやはり高いモチベーションで指導してくれるもの。

そのため,自分から求めれば他の学生よりも熱心に指導してくれたり学会発表のチャンスをくれたりします。

私自身も教授からたくさんのサポートを頂き,学部4年の春の段階で学会発表を経験できたのは,科研費を選択したおかげだと思います。


また,先行研究等が日本語で残っていることが多く先行研究調査に時間をかけなくてよいのは大きなメリット。仮説立案や考察に時間をかけることができます。
 

ただしヤバい研究者が教授だと,研究実績を横取りされることも...

 

意外と自由なテーマ設定

研究室にもよりますが,私の研究室の場合最低限のテーマを与えられた後はほぼ自由にやらせてくれました。

要因を追加したりすれば,学部生であればそれなりの実験にはなると思います。

ですので,テーマ設定力や実行力も身につくとは思います。自由度は企業との共同研究と自主研究の間くらいで個人的にはバランスがいいと思います。 

 

ここまで書いたように,メリットの割にデメリットが小さいです。
そのため,手早く論文や学会発表という実績が欲しい!なら科研費のテーマは強くお勧めできる選択です。

 

実績を稼ぎやすい

一応科研費は「企業では難しい基礎研究」に割り当てられることになっています。
しかし最近はやりの「選択と集中」の影響もあり,結果がある程度出そうなテーマが採択される傾向がある...と教授が言っていました。

国からのお墨付きもありますし,先生からの支援も得やすいということもあり論文や学会発表の実績を稼ぐ!という意味では本当に有利に働きます。

特に博士課程進学まで見据えている場合,学振(DC1/DC2)に採用されるための実績づくりが重要だと思います。
学部生の段階から発表しやすい研究なら,有利に働くのではないでしょうか。

企業との共同研究

自分の研究室と提携している企業の研究者と一緒に研究するタイプのもの。
いくつかの種類はありますが,何らかの形で企業の研究者と関わることになります。

心理系の研究室で企業と共同研究しているところは少ないのが現状。かなり共同研究先が多い私のラボでも,多い年で2~3社くらい。0の年も珍しくありません。

チャンスは限られているものの,共同研究には科研費にはない数多くのメリットがあります。

指示に従うだけで研究が進む

この表現はものすごく極論を言っています...。私のラボで共同研究している人はちゃんとやってますよ!

とはいえ共同研究は「企業がビジネスとして成功するため」に行うものであり,心理学研究の場合「実験・研究人材のアウトソーシング」になっているのも事実。

ということもあり,基本的には企業の研究者の方が考えて学生はそれに応えていくのが流れです。

 

学部生だとほぼ「実験要員」になりがちですが,院生さんになると「自分からテーマや手続きの提案」ができたりするようです。


企業の方の要求に応じて進めていくため,「いろいろ頑張ったけど結果がボロボロで卒論書けない...」とはなりにくく,卒論を書きやすいのも魅力。

 

企業研究者と関われる

企業で研究職を狙う!と決めているならば絶対に譲れないメリット。私も「企業との共同研究が良かったなあ...」と後悔することもあります。

学生は受け身になりがち...とは言っても「○○さんはこの手続きどう思いますか?」などと企業研究者の方との打ち合わせで聞かれることもあると同僚が言っていました。

それ以上に企業とのかかわりが深かったり,共同研究先で実験をする場合(心理学では珍しいですが)社員と仲良くなり「企業研究者としての生き方」を学べるのも魅力。

また科研費では難しい,ビジネス感覚やクライアントに詰められるプレッシャー耐性もできるはず。

凄く運が良ければ共同研究先に研究職で内定!できる人もいます。私の周りでも共同研究先に内定!した心理系の人がいます。

 

「共同研究した経験」そのものが就活で評価される(?)

共同研究は「学外の人との協力」が不可欠。そしてその学外の人は「大人」です。

そのため,文系就職に必須な「コミュニケーション力」があることを示す貴重なエピソードになります。

実際フツーの文系就職(除くメーカー)だと「企業の方と共同研究しました!」というだけでコミュ力などが評価された…という知人がいました。

 

それに事情を知らない人からすれば意識が高そうに見えますしね。


とはいえ,企業との研究という特殊性から2つのリスクがあります。これを知らないで始めると痛い目にあうことも…

 

突然研究が中止になるかも…

メーカーが心理学を活かすときは「より良い商品」を作るための知見獲得が目的になっている!と言われました。
そういうこともあり,不況や不祥事などで企業が窮地に立たされたとき,共同研究そのものが中止に!というリスクがあります。

中止になった場合,共同研究でなくなるだけでなく研究そのものが続けられなくなり卒業が困難になることもあります。

実際に,私の職場(心理系)の上司が博士だったころ「共同研究先が買収されたため,研究が途中で中止に」なり博士号取得が1年延びたそうです。

 

特許で縛られるリスク

企業の利益の源泉である特許。これに巻き込まれるのは学生も例外ではありません。 もともとは論文化/学会発表したかったのに特許で縛られて発表できない!


特許持ちは就活でも評価されるようですが,論文化を目指している人にとっては不便。 共同研究を始める際に確認できるので必ず確認しましょう。

ただ卒業論文での発表であれば許容されるケースがほとんど。私の先輩も共同研究の一部を使って卒業論文を書きました。

 

自主研究(運営費交付金を利用)

ほとんどの学部生と同じく,自分の興味に合わせて卒論のテーマを決めるパターン。

科研費や企業との共同研究ほどはっきりしたメリットはありません。

ただし,自分で0からテーマを設定するのは貴重な経験だと思います。特に企業に文系就職した場合,数年は自分でプロジェクトを動かすのは難しい(と先輩方が言ってました)ので,このメリットは大きいです。

 

そもそも自分が好きなテーマだとやる気が続きやすいですしね。

 

まとめ 

就活/院試という要素から考えても一長一短がある研究テーマ選び。
企業さんからすれば「心理学なら誰でもOK」という側面が大きいですが今後に繋がるのも事実。

研究室とのつながりを重視するか,企業とのつながりを深めるか,それとも自分自身でゼロから開拓するか…

さてあなたはどうしますか?

 


良い記事だな!と思われた方,よろしければ私のtwitterアカウントもフォローしていってくださいませ。@MarathonUniv

そしてこの記事が参考になったよ!という方は下のamazonの欲しいものリストから何か恵んで頂けるともの凄く喜びます。よろしければどうぞ!

【研究開発職】心理学を活かせる民間企業の就職先

こんにちは。

大学で心理学を学ぶ学生は多くいますが、その専門性を活かして就職している人は、まだまだ少ないのが実情です。

そして心理学部生や心理学部を目指す人の中には「カウンセラー以外に心理学を活かせる仕事ってあるの?」 と思っている人も多いのではないでしょうか。

安心してください。心理学の専門性を評価されて採用され、仕事を続けることはカウンセラーや公務員以外の仕事でも可能です。その中でも今回は、心理学を活かして働ける就職先の中でもあまり知られていない民間企業の就職先に焦点を当てて話していきたいと思います。

 

POINT本記事では心理学を活かして就職できる民間企業の研究開発職について、どんな研究開発をしているのか、どんな人が採用されているのかを解説します。

 

その前に心理学と企業就職全般の話が聞きたい!という方はこちらの記事をどうぞ。

 
挙げている企業が新卒で心理系人材を採用しているとは限りません。心理系人材の採用は「ポスドクに限定」という状態になっている企業も多数ありますが、ここでは区別せずに書いています。詳細は各自でお調べください。

 

メーカー

研究開発職を多く採用することもあって、企業の&Dで働く心理系出身者の多くがおそらくメーカーなのではないでしょうか。

その中でも、学会誌などでよく見るのは食品や化粧品メーカー、そして機械や電機メーカーです。学会誌や公式サイトで見られる情報でも、業界によって研究テーマや採用される層に差があるため、まずはポイントだけ表にまとめてみました。

f:id:husbird:20210417184933j:plain

食品・化粧品メーカー

私が就活をしていた数年前の段階では、企業により心理系人材を採る採らないがはっきりしていました。そのため、自分の大学・研究室からこういった業界に進んでいる先輩がいるならかなりおススメできます。意外にも心理学専攻を研究開発職として採用している企業が結構多いです。
 

研究テーマは食品メーカーであれば香りに関する研究や味覚に関する研究、化粧品メーカーであれば顔認知に関する研究をよく見ます。化粧品メーカーにおける研究の例はこちらの記事で解説したのでぜひ読んでみてください。

採用される層は博士での採用がメイン。資生堂、花王、味の素に採用されている人を見たことがあります。また新卒ではありませんが、助教→JTというパターンも。

配属先が確約される職種別採用が多いため、研究テーマとの相性は重視されそう。実際に就職した方によれば「生理測定の経験があるといい」のだとか。

 

新卒相当の採用でも公募ではなく研究室のつながりによる採用がメイン。本気で採用を狙うなら学会でコネを作ったり、研究室選びの段階からの対策が必要だと思います。

 
研究室選びのお話はこちらをどうぞ。

 

機械・電機

私が採用された業界。農機具・重工・家電…といったハードウェアの開発を行っています。

 注意

ただし、最近はハードウェアとソフトの融合がトレンドです、こういった業界に就職してもソフトウェアの開発が業務になることもあります。

 

研究開発では主にヒューマンファクターやUIといった領域ですが、生理計測から質問紙まで割と何でもやっているように見えます。業務では生理測定や行動実験も行いますが、

本ブログでは一例として、トヨタの研究所である豊田中央研究所での眼球運動に関する研究を紹介しています。

 

機械・電機のメーカーは採用数が多いこともあり、修士以下の学生にも採用されるチャンスが多くあります。

初期配属が入社後に決まる会社が多いからか研究テーマが会社でやっている業務の相性はあまり問われませんでした。そのため、とりあえず実験系の心理学をやっていて企業に行きたいのであれば銃乱射的に応募するのもアリだと思います。私自身それで弊社以外に面接に呼ばれた企業さんもあるので...

そのほかの企業

研究開発職、ないし研究職はメーカーが中心です。しかしそれ以外の企業でも心理学出身者を採用しています。例えば次のような企業が挙げられます。

  • 政府系・あるいは旧公営企業の研究所
  • ベンチャー企業

本来真逆の企業達なのですが、実際こうなっています。

政府系の研究所では、産業技術総合研究所(産総研)で隔年に若干名のペースで人間工学の研究職を採用しています*1

鉄道に関する種々の研究を行っている鉄道総研もその1つです。もともとは国鉄の研究所ですが、心理学の領域では運転時の疲労軽減、運転時のヒューマンエラー抑制に関する研究を行っています。

 

そのほかNTT研究所も心理学出身者を採用対象にしています。


ベンチャー企業の中では次の2社が挙げられるでしょう。まずは心理学を活かした研究とそのコンサルティングを行うイデアラボ社です。2019年度の日本心理学会でされていたお仕事紹介も、リモートOKだったりで魅力を感じました。*2

他には発達障害に関するポータルサイトを作ったり、障害者向け就労移行支援を行うLITALICOがあります。LITALICOでは専門/研究職という職種別採用で発達障害児への合理的配慮の研究など臨床寄りの研究ができるチャンスがあります。民間企業で研究フィールドを仕事で確保できるのは貴重だと思います。

まとめ

心理学を活かした研究開発職も、調べてみるとメーカーを中心にそれなりの数あります。

学会誌を読んだり、実際に学会に参加してみると「こんな企業もあったのか」という新しい発見ができるはずです。

この記事では学会参加を就活にどう生かせばいいの?という疑問に答えていますが、このサイトの記事も参考にしつつ、企業選びをしていってくださいね。

*1:採用に必要な条件は修士以上です

*2:イデアラボ社を挙げていたなかったことをイデアラボ社の方に突っ込まれてしまったのは秘密です

【実体験】就活が楽になる?推薦のメリット・デメリット各3選

こんにちは。

 

今回は主に理系の人が対象になる推薦について書いていきたいと思います。
心理学専攻の自分には関係ない...と思いがちですが意外にも関係があります。
 

 そもそも大学院進学か就職かを決めていない学生の方はこちら!

 

その前に心理学と企業就職全般の話が聞きたい!という方はこちらの記事をどうぞ。

 

推薦とは?

学校推薦,推薦応募などの略。主に日系企業の技術系採用で行われる。*1企業側が特定大学の学部・学科を指定して「何人推薦してください!」といって学生を推薦してもらう制度。


リクナビなどで普通に応募する自由応募との違いは下の図の通りです。

f:id:husbird:20190902231936j:plain



内定したら必ず入社することを条件に,選考フローが一部省略されたり,通常は応募できない部署に応募出来たりします。ただし,どの程度優遇されるかは企業により異なることには要注意。

 

上にも書いたようにどの程度優遇されるか?が推薦のキモです。応募すれば全員内定がもらえる企業もあれば,書類選考のみスキップされ,容赦なく面接で落としにかかる企業も...

私の場合

私は心理系ですが,学校推薦で内定を頂きました。*2その体験談も含めて書いてみます。

 

~2月

恥ずかしながらほとんど知らない企業だった。

 

3月上旬

就活解禁。他の文系就活生同様にリクナビ・マイナビからいろんな企業にエントリーする。*3

 

3月中旬

(当時の)第一志望だった豊田中研の事務職にあっさり落とされ凹む。そのほかの企業については概ねエントリーシートを作成・提出する。

 

3月下旬

いくつかの志望度の高かった企業から不採用を頂く。たまたま研究室のメーリングリストを見ていたところ,今の内定先が技術系・学校推薦を大学に出していることを知る。

 

「とりあえず話を聞いてみるか」程度のノリでOB(リクルーター)の方と面談をする*4

 

学部卒でも研究開発できるの?学位取得のサポートはあるの?仕事の実際のところは?などいろんな疑問がありましたが,リクルーターに聞けることは少なく,それ以外の社員の方,家族等にいろいろ相談した結果,この企業に推薦で応募することに。

 

4月下旬
リクルーター・その他社員からいろいろアドバイスを頂いたのち,SPI・エントリーシートを提出する。(推薦なので,これらは選考には使われませんでした…)

 

リクルーターや社員の方には45ESを添削していただきました。

 

GW
面接対策用問答集を自作。

 

5月中旬
キャリア面談(実質的な最初で最後の選考)が行われる。面談という名前はついているものの,明らかに選考だった。この面談ではうまく答えられなかった


同じ日に筆記試験も行われました。内容は大学レベルの数学(線形代数・微積分)と物理(機械力学を中心とした力学)でめちゃくちゃ難しかった5月下旬に合格を頂く。

 

6月上旬

最終面接。とはいってもSkype10分程度雑談してその場で内定を頂けるというものでした。

 

,結局推薦で応募してよかった?
内定を頂けたからかもしれませんが,私はとても良い選択ができたと思います。
いくつか注意すべきことはありますが

 

メリット

圧倒的に内定が取りやすい

企業が推薦枠を出す大学・学部は限られているため,競争倍率がそもそも低いです。

また多くの場合選考の一部が省略されます。実際に私の内定先では自由応募で応募すると技術系でも面接が3回あるのですが,

推薦だと1回になります。

 

(心理系の場合)推薦があったから応募できた

やっていることは理系っぽくても,学部名が文系だから応募できないということが就活をしていてたくさんありました。UXデザインなどのスキルを求めている企業なのに「理系限定」で採用する企業も多く,悔しい思いをしたこともあります。

 

推薦があることで,応募するハードルがものすごく低くなったと思います。

 

リクルーターなどのサポート体制がしっかりしている

インターンに参加した企業ならばまだしも,説明会にもインターンにも行っていない企業だと実情がよくわかりません。そんな状態で応募しても不採用になることは目に見えています。

 

しかし,人事以外の社員の目線から仕事について説明してくれたり,ESの添削などのサポートをしてくれるリクルーターがいることで選考を有利に進めることができます。

人事は事務系出身者が務めていることも多く,技術的なことはよくわからない,ということも多いです。特にメーカーではリクルーターなど自分の選考を応援してくれる社員がいることは大きなメリットになります。*5

ただ,心理学専攻でメーカー技術職を受けても「リクルーターも心理学を知らない」ケースがほとんど。その点は注意が必要です。

デメリット

私は特に感じませんでした。ただ多くの理系学部では推薦に対して学校としてどう対処するかをしっかり決めていて,大学側の圧力がデメリットになるケースも。*6

 

自由応募では応募できなくなる企業も

大学・企業によりますが,推薦枠のある学科からは自由応募を認めないことにしていることがあります。実際私が応募したNTT研究所などはこのパターンをとっていました。

理系学部の場合,「あなたの学科には推薦枠あるけど,なんで自由応募で来たの?本命じゃないよね?」と突っ込まれることもあるようです...

 

推薦結果がわかるまで,自由応募できないことも

大学によっては,推薦の選考が進んでいるうちは自由応募は認めない!というケースもあります。20卒の場合,推薦は3月以降にしか選考を始められないため,推薦に落ちた後に自由応募で就活を始めたはいいけれど,もう応募できる企業がないというケースもありえます。

 

21卒以降経団連による就活のルールがなくなります。そうすると今までよりも早く推薦の選考も行われるため,いろいろと変わってくるかもしれません。

 
「推薦取得=内定」ではない企業も

推薦で応募した際にどこまで企業に優遇されるか?は企業によって大きく異なります。

ほぼ全員が内定をもらえるような企業もあれば,私の他大学の友人が受けた企業のように「推薦で受けても内定率が2割」という企業も。


また,私が受けた企業でも「昔に比べて推薦での合格率は低下傾向」にあるらしく,以前とはだいぶ変わってきています。

第一志望であることを強要されるに見合ったリターンがあるかは,企業とその時の運次第でしょうか。

自分のキャリアを真剣に考えなくなる

私は自由応募で15社以上に落ちましたが,推薦で受けた内定先はとても効率的に進めることができました。

ただ,推薦で決めたい!という思いが強いあまり本当に行きたい企業なのかをよく調べずに応募してしまうケースもあります。

 

最後に 

推薦といえば理系,という風に考えがちですが,心理学でも推薦が取れることもあります。

また大学での学びを企業に!という社会的な流れがある中で,文系でも推薦応募が可能な時代が来るかも。学校から流れてくる情報にアンテナを伸ばしているといいことがあるかもしれませんよ。


良い記事だな!と思われた方,よろしければ私のtwitterアカウントもフォローしていってくださいませ。@MarathonUniv

そしてこの記事が参考になったよ!という方は下のamazonの欲しいものリストから何か恵んで頂けるともの凄く喜びます。よろしければどうぞ!

欲しいモノリスト私の欲しいものリスト

*1:外資系は自由応募がほとんどです。そもそも電機や半導体,自動車や重工系の企業で新卒を採用する外資系は少ないと思いますが

*2:企業・大学ともに初めての試みのようです

*3:とはいえ解禁前にお応募する企業を絞り込んでいたため,20社程度と文系にしては少なめでした

*4:応募後に知ったのですが,この企業では説明会 or OB訪問が必須でした

*5:もちろんリクルーターは人事と直結しているため,すべて事実を話してくれるわけではありません。また私が受けた銀行では,リクルーターによって選考が行われていました

*6:逆に言うと,私の学部では推薦に慣れていなかったため,何の規制もありませんでした。というか内定したら辞退できないということすら言われなかった